大きくて、固くて、太くて、いきり立つ魔法

作:西田三郎


■4■ 空き教室の思い出

 不思議なことですが、わたしはその晩に大学時代の夢を観ました。
 ふたりとも、まだ二十歳だった頃の、正確な記憶を再現した夢です。
 はじめて、夫とエッチなことをしたのは、大学の構内にある空き教室でした。
 夫は……その頃にはヤスユキ君と呼んでいましたが今は『ヤス』って呼んでます……ヤスユキ君はとても情熱的で、必死で、その頑張りようと興奮の加減がと ても可愛く、それが当時まだ二十歳で、男性経験といってもそれほどたいしたことがなかったわたしにとって、とてもエロく感じたことを覚えています。

「えっ……あかんってヤスユキ君……こんなとこ……誰か来たらどーすんの?」
「ええから!え、ええから!」ヤスユキ君、今のヤス、つまり当時のわたしの夫は、とても興奮した様子でした。 あれは確か、前期試験もそろそろ終わりの夏休みの直前。
 大学のキャンパスの緑がとっても濃くて、わたしの手を引っ張るヤスユキ君と、引っ張られるわたしの影が、白い石畳の上にくっきりと浮かび上がっていたの をはっきり覚えています。蝉がいたるところでヒステリックに鳴いていました。キャンパス内は学生でいっぱい。少しでも涼める場所を求めて、みんなが 日陰か、ラウンジかでだらだらしている中を、ヤスユキ君がわたしの手を引っ張っていきます。とてもドキドキしました。そのうえ、直射日光が容赦なくわたしの頭に 降り注いでいたので、わたしも何だか頭がぼんやりしていきます。
 わたしもヤスユキ君も文系だったのですが、そのときはあまり人気がなかった理系棟に入りました。
「えっ……なんでここ……」
「いや、その、ここやったら俺らのこと知ってる奴もあんまり……」
 彼の顔は真っ赤でした。日焼けと、興奮と、たぶん照れで。
 そしてそのまま、2階の適当な明かりのついていない小教室に連れ込まれてしまいました。
 といっても、わたしも引っ張られるふりして、かなりゾクゾク気分だったんですけど。
「ほら、入って……」
 ヤスユキ君に背中を押されて、わたしは明かりのついていない教室に押し込まれました。
 外の明るさと部屋の暗さの落差で、一瞬目の前が真っ暗になったのを覚えています。
 部屋の中はちょっとひんやりしていたのも、はっきりと。
 わたしが教団の前でもじもじしながら立っていると、ヤスユキ君がわたしに振り向きました。
「……でも、やっぱ……こんなとこ……きゃっ!」
好きや!
 ヤスユキ君が、まるでタックルするみたいに飛びっかかってきました。そのままわたしは抱きしめられて、グイグイと窓際まで追い詰められ、カーテンを敷いた窓に背中を押し付けられます。
「ちょ、ちょっと……あかんって……こんな……そ、外から……カーテンから透けて見えるって……んっ……」
 ヤスユキ君がわたしのTシャツの上から、ぎゅっ、とおっぱいを握りしめました。
 ちょっと、最初は痛かったです。昔のちょっとした経験のときみたいに……でも、ヤスユキ君は、それでわたしのおっぱいの硬さやブラジャーの具合を確かめたみたいで、すぐにやわやわと乳房の全体を揉み始めました。
「……ええ、おっぱいやな……かわいい、ちょうどええ、おっぱいやな……」
「あほっ……」貧乳ってことかい、と思いましたが、でも少しうれしかったです。「で、でも……ちょ、ちょっと待って……こ、このままやったら、ほんまに……そ、外から気づかれてまうし……んんっ」
 ヤスユキ君がわたしのくちびるにむしゃぶりつきました。
 ほんとうに、貪欲です。
 相手が貪欲に求めてくればくるほど……興奮を煽られてしまうのは、昔も今も同じです。舌がこじ入れられてくると……今度はわたし のほうから、積極的にヤスユキ君の舌を絡めとっていました……でも、そんな不器用なキスからは、わたしを気持ちよくさせたい、蕩けさせたい、という意志を感じます。わたしのほうが、その時点ではキスは上手でした。経験値からきたものというよりも、むしろこ れはセンスの問題です。わたしはむさぼってくるようにわたしの舌に襲い掛かってくるヤスユキ君の舌を、まるで太極拳の達人のように流麗に流し、はぐらか し、するりと逃げては、相手のスキを見つけて積極的に絡めとるのを繰り返しました。
 ヤスユキ君はちょっと気圧されたみたいでしたが、一瞬、若さゆえの余裕を見せようとしたのか、むしゃぶりつくわたしを一旦引き離して、わたしの顔をニヤつきながら眺めます。
「ほんま、エッチやな……」
「……」
 “あほっ”って言ってやりたいところでしたが、ヤスユキ君のギラギラした両方の黒目に、わたしの顔が映っていました。“うっとりしてる”とか、とてもそ んな表現では収まらないくらい、わたしの顔は惚けています。欲情しています。求めています。欲しがっています。ほんとうに、『欲しがりさん』のわたしの、 すけべえな顔がそこに映っている……ということは、ヤスユキ君にもそれを見られているということで、わたしの顔は、かっと熱くなりました。ぎゅっ、とデニ ムスカートの中で太腿を絞めてしまいました。
 というのも、じゅん、と熱いものがあふれてくるのがわかったからです。
さわって……ええ?」
「えっ……あっ」
 わたしの返事を聞く前に、ヤスユキ君の熱く、湿った手がわたしの太腿の間にねじ込まれてきました。
 うん、とも、いいよ、とも言ってなかったのに。てか、“さわる”って、さっきおっぱいを了承も得ずに思いっきり揉みまくったじゃん、と思っていたのに、ヤスユキ君が求めていたのは“下半身をさわる”ということでした。
「いやっ……」とか、いちおう言ってみました。そして太腿をさらに閉じよう、としました。
「ほら、いいでしょ……ほら……」
「やっ……だめっ……あっ……」
 ちょっと乱暴に、ヤスユキ君の膝がわたしの生脚の膝頭を割って侵入してきます。
 わたしは……その……すいません。抵抗せずに、そのまま脚を開いていました。
 
  ぎゅっ。

 ヤスユキ君は勘がいいです。その日履いていたパンツはベージュのナイロンの地やつでした。ヘンなことを、しっかり覚えているものです。
 でも、その時点でわたしがいちばん触られると恥ずかしい、もうすでに、内側から染み出している部分を、彼の指が押さえました。
「あんっ………」思わず、恥ずかしくて、恥ずかしすぎてびくっ、と身体が跳ねちゃいました。
「……濡れてるで……スケベ」
「す、スケベは……ヤスユキ君やろ……」恥ずかしくて彼の顔をまともに見られませんでした「んっ……」
「ほら、こうすると、もっと濡れてくるでえ……」
「やっ……あ、あかんっ……そ、そんなん……んんっ……」
 的確でした。
 入り口のあたりを、ヤスユキ君の指が行ったり来たりします。
「腰、動いてるで……」
「あほっ!……あかんっ!」ちょっとふくれっ面をしてヤスユキ君を睨みました。
「ほら、動いとるで、腰」
「そ、そんなん……い、言うたかて……」たしかに、わたしの腰はヤスユキ君の指からの刺激を逃れるためか、それとももっと求めるためか、どっちだかわかりませんが前後に動いています。「そ、そんなとこ……あかんって……言うてるやろ……んっ……んんっ!」
「ほら、こうしたらどうなんのかなあ……」
「い、いやっ……!」思わず、ヤスユキ君の身体にしがみついていました。
 なぜなら、ヤスユキ君の指がパンツの上から、いちばん熱くなって、硬くなって、じんじんしている、あの感覚が集中するスケベな部分を布越しにくすぐったからです。
「……スケベ。ほん、あ、やらしいんやから……」耳元でヤスユキ君が囁きます……熱い息を吹き込みながら……「……今度は……腰が……回り始めとるで……」
「や、や、や……あっ……ちょ、ちょっと!」
 するり、と前からヤスユキ君の手が、下着の中に滑り込んできました。
 さすがに焦って、脚を閉じようと思ったのですが、ヤスユキ君はスキなく指を滑り込ませ、
「く、くうっ……」もうすっかりあふれていたその部分を素早く探ると、肝心な先端に指を添えてきました。
「……すごい……びちょびちょやん……」
「やっ……ちょっと……ほんま、だ、だめっ……」
 わたしはなんとかヤスユキ君の微妙な擽りから逃れようと腰を逃がそうとしました。
 このままじゃ、ほんとにもっとあふれちゃって、下着が“びちょびちょ”になってしまいそうだったからです。そんなの、これから講義も2つほどあるのに、恥ずかしすぎます。
「……触ってえな……」
「えっ……」
 わたしの右手を、ヤスユキ君が取りました。
 恥ずかしくて目を開けられないでいたんですけれど、ぎゅっ、っとわたしの手の中に熱いものが握りこまされたので す……言うまでもありませんが、ヤスユキ君の……大きくなって、長くなって、太くなって、固くなって、カリっていうのが高くなっていた(んだと思います)、アレでした。手が火傷 しそうなくらい、それは熱くて、ビクン、ビクンと脈打っています。
「……どう?」ど、“どう”って……。
「……や、いやっ……こ、こんなん……こんなとこで……あかんって……」
「……ほら」ヤスユキ君がアレを握られたわたしの手に自分の手を被せ、前後に動かし始めました。「すごいでやろ……熱いやろ……固いやろ……なんで、こんなんなってると思う?」
 な、なんでって……それは……つまり……その……わたしが……ヤスユキ君を、コーフンさせてるわけで……ああ、それってなんか、ものすごくエッチ。目眩 がするくらいエッチ。しかも今、ヤスユキ君にパンツの中に手を突っ込まれて、どんどんぐちょぐちょのびちょびちょにされて……『ヘッヘッヘ、濡れとるで え……お嬢ちゃん……』的な状態になってるし……ああもう、なんだかわけわかんない!
「ふんっ!」わたしは変な声を出して、そのまま教室のリノリウムの床に膝まづきました。
「え、あの、ちょっと……ええっ!」
 わたしは目を閉じると、口を開いて、かぽっ、とヤスユキ君のアレを口に含みます。
 それは口の中一杯に収まりきらないくらい、太くて、大きくて、口の中がやけどしそうなくらい熱くて、人間の身体の一部で、骨がない部分だとは思えないくらい固かった……はずです。
 わたしはその日、はじめてヤスユキ君にアレを、口にふくみました。
 そして、その当時の知識と経験のすべてを振り絞って、ヤスユキ君を責め立てました。
 しかも、その日わたしは、生まれて初めて精液を飲みました。




 

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