ノルウェイの鮭
作:西田三郎

「第8話」

風の歌を聞け

「この淫液まみれの淫売め……もう足首まで垂らしとるやないか……」
「……う……そう……もっと言って
 深夜0時くらいだったろうか。さっそく僕とみどりは寝室のベッドの上で一発目にとりかかっていた……いや、“寝”ようとしていた。みどりはベッドの上で四つんばいになり、窓から入り込む月明かりが腰から尻へのなだらかなカーブを照らし出している。みどりは全身にうっすらと汗をかいていた……エアコンの具合がよくないのだ。僕も汗まみれだった。
 しかし……こんな姿のみどりを見ていると、とても彼女が病人であるとは思えない。
「……ほら」僕は一気にみどりに中指を突っ込んだ。
「…うっ……」みどりの躰がこわばる。中はとても熱かった。ぐつぐつ煮え立つシチューに指を突っ込んでいるようだった。指を曲げてみた
「……ああっ………」みどりがひときわ大きな声を上げたので、僕は焦った。
「……おい、あんまり大きな声出すなよ。隣で寝てる緑ちゃんに聞こえるやないか
「……ええねん……聞かせたってえな」みどりが僕を省みる。汗で前髪が額に張り付いている。薄目で僕を見る様は、実にいかがわしかった「……あの娘な、なんでここに入ってるんやと思う?」
「……なんか知らんけど、心の病気なんやろなあ」
「あの娘な、すけべえやねん」
「え?」思わず指を抜いてしまった。
「……ああん……抜いたらあかんやん
「あ……ごめん」僕はまた指を入れる。またみどりの躰が強張る。
 「あの娘な、まだ11歳やけどな……ん……な…七歳のときから……ひとりエッチしてたんやて。……まあ、早い子はそれくらいからでもするわな……でも、あの娘はな……あっ……人一倍、オナニーが好きになってしもてん……7歳の時から、一日最低10回は………んっ……オナニーしてたんやて……家ではもちろん……が、学校でも……」
 「学校でも?」僕はさらにもう一本、指をみどりに差し入れる。
 「……はっ………う」みどりの躰がゆっくりと波を描いた「……そ、そうや。学校でも、我慢できへんかってんて……休み時間とか……ひとり……トイレに入ってな、そこで……ひとりエッチしてたんやて………すごいと思わへん?
 「……すごいというか、何というか……」
 「……しまいには、授業中にも我慢できへんようになって……“先生、トイレ行かせてください”言うて、……ト、トイレでオナニーしてたんやて。なんやようトイレ行く子やなあ、って先生とかクラスの子らは思ってたけど、実はあの娘、トイレでオナニーしてたんや
 「……はあ……」
 確かに気の毒な話だが……怪しからんことに僕は、だんだん亢奮してきた。あの大人しそうな、いたいけな少女が、人目を忍んで学校のトイレで声を殺しながらオナニーに励んでいるところを想像した。想像してはいけないものを想像するというのは、人より想像力を持ち合わせた者だけが知る最上の愉しみである。
 と、みどりが僕の股間に手を伸ばしてきた。
「……いやあ……なにこれ。めちゃくちゃカチカチになってる……」みどりが悪戯っぽく僕を見上げる。その表情は、塀の外にいるミドリに似ていなくもなかった。「……なんなん、あんた、緑ちゃんの話聞いて、亢奮したんか?」
そ、そんなんちゃうわ」図星だったが……。
……もっと亢奮させたろか」みどりはそう言いながら僕の肉棒をゆっくり扱きはじめた「……あの娘な、あんまりしょっちゅう授業中にトイレに行くもんやから、先生も疑いはじめてな、トイレ行きたい、言うても簡単には行かせてもらえへんようになってしもてん……授業中、ムズムムズムズムズするやろ、なんかお尻、椅子にこすりつけたりしてな」
 鮮明にその有様が映像で浮かんできた。いたいけな緑。あの、おすましさんの緑。あの、可愛らしい緑が、オナニーの欲求と戦って尻を学校の硬い椅子にこすりつけている。緑の顔は紅潮している。背中にも、脇の下にも……そして内腿もじっとりと汗が滲んでいる。そして子供っぽい木綿の下着の中は、火山口のように煮えくり返っている……なんていやらしいんだ!
「……それでついに、あの娘……授業中にやってもてん」
「……え?」
「オナニー」
ウソやろ?
「本人が言うてたもん。………先生に見つかる寸前に、イってもてんて」
「………はあ……」
 荒い息をしながら、ぐったりと教室の机に突っ伏している緑の姿を想像した。なんて…なんて…いけない子なんだ。しかし、ことの次第を知った担任教師の反応だけは、どうしても想像できなかった。
「……そやからな、多分、あの娘、今コップかなんか壁にくっつけて、あたしらのやってること聞いてると思うわ。聞きながら……やっぱりオナニーしてんのとちゃう?
「ほんまか?」
「多分」
 あのつんと済ました利発そうな少女が、コップを壁に当て、右手をスカートの中に忍ばせて、われわれ穢れた大人の睦言を聞いている。壁の向こうでは、今、まさに11歳の少女が、パンツの中に手を入れて、指で自分を捏ねているのである。
 耳から血を吹きそうなほど亢奮した。
「えっ……?」みどりを立たせる。
「このまま、そっちの壁に手をついて」そっちの壁とは、緑の部屋がある方の壁である「腰、突き出して
……ええ?マジ?」言いながらみどりは、素直に従う。僕以上に亢奮しているらしい。
「……聞かせたろうやないか……緑ちゃんに」
 僕はみどりの後ろに回ると、腰に手を沿え、前触れもなしに一気に挿入した。
ううんっっ!!」みどりが後ろへ大きく仰け反る。
 その頭を後ろから押して、壁に押し付けた。
「……あ……そ、そんな……ちょっと
「でも、もう腰動いとるで」確かに、みどりの腰は左右にゆっくり揺れていた「“突きまくって”って、言うてご覧」
「……そ、そんなん……」
「……ほら、言わんと抜いてまうで……」そう言ってほんの少しだけ腰を引く。みどりの腰はしっかりそれを追ってきた「……ほれ、言うんや。“突きまくって”って……」
「……つ……」みどりはしっかりと目を閉じている「……つき……まくって……」
「……あかん、もっと大きな声で言うんや。緑ちゃんにちゃんと聞こえるように」
「……そんなん……あたしら、ずっと一緒に暮してんねんで……恥ずかしいわ
「……ほな、抜いてまお」腰を引く…、緑の腰が追ってくる。その繰り返し。
「………あ、あ……あかん……もうあかん……お、お願いやし……」
ほな、言うんや」
つきまくって……
もっと大きな声で!!
「つきまくってっ!!!!!」
 要望どおり、僕は突きまくった。みどりは狂ったように……いや、狂っているからこんなところに居るのだが……喘いだ。泣きながら、許しを請うような喘ぎ方だった。隣の部屋にいる緑どころか、この山のふもとにまで届きそうな派手な声を上げる。僕とみどりがつながっている部分からは、後から後から熱い液が溢れ出した。ふと下を見ると、それはほんとうにみどりの踝あたりまで垂れていた。いつもよりずっと長持ちした…………明日の朝まで突き続けられそうな気がした。
「……あ、あかん……あかんて、タナベくん。………もう……もう……こんなん許して……あたし、あした、緑ちゃんと顔合わせられへんようになるやん……」
「……大丈夫やって。緑ちゃんも喜んでるよ
 腰を落とそうとするみどりの腰を強引に元の位置まで引き上げ、さらにみどりの躰を壁に密着させた。みどりの乳房が、壁におしつぶされる。みどりは壁に頬をつけて、爪で壁紙を掻いた。
「………あ………あかん……………あかん………このままやったら………このまましたら…………あたし……」
イきそうなんか?」
「………」みどりがこくん、と頷き、恨めしそうに僕を見る。
「ほな、言うんや“みどり、イっちゃう”って」
……あ、あほ!……そんなん絶対いやや
「ほな、止めてまうど
「……あっ………えっ……エロいわ……タ……タナベくん、いつの間にそんなエロなったん?
「……ほら、言い」
「……あっ……あっ………い………いっちゃう……」
たしかにみどりの締め付けがきつくなってくる。すごい、たぶんこれは一生忘れられない一発になる。
………もっと大きな声で!緑ちゃんに聞こえるように!!
「……ああっ……みどり、イっちゃう!!

みどりが、壁を伝って床に崩れ落ちる。ぼくはしっかり肉棒を挟み込まれたまま、みどりの後ろに座り込む。

「……聞こえたかな」僕は言った。
「……聞こえたに、決まってるやろ」みどりは非難がましい姿勢を僕にくれた。

NEXT/BACK

TOP