大きくて、固くて、太くて、いきり立つ魔法

作:西田三郎


■5■ セーラー服の夜

「いやらしい……すっごくいいよ……かわいいでえ……」
「…………」
 いや本気で、アホじゃない?アホでしょ?……って思ってましたけど、口には出しませんでした。
 できるだけ軽蔑の冷たさが出ないように、拗ねたような顔で夫を……ヤスを睨みました。
 半分は本気で、半分は……そんな表情をしてみせることが、ヤスを喜ばせることになる、と思ったから……なんせ夫は本気なのです。
 不能、じゃなくて、インポテンツ、じゃなくて、EDになってから一ヶ月。
 彼は必死でした。そして……このセーラー服を買ってきて、わたしにそれを着せているのです。
「かわいい……すっごく可愛いでえ……」夫が、フー、フーと鼻息も荒く言いました。「すごいええ……」
「……そ、そうかなあ……」
 わたしが着せられているのは、縁に三本のライン入りの濃紺のカラーがついた、夏服のセーラー服でした。ブラウスは白でリボンは臙脂色。プリーツスカート は……太腿の4分の3くらいまでを顕にするくらい、『これ、膝上何センチやねん』というくらい短くて、それに合わせた黒いニーハイソックスまで履かされていました。ってか、こんな女子高生、 街でもほとんど見かけません。存在するとするなら、AVとかそのへんの世界だけです。
 わたしはその晩、『幻想の女子高生』でした。
「……女子高生に戻った感じしせえへん?十代の頃に?」
「え……うーん……」
 ちゃんと答えませんでした。わたしの高校、ブレザーだったし。わたしこんな、短いスカート履いてなかったし。だいたい何ですか。このふちのところにラインの入った黒いニーハイは。これ、完全になんというか……アッチの世界の女子校生じゃないですか。
「ほら、こっちにおいでえな……」
「えっ……ちょっと……」
 ぐい、と手を引かれて連れて行かれたのは、玄関の脇にある大きな姿見の前でした。
 え、な、何考えてんのヤス。わたしは焦りました……が、わたしの背中を押すヤスの下半身が、たまに、ちょん、ちょん、と着せられた短いプリーツスカート のお尻や……ほとんどお尻にいたる素肌の太もものなだらかな裏側に当たります……固くなっていました……まさに、びんびん丸でした……わたしは戸惑いなが ら、夫がわたしにこんなアホな格好をさせたことに半ば呆れながら……それが、ちょん、と触れるたびに自分の頬がほてり、心臓がドキドキしてくるのを感じま した……てか、治ってるじゃん……ED……こんな恥ずかしい格好させられてるのも、それなりに効果出してるじゃん……。
「ほら、見てみ……」
「えっ……あっ……」
 夫に手を引っ張られて、連れて行かれたのは、玄関前の全身が映る姿見でした。
「……ほら、見て見て」
「えっ……ちょっと……」
 夫がわたしの両肩をつかんで鏡の前立たせ、背中にぴったりとくっつきます。
「……ほらあ……まだまだ、ぜんぜん似合うやん……これ、とても32歳の熟女には見えへんで……可愛いでえ……」
「じゅ、熟女って……言うな……」
 わたしはちら、と鏡に映る自分の姿を盗み見ました。
 すごい。やばい。
 確かに……まったくリアルな女子高生には見えませんし、見えないからこそいかがわしかったのですけれども……わたしは体型がスリムで、脚も長くて、肌もキレイなので……すみません、自慢してるん じゃありません……それに、最近は男の子みたいなショートカットにしているので……なんか、インモラルな感じでした。『いかがわしすぎる』って感じです。
 鏡の中の自分が、もじもじとニーハイに膝頭まで覆われた脚を合わせて、太腿をすりあわせていました。
 実際に女子高生だった頃よりは少しはましに膨らんだおっぱいがセーラー服の白い布地を持ち上げているのが……カラーの隙間から鎖骨が覗いているのが……これがもう、どうにもこうにもいやらしい感じです。
「ほら、女子高生に戻った気分になってみ……」
「あ、あほちゃう?……そんなん……」と言いながら、鏡から目をそらすことができません。「あっ……」
「ほうら……お尻に、当たっとるで……女子高生やったとき、よう痴漢に遭うたやろ……痴漢のおっちゃんに……かったいのを……押し当てられとるでえ……」
「へ……へんたい……んんっ!」
 スカートを通してお尻の隙間に、夫のアレが当たりました。えっ……あのっ……これって……ナマで当たってない?……それが、ずり、ずり、ずり、ずり…… と、お尻の割れ目を、スカートのプリーツに沿って擦りつけられてきます……いや実際、女子高生だった頃は電車通学だったので、確かにお尻を触られたり、ス カートの中に手を突っ込まれたり……こうやってその……直接じゃないけど……ギンギン、ビンビンのアレをお尻に擦りつけられたりしたこともしょっちゅうありましたけど……ってかヤス、いつの間 にズボンからアレ出したんでしょう?
「……ほうら、ほうら……おっぱいも、触ったるでえ……」
「んんっ!」いきなりブラウスの上から、右のおっぱいを掴み、揉み込まれます。
「あれえ……?……この女子高生、エッチやなあ……ノーブラやんか……」
「あ、あんたがノーブラで、って頼んだんやんっ……あっ……いやっ!」
 スカートが、たくし上げられました。ほとんどたくし上げるほどもない短いスカートでしたけど……これも、夫に履け、と言われた、赤いシースルーの、バカみたいにスケベな下着でした。
「……ホンマ、最近の女子高生は…なんちゅういやらしいパンツを履いとるんや……」
「……そ、それもあんたが履け、って……んんっ……」
 後ろから顎を掴まれて強引に首を右肩近くまで寄せられると、夫は有無を言わさずわたしの唇を奪い……っていやらしい表現ですね……おもいっきり下品に、舌をねじ込んできました。
 いつものヤスのキスじゃないです……もっと荒々しくて、下品でした。
 でも、わたしもなんか、こんな格好しちゃってるし、なんか恥ずかしいし、盛り上がってきたし、思いっきり激しく、下品にヤスの舌の動きに応えました。
「んんっ……ふっ……んんっ……んっ……あっ!」
 夫がわたしのそのシースルーのパンツの後ろを引っぱり、まるでTバックみたいにして、脇からにゅるり、と長い指……たぶん中指を忍び込ませてきます。そ の指を入り口に浅く潜らせながら、もう一本の指……たぶん人差し指は、あっという間に……まるで最初にこういうことをした、あの大学での空き教室の時みたいに…… 正確に、迷いなしに、一直線に、うすい布地の中で“はやくどーにかしてよ!”と言わんばかりにうずいていた頂点を捉えました。
「びっちょびちょやで……ほんまに……近頃の女子高生はけしからんなあ……」
「あっ……はっ……ああっ……あ、あかんっ……」
 もうヤスの“痴漢のおっさんと女子高生”ごっこに付き合っている余裕はありませんでした。
 ヤスは……わたしのセーラー服の横のファスナーを素早く上げると、ブラウスの前を、一気に首までたくし上げました。
 ぶるん、と……というほどでもありませんが……わたしのおっぱいが躍り出る様が、鏡に映し出されます。
 いやほんと、もうその時点で、わたしの乳首はびんびんでした……って、下品すぎます?
「いやらしいおっぱいして……ほら、ほうら……」
「いっ……いっ……やっ……」すかさず、ヤスがわたしの左手を取って、自分のアレを握らせます。
 す、すごい……ぎんぎんでした。ビンビンでした……こ、これってやっぱ、このバカみたいなセーラー服プレイの効果すごい……バカみたいだと思ったけど……それでも……だって……。
「……ほら、ほら、こうするとどうなんのかなあ?」右手で左右の乳首を交互に転がされました。
「あんっ……んっ……はっ……うっ……バカッ!へ、へんたいっ!
「もっと声出してもええんやで……」乳首をいじっていた手が、脇腹を伝って下半身に降りてきます。「……ほら……もっと恥ずかしゅうしたるわ……」
「だ、だめっ!」夫の手が、冗談みたいに短いスカートのホックにかかりました。
 だめ、といいつつ、ヤスがじわじわそれを外し、ジッパーを下げるのを……わたしはぼうっとした頭でとくに抵抗もせず……むしろヤスを興奮させるために、お尻をくねらせます。まるで円を描くみたいに。
 そのとき、スカートがふぁさ、と、床に音もなく落ちました。




 

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