詳しいことは知りませんが
作:西田三郎■ナイトメア・イン・クリスマス
「ああ…あ……はあ、あ、あ………いや……あっ………」
あたしは何とかガラスの壁を伝って這い上がろうとしたけど…そいつの力が強いのか、それとも這い上がるあたしの力が弱いのか…そのだびに箱の底に押し戻された。
押し戻される度に、そいつの伸ばす触覚か口か脚だかなんかの数が増えて…あたしの躰を這い回った。
気が遠くなってきた。
言っちゃうけど、すっごく良かったよ。
あんなの、ほんとにはじめてだった。
そいつに知能があるかないかは知らないけど、そいつはあたしが躰のどの部分をどうされれば気持ちよくなるのかを、丹念に調べ上げて、見つけたらそこをいやらしく、ねちっこく攻めた。馬鹿みたいだけど、あたしはあっという間にいかされそうになった……だいたいそんな状況で、いきそうになるなんてほんとに信じらんないけど、ほんとにそうだったんだから仕方ない。
でも、そいつ…しっかりあたしの呼吸を見計らって、あたしがいきそうになると、うまいこと焦らすんだよ。
あたしは何遍もいいとこまで這い上がっては、そのすんでではぐらかされた。……躰の中も頭の中もとろけそうになってくばっかりで、そのはけ口がないまま、ほんとうにおかしくなりそうだった。
これは夢だ、夢なんだって自分に言い聞かせようとした。
あたしもかなり溜まってるのか、すっごいやらしい夢を見てるだけなんだってね。
でも気ちがいになりそうなほどいいのね。その感覚だけは、どうしても現実なの。
場内から大歓声が聞こえたような気がするけど…あまり気にならなかった。
と、水槽の上蓋が上の方で開いて、何かがもうひとつ、べちゃっと落ちてきた。
えっ、と思ったけど、またあっという間に上蓋が閉まる音がする。
とんでもなかったよ。もう一匹、それが入ってきたんだ。
しかも、今度のやつはでかかった。はじめのやつより、ふたまわりくらい大きかったんじゃないかな。
そんなのが落ちてきたもんだから、あたしとそいつらが閉じこめられてる水槽は、ほんとに満員になった。
多分、あたしたち…って、…“たち”じゃないよな…まあいいけど…が閉じこめられてる水槽を外から見たら、まるででかい塩辛の瓶詰めみたいだったんじゃないかな。そのなかであたしが泳いでるみたいな。
真面目な話、ほんとうに泳いでるみたいだった。
必死にもがいたけど、水槽の中はそいつらのブヨブヨ、ヌルヌルした躰で満たされてて、逃げ場がないんだ。
肩のあたりまで、そいつらの体の中に浸かってるみたいな状態。
むせ返るような生臭い匂いだったけど、いやな匂いも限界値を超えると気にならなくなるもんなんだね。
あたしにはそれを不快に感じる余裕もなかった。
そいつらはそれぞれにフー、フー、フー、フー、一定のリズムで息をして…それぞれの伸ばした無数の脚だか触覚だか口だかで、絶え間なくあたしの体を嘗め回していた。
そいつら同士は意志疎通ができんのかな?
とにかくもう、どっちがどこに吸い付いてんのかは判んなかったけど、首筋も、肩も、乳房も、乳首も、そいつらに吸われてるわけ。おへそにもあそこにもお尻の穴にも、そいつらの体から伸びた脚か触覚か口かなんかが入ってきて、なかでいやらしく動き回ってるわけ。なんか…2匹で示し合わせたみたいに、あたしの弱点ばっかりをねっとり攻めてくるの。
でも、いかせてはくれない。ほんと、あんなに焦らされたのは後にも先にもあれきりだったね。
気を失っちゃえばラクなんだろうけど、気を失うこともできなかった。
「……あ…………あ…………あああ………い……や………………あ……………あ」
もう口からは、喉が詰まったときのような声しか出なかった。
涎もたれ流してた。
と、口の中に、そいつらから伸びてきた触覚だか脚だかが、2、3本入ってきた。
「………む……ぐ………ん……」
味?…うーん…なんて言ったらいいんだろう。
美味しくはなかったよ。当たり前だけど。
それはものすごく熱くて、しなやかで、ぬめっていて、柔らかくて、弾力があった。
新鮮な蛸とかはあんな口触りなんじゃないかな。
でも、それは生きていて、口の中で動くわけ。その意味では、人間の舌みたいだった。
ほんとにあたしはおかしくなってたから、口の中に入ってきたそれと、舌をからめた。まるで、キスしてるみたいに。そいつは口の中でも器用に動いてさ、今考えると気持ち悪いったらないんだけど、その時はほんとにキスしてるみたいな気分になっちゃったな。あたしは夢中で舌を使った。あたしの舌に応えるみたいに、それが口のなかで蠢いて、絡みついてくる……不思議だよねえ、それ、だんだん太く、固くなってくみたいだった。
…気のせいかな?
気がつくと、場内が湧いてた。
外から見るとその様子は、どんな風に見えたのかな?。……多分、すっごくやらしかったんだと思うよ。
かなりウケてたみたいだし。
「………む…………ん…………は………」
そいつ自身の粘液とあたし涎がからみあって、あたしの口からそれが引き抜かれた時は、糸引いてただろうね。
それが合図だったのかな。
あたしの全身に絡みついていたそいつらの体が、かっと熱くなった気がした。
フー…、フー…、フー…、フー…、いってたそいつらの息のリズムが、早くなるのを感じた。
フッフッフッフッ…って感じで。
そっからがすごかったね。
そいつらがまるで波打つみたいにして、一斉攻撃を掛けてきた。「……ひっ……やっ………………あっ………ああああっ…!」
全身に吸い付いてるそいつらの脚だか口だか触覚だかが、あたしの全身から何かを吸い上げるみたいに激しく蠢いた。当然、あたしの急所はしっかり押さえたままでね。
ほんと、死にそうだった。もう、どうなっちゃうんだろうと思ったよ。
「…あああっ………い……いい……ひっ…………あっ………ああっ!!!」
あそこに入ってくる脚だか口だか触覚だかは、だんだん本数が増えてくみたいだった。お尻の穴入ってくるのも。あそこに入ってきたやつも、お尻の穴に入ってきたやつも、どんどん奥まで入ってきた。両方の乳首は千切れんばかりにねぶり回されてる。胸に、肩に、二の腕に、太ももに、お尻の肉に、背中に、脇腹に、膝に、脹ら脛に…それぞれがめちゃくちゃに吸い付いてきた。あたしはそいつらの体のなかで溺れてるみたいだった。
マイクが拾った水槽の中の音が、場内中に響き渡ってた。…びちゃっ…びちゃっ…びちゃっ……てね。
「あっ……あっ……あああっつ…うっ……いや………いやっ………んっ……あっ」あたしの声も同じようにマイクが拾っていた。あたしの声と、その湿った音が重なり合って、反響していた。
「ん……あ、あ、あああああ、…………………………………ああっ…あ!」
いっちゃった。でも、当然、そんなんで許してもらえるわけないよね。
あたしは息も絶え絶えだったけど、そいつら2匹はまだまだ足りないみたいで、あたしを弄び続けた。ちょっと、休憩くらいさせてよ、と思ったけど、まあ、一晩50万の仕事だからね。…そんな勘定をする余裕もなかったんだけどね。あっという間に、あたしの躰は限界点まで亢ぶってた。
もう、そいつらは焦らしたりしなかった。
あたしをいかせるだけいかせようとしてるみたいだった。
「………あ、あ、………や……もう…………もう……だめ………許して………んんんっ!!」
またいっちゃった。
場内は大歓声に包まれてた。皆さん、愉しんでいただけましたでしょうか?
でも、あたしは気も失えないで、そいつらに連続していかされ続けた。
ほんとに外から見ると、どんな風景だったんだろうね?
あんなにウケてたんだから、相当エグかったんだとは思うけど、それでも想像できない。
4回目にいった時なんて、おしっこを漏らしちゃった。
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