女が女の部屋にノコノコやってきて
タダで帰れると思ってやがったのかよ


作:西田三郎


■4■ はやく剥いてよ


「まじ〜……てかサエちゃん……ハゲしいんだから……」セーターで目隠しの状態のまま、亜矢の口はまた笑い始めた。「帰るとき、シャツかなんか貸してよね〜……できるだけ、キレーなやつね〜」
「……ほおお……なかなかのおっぱいじゃねえか……お嬢ちゃんよお……」
 紗英は本気で、息を飲んでいた。
“し、知らなかった……こ、こいつなんて乳を……”
 たしかに、薄いブルーのブラに包まれた亜矢の乳房は見事だった……やわらかそうで、溢れている部分は、まるでゼリーのように震えている。あきらかに、紗英の有しているものよりも、それはずっと見事だった。
“っていうか……”

 というか、紗英は貧乳だった。

「……サエちゃーん……どう?どう?……あたしのおっぱいに、見とれちゃってたりする〜?……あ、ひょっとして、ものすごい嫉妬のマナザシで見られちゃってたりして〜だってサエちゃんって……」
「うるせー!」
 勝ち誇ったように紗英の貧乳を揶揄しようとする亜矢の眼差しに、また感情が爆発する。
 その怒りにまかせて、亜矢のブラジャーをたくしあげようとした。
 しかし、ワイヤーが強力で、なかなかうまくいかない。
「いてっ……いたい、いたいってばあ……ねえサヤちゃん……ごめんごめん、チチナシつっちゃって……」
「てか、ホントに言うんじゃねー!
「でも、ホントのことじゃーん?キャッカンテキジジツじゃーん?……あっ……やんっ!」
 紗英は亜矢のぬいぐるみのように軽い身体をベッドの上で半身に起こし、ブラジャーの背中のホックを外した。ぶわっ、という音をともないそうなくらいにあからさまな美巨乳がまろび出る。

 横から見てもすごかったが、また仰向けに向けさせると、さらにすごかった。
 真上に向けられても、その大きな乳房は勢いを失わない。
 重力に逆らって、天井に向いている。

ちっきしょう!」紗英は敗北感に打ちのめされながら、口に出して罵った。「なんてホコラシゲないい乳してやがんだよ!!」
「えへへ〜」目隠しのまま亜矢が笑う。「スゴイでしょー?……スゴくなーい?……最近、なんかー。成長がイチジルシイっていうかあー……」

 亜矢が上半身を揺らした。
 蒼白いほど白く、柔らかい肉が波打つように揺れる。

 すでに尖っている乳首が、セーターによって隠されている亜矢の両目の代わりに、紗英を嘲笑っている……ように、思えてならなかった。
「なんて、なんて、なんてけしからん乳してんだよ……おいこら、このビッチ!……全身剥いて、このけがらわしいカラダを隅々までチェックしてやるぜ!!」
 紗英はもう、我を忘れていた。
 引きちぎらんばかりに亜矢のプリーツスカートのホックを外し、ジッパーに指が引っかかり、爪が少し欠けたことにも気づかなかった。

「やあーん」

 亜矢は紗英に協力的だ。まるでダンスのペアのように。
 紗英がスカートを下に引っ張ると、ぴょん、と小さな尻をベッドの上でバウンドさせ、脱がす手を助ける。
はうあ!」思わず紗英は息を飲む。
 露わになったのは、亜矢の紺色のショーツ。見事に青白い亜矢の太腿と、締まった腹と、くっきりコントラストをなしている。
 そして、縦型の美しいへそが、またも紗英を嘲笑っているようだ。
「そんなに見ちゃいやーん……紗英ちゃんのえっち〜」
 くねくねと腰を揺らす亜矢。
「そんなに、そんなにホシガリさんなのかよこのビッチ!……はやくこの最後の布っきれもムカいてえ……って、そーいうわけかああ???」
「うん……そうだよ」

 と、そこで、亜矢が少し半身を起こし、セーターの目隠しをくぐりぬけて紗英の顔を見上げる。
 そして、まだ肘の前で絡まったセーターを紗英の首の後ろにくぐらせる。

「な、何?」ぎゅっと引き寄せられ、亜矢の上半身の上に倒れこむ。
 そのまま、亜矢は紗英の頭を抱きしめ、耳元に唇を寄せ、囁いた。
「だって……このままだと、パンツ、汚しちゃうもん……ていうか、もうケッコー汚しちゃったかも……」
 そう言って、亜矢は上目遣いで紗英を見上げる。拗ねたような表情。しかし、突き出した唇の先は、まるでキスをせがむようだ。
 
『せがむようだ』ではなかった。

 ほんとうに亜矢は、ひくひくと突き出した唇の先をヒクヒクと露骨に動かして、キスをせがんでいた。
おおおおお!」自分でも何が何だかわらかない雄叫びを上げながら、亜矢の唇に吸い付く。
 そして上半身の体重を亜矢の小さな身体に載せ、手をその下半身にすすめた。
 まるで、ポストに滑り込む手紙のように、亜矢のショーツの中に紗英の右手が差し入れられる。
「んっ……ふっ……んんっ……」亜矢の熱い鼻息を感じながらも、紗英はしっかりと目を見開いていた。
「んんんっ……んんっ……ふっ……ふっ……」
 亜矢は目を閉じて、とろけるような表情で舌を伸ばしてきた。
 その熱にうかされた子どもを思わせる表情に、紗英の頭もどんどん火照りを高めていく。 
 必死になって亜矢の舌をうまく絡め取ってやろう、とするが、亜矢の舌はすばしっこく、とらえどころがなく、次の動きが予想できない。
 口の中で指相撲をしているような気分になってくる。
 いつのまにか、紗英のほうが舌を絡め取られ、巧みにいなされていた。

 まただ。またしてもだ。
 ちゅぽん、と唇を、紗英のほうから引き離す。

「……サエちゃん、キスへたくそ。あいつにちゃんと教えてもらわなかったの〜?……んっ……」
「うるせえっ!」ショーツの中の指を進める……やららかい茂みをかき分けるまでもなく、指先が熱いぬめりに触れた。「おっ……ほっ……へ、へ、へっへっへ……もうビッチョビチョじゃねえかよお……」
「んっ……あっ……だ、だーかーらー……言ってるじゃーん……んっ」
「特に気持ちいいのはココかなあ?……ほれっ!」
「あんっ!……やだっ……ちょっと、いたい……」
「ご、ごめん……」紗英は反射的に謝っていた。
「サエちゃって、ガーサーツー……そんなんだからオトコに逃げられんだよ」
 また、亜矢が意地悪そうに笑っている。
「て・め・え・は、一言多いんだよ!!!」
「ひゃあっ……あうっ……くうっ……んっ……」
 
 微妙に加減しながら、探り当てた部分をやさしく、執拗に愛撫した。
 くねくねと亜矢の腰がうねる。ますます指先が熱い液にまみれていく。
 目を閉じ、息継ぎをするように喘ぐ亜矢の表情。
 くねるたびに波打つやわらかな乳房。

「すっげえ……すっげえ……すっげえヌレようじゃねーかよお……オジョーチャンよお……ほんとうにどうしようもねえ助平女だなああ、アヤちゃんはよおおお!……ほれ、ほれ、ほれ、ほれ、パンツの中がクチュクチュ言っちゃってるよお……」
「あっ……んっ……ああっ……んんっ……」
 亜矢が紗英の首の後ろで、彼女の腕にいまだ絡まっていたセーターを、もどかしそうにもぎとり、なんとか外した。そして、改めて紗英の首にしがみつく。
「ほれほれえ……どうだああ……気持ちいいのかあ……いいいのかよおお……さっきまでのニクタラシい口はどこにいったのかなあ……もう、気持ちよすぎて、ニクマレ口効く元気もなくなっちゃったのかなあ……下の口は舌なめずりしてるぜえええ!!
「……すっごくいいよ……」震える声で亜矢が囁く。紗英の耳に吹き込むように。「……ねえ、ホント……パンツ、脱がせてよ……びちょびちょになっちゃったじゃん」
 と、亜矢が恨めしそうに紗英を見上げて、唇を“むー”の形にする。
 
 あああ、と紗英は思った。もう、じゃれあいでは済ませない。


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