手篭め侍



■第13話 ■ 人を殺(あや)めてみろ

  紫乃は刀を収めなかった……しかし、百十郎に呼ばれるままに……くねくねとうねっている少年の尻に吸い寄せられていった。

「なにを……わたしは何をすれば」
 百十郎が自分に対してまったく敵意を見せていないことを改め、刀を鞘にぱちん、と収める。
「この小僧の菊座をかわいがってやれよ……おれがこの前、お前にしてやったみてえによ」
 げひひ、と笑う百十郎。紫乃はかっとなり、また柄を握り、一歩退く。
「何を言うかこの下郎!」
「その下郎に、けつの穴を舐められていい声で鳴いてたのは、どこのお嬢さんだったっけな? ……ほれ、この餓鬼をおれと一緒に穢(けが)そうぜ……右手を切り落とすなんて可哀想だろ? これを機に、侍を捨てて立派な女形(おやま)になれるよう、じっくり仕込んでやろうじゃねえか……」
(げ、下衆……!)
 それにしても、百十郎の考えること、言うこと、することの、底を知らぬ悍(おぞ)ましさよ!

 しかし、くねくねと動く少年の青い尻が青い小袖の裾から覗いている。
 ……憎き敵(かたき)に父を、母を、祖母を殺され、こんな恥辱を受けてでも生き残ろうとする姿を見て、紫乃の胸は騒(ざわ)めいた。

(慎之介……そなたもこうなのか?)
 なぜ死ねぬのか。なぜ生き残ろうとするのか。
 紫乃には少年の無様な有様に、我が弟の姿を重ねずにおれなかった。

「……貴君、そこまでして生き残りたいか」
 夢中で百十郎のものを武者震(むしゃぶ)る少年の背に、声を掛ける。
 ぴくっ、と少年の肩が動き、肩口から紫乃に振り返る少年。
 髷は崩れ、乱れた前髪が頬に張り付いている。
 その唇から顎にかけて、涎が垂れている。半眼の眼(まなこ)が、妙に艶(なま)めかしかった。
「……生き残りとうございます……わたしはまだ、この世にやりたいことが山ほどあるのです」
「それは……何か」
「ふつうの……仇討ちに生きる以外の生き方にてござります。ふつうの子供として、遊びとうございます。学びとうございます。女子(おなご)と戯れてみとう ございます……幸せに生きとうございます……いずれは所帯を持ち、子供を作り、細(ささ)やかながらも幸せに、暮らしいきとうございます……」

 その言葉で、紫乃の理性を繋(つな)ぎ止めていた糸がぷつりと途切れた。

尻を高く持ち上げい!! 高く上げるのです!」
 声を張り上げて、少年を一喝する。
 少年は、ひい、と悲鳴を上げてから……紫乃の言うとおりにした。
 紫乃は少年の小さな尻の前にしゃがみ込むと、その菊座を改めた。
 ひくひくと、小さく窄(すぼ)まった無毛の尻の穴が息づいている。
「お主は、尻の穴でも命乞いをするのか? ……そんなに命が惜しいか」
「お、惜しゅうございます……ですからなにとぞ……あっ!」

 ずぶり、とその小さな穴に、人差指を突き入れた。
 少年の尻の中は熱く、きゅっ、と紫乃の指を締め付けてくる。
 まるで、縋(すが)り付くように。

「おう、どうだ坊主? きれいなお姐ちゃんが、おまえの不浄の穴を可愛がってくれるってよ……おいおい、なんだよその気持ちよさそうな顔は。おまえ、さてはそちらの気があったのか? ……末恐ろしい餓鬼だぜ……どこでそんな色事を教えられた?」
「ち、ちがいますっ……き、気色わるっ……いっ……ですっ……」
 
 しかし少年の尻は震えていた。
 無心に、指を突き入れた紫乃だったが、その幼い尻が高く持ち上がっていくのを見て……怒りと、心の奥底に眠っていた自らも知らぬなにか黒いものが鎌首(かまくび)をもたげるのを感じずにおれなかった。
 紫乃は、くい、と少年の尻の中の指を臍の方に向けて奥に勧めた。

「はあうっ!」
「好(よ)いのか? ……このような辱めをうけて、お主は好いと申すのか?」
 紫乃は叫びながら少年の尻の穴に、さらに指を一本ねじりこんだ。
「あっ……うっあっ……さ、さけ、裂けてしまいまする……か、堪忍、ご、ご容赦を……」
 しかし少年の尻の中の柔肉(やわにく)は、まるで磯巾着(いそぎんちゃく)のように紫乃の指に絡みついている。
 そして股座を覗き込めば……なんと、少年の小さな逸物は、固く強張(こわば)り、地面を突き刺さんばかりに尖っている。
「ここをこのようにして、それでも好くないと申すのか? これは何だ?」
 
 紫乃は脇差を抜いた……そして、少年の小さな陰茎の側面を、そのぎらつく樋(ひ)で撫ぜる。

「ひっ……」
「おっと坊や……お嬢ちゃんにお尻を責められて感謝感激なのはわかるけど、お口のほうがお留守になってるぜ……ほれ」
「むっ……むぐっ……」
 百十郎がまた少年の髷を握り、口に魔羅を含ませた。

 そのまま紫乃は少年の尻を抉り続けながら……脇差の樋(ひ)で、峰(みね)で、小さな逸物を嬲り続ける。
(ますます……ますます固くなっておる……)
 必死に百十郎の魔羅を武者震(むしゃぶ)りながら、尻を責められ、逸物を刀で嬲られながらも、この少年は必死に命を守ろうとしている。
 この恥辱を、苦痛を、屈辱をも悦楽に転化して、我が身を無にしてまで命に縋(すが)りつこうとする、少年の心がどうしても紫乃には理解できない。

「お主、生きているのが厭(いや)にならないか。こんな辱(はずかし)めを受け、嬲(なぶ)られてまで、なぜそなたは生きようとする?」
「むぐっ……くっ……」
 小袖だけを羽織った姿で犬の姿勢を取る少年が、百十郎の逸物を頬張りながらも、首を横に振った。
「……なぜこんなものを付けて生まれてきた? ……辱められて、なぜここがこうなっておる!?」
 刀の峰を少年の逸物の付け根に当て、つるり、と滑らせた。
 びくん、と尻が震え、逸物は今や前を向いて反り返り、自らの臍にその頭を付けようよしている。
 紫乃はなんとも言えぬ劇場に駆られさらに、少年の尻の中を抉った。
「ううううっ……うぐっ……」
「……好いのか? この恥知らず! 姉の心がわからぬか? この逸物、切り落としてくれようか?」
 紫乃はもう、少年に呼びかけているのではなく、彼を通して慎之介に向かって叫んでいた。

 と、その瞬間、少年がぷはっ……と百十郎の陰茎を吐き出す。
「……あ、達します……達しまする……あ、ああっ……ああああああっ!」
 くにゃり、と少年が腰をくねらせた。飲み込まれた紫乃の指が、さらにきゅう、と締め付けられる。
 紫乃はあわてて刀を引いた……そのせいで、少年の内ももに、薄い傷を作ってしまった。
うあっ!
 どば、と地面に吐き出される少年の精。
 紫乃は飲み込まれたままの指で、玉袋(たまぶくろ)の裏あたりを責め立てた……。
「止まりませんっ……止まりませぬっ……ああっ……は、母上っ!」
 少年が二弾、三弾、四弾と吐精を続ける。
 その嘶きが止むまで、紫乃は少年を責める手を休めなかった。

 気がつくと、紫乃はいつの間にか少年の体から離れていた。
 右手の二本の指がねばついている。熱狂の所為(せい)で、かなり息があがっていた。
 頬がぼうっと火照っている。
 すこし離れたところで、百十郎が少年を組み伏せ、その尻を犯していた。

「こうかっ? ここがいいのかっ? ……まったく、堪んねえ菊門だぜ! あれだけ放(はな)って、逸物のほうもまた程よく激(たぎ)ってるじゃねえか?」
「ああっ……百十郎どのっ……せ、殺生にてござります……そんな、そんなまでっ……」
「まだまだ奥へいくぞ……ほれ、どうだ、お前の臓腑(ぞうふ)をかきまぜてやらあ!」
 
 百十郎は紫乃に背を向けている。刀も、道端に放り出したままだ。
 今なら、この瞬間なら……。
 と百十郎が出し抜けに、振り向きもせず声をかけてきた。

「おい、お嬢ちゃん……てえしたもんだったぜ……いやあ、さっきの菊攻め、さすがの俺もぞっとしたぜ」
「な、何を……お主が無理にやれ、といったことをやったまでのこと……」
 紫乃は太刀の柄に伸ばしていた手を引っ込めた。
「でもまだまだおめえには、おれは斬れねえ……もっともっと堕ちてきな……」
「堕ちる……どのように堕ちろと?」

 確かに、今の自分には百十郎を斬れるかどうか、確信がない。
 腕の違いはともかく……なにかが欠けている。肝心な何かが。
 堕ちる……確かにそうだ。しかし、どこまで堕ちれば、あの男のところまで行けるのか。

 少年の尻をせっせと犯しながら、一度も紫乃を顧みずに百十郎は言った。

殺(あや)めんだ……できるだけ、多くな。そうでないと、おれは殺(や)れねえ」

 紫乃は……踵を返した。
 百十郎と、彼に尻を犯されている少年を置いて、早足でその場を駆け去った。

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