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童貞スーサイズ
第一章 「ザ・ガール・ウィズ・ノー・ネーム」



■第5話■ They do very, very bad things.

  携帯が鳴ったのは、それから2週間ほど後のことだ。
  時刻は夜9時を回ったところ。芳雄は自宅の自室に居た。

「モシモシ。センズリ、ソコマデ。パンツ、上げルネ」マリアだった。
 あの路地裏での衝撃的な経験のあと、マリアと芳雄は携帯番号を交換していたのだ。
「お……お久しぶりです」芳雄は声を潜めて電話に出た。オナニーは、今まさに、これからしようと思っていたところだった。「……か、彼女、現れましたか?」
「……イマサッキ、オトコト、『いのこりラッコ』ニ入ッテタネ。トコロデ、イマ、コイテタカ?」
「……こいてませんよ」図星だったが、それどころではない。「ほ、ほんとに現れたんですか?」
「……アレカラ、アノバン、ワタシニ口デサレタコト、思イダシテ、コイタカ?」
「……こっ……こいてません!!」
「ウソ、コイテルダロ。マイバン、コイテルダロ」

  マリアはしつこかった……芳雄は否定したが、否定しきれない部分もある。
  自慰の際に、まず思い浮かべるのは、あのビデオの少女と、父の姿だった。その映像により、視覚から自らの官能に種火をつける。
 そして手による刺激と総動員した共感力で、それを甘美な快感へとじっくり時間を掛けて捏ね上げていく。
 そうなるともう止まらない。
 イメージは芳雄の頭の中で次々と変貌する。芳雄はイメージの中で“ビデオの少女”そのものになり、同時に少女を攻め立てる父になる。
 ……しかし、絶頂も間近になると脳裏に浮かんでくるのは、あの湿気の匂いが立ちこめ外からの喧噪が木霊するあの路地裏だ。
 そして自分は汚いコンクリートに背をつけて、自分の脚の間にしゃがみ込んだマリアの舌が与える快楽に身を任せている……だめだ、あんな汚らわしいことを考えちゃダメだ……と思ったときにはもう遅く、あっという間に絶頂を迎えてしまう。
 毎度のことながら、芳雄は激しい罪悪感に打ちひしがれる……その繰り返しだ。

 いや、そんなことはどうでもいい。

「じゃあ……今すぐ、そっちに行きます!」
 芳雄は電話を切るとジャケットを引っかけ、部屋を飛び出した。
 玄関先で母が芳雄を呼び止める。
「ちょっと……こんな時間にどこ行くの??」
「……えーと」芳雄は一瞬で嘘をひねりだした。「友達が……そう、そうそう、友達が自殺しそうなんだ。行って止めてくるよ」
  母の返事も聞かず、そのまま家のドアを押して駆け出す。
 我ながらよくできた嘘だった……最近、自分は嘘の天才なのではないかと思うことがよくあった。いや……今のはあながち、嘘ではないのかも知れない。
  
 電車から飛び降り、一目散にホテル街を目指す。
  そういえば今日は金曜日だ。すれ違うのはべろべろになったサラリーマンや、OL、学生ばかり。どいつもこいつも幸せそうだった。こんなふう に毎週金曜の夜、彼らが5日間待ちわびた自由な時間やってきて、そのまる二日後にはそれがすっかり終わってしまう。だからこそ、みんな週末には酔っ払いで もしないとやってられない。そうしないと頭がおかしくなるか、自殺でもしたくなってしまう。そんな日常を、誰もがなんとかやり過ごしている。
  思えば世の中なんて寂しいもんで……それにかわいいもんだな、と芳雄はネオンの中を走りながら考えた。
  
 ホテル街はいつも強烈な風呂上がりの匂いがした。
 それぞれのホテルは「らびあん・るーじゅ」だの「トロピカル・ワイキキ」だの「アーバンスペース・7」だの適当につけられたそれぞれの名前を、毒々しい ネオンで飾り過剰にそれらの存在を主張している。この界隈をうろついていた芳雄は一度、以前読んだ小説に出てきた「アルファヴィル」という名前のホテルが ないか探してみたことがあったが、結局見つけることはできなかった。
 時間はサービスタイムが終わり、ステイタイムに入ったところ。それぞれのホテルから吐き出されてくる何組もの男女。同じように飲み込まれていく何組もの 男女。入っていくやつらはどことなくやましげで、出てくる奴らはお互いに含み笑いを浮かべているように見える。その一角に、『いのこりラッコ』はあった。
  
「コッチ、コッチ」
 ホテルの前の電柱の影から、マリアが声を掛けてくる。彼女はいかにも嬉しそうな(舌なめずりでもしそうな)顔で芳雄を迎えた。
「あ、こんばんは」
 芳雄は軽く一礼すると……好色そうなマリアの視線から慌てて目を逸らせた。
  
 改めて『いのこりラッコ』の外観に目をやる。
 白い壁のペンション風外観……おそらくは80年代後半、ファンシーな雰囲気を出そうと苦労してデザインされた雰囲気の建物だ。
 壁面にしつらえられた、お世辞にも可愛いとは言い難いラッコのイラストと『いのこりラッコ』のケバケバしいネオンサインが小さなカオスを作り出してい る。入り口には背の高い垣根があり、“どうぞこっそりお入り下さい”とでもいわんばかりに人の出入りを隠し、「LEST……¥7,500〜 STAY…… ¥2,500〜 全室ジャグジー・DVD・PS2完備」の文字が、これまた毒々しいネオンの色に縁取られて輝いていた。
  
「イチチカンクライ前ニ、コノホテルニ、アノコ、ハイッテッタネ。オトコトイショダッタヨ」
「一時間前か……どんな男でした?」
 言いながら芳雄も、何となくマリアに寄り添うようにして電柱の影に隠れた。コントに出てくる刑事か探偵のように。
「……ウーン、セガ高クテ、ヤセタオトコ。40歳クライカナ。セピロキテタケド、アレ、フツーノサラリーマンジャナイネ」
「セピロ?」思わずマリアの方を見る。
 マリアが笑い、ふわっとマリアのスパイシーな香水が鼻をついた。
「ウン、セピロ」
「ああ……背広ですね」
「ヤクザミタイナ、カンジダッタヨ」
「……やくざ?」」思わず、ゴクリと唾を飲み込む。
「ウン。アンタ、シッテル? ニホンノヤクザ、チンコニ、シンチュ、イレテルヤツ、イルネ」
「シンチュ? って……えっと、し、真鍮ですか?」
「チカウヨ。シンチュ。パールネ」
「パール??? 真珠を? ……そんな、嘘でしょう?? どうやって入れるんです?」
「アンタ、シラナイカ。ヤクザ、オンナ悦バセルタメニ、痛イオモイシテ、ジブンノチンコニ、シンチュイレルネ。チンコニ穴アケテ、シンチュ、埋メ込ムノヨ」
「……へ、へえ」思わず股間が痛くなるような話だった「そ、そこまでして……」
「シンチュイレタ、チンコ、ナカナカ、悪クナイヨ。マー、シンチュイレテルダケデ、満足シテル、アホナ、ヤクザモ、イルケドネ。タイテイノ、ヤクザハ、セクース、上手イヨ。アンタ、シランデショウ……ヤクザノセクース、スゴイノヨ」
「……は、はあ……」
「……アノコモ、ヤクザニ、ズコズコ、ヤラレテルカモネ……カワイソウニ、アンナニ若クテ、痩セッポチノ、オンナノコガネエ……ドウヨ、アンタ。ドウスルヨ、アンタ、アノコガ、ヤクザニ、ヤラレテルト、スルナラ」
「……どうするって……」
 余りにも嬉しそうなマリアに、芳雄はかなり引いていた。
「……アンタ、ソーゾーシテルデショ。アノコガ、セナカイチメンニ、タトゥー入レタ、ヤクザニ、アンナコトヤコンナコト、サレテンノ。アンタノ知ラナイヨーナ、スゲーコト、スンノヨ。ヤクザハ。」
「……す、凄いことって……なんなんですか?」
「……スゲー、イロイロナ、コトヨ」そう言ってマリアはニンマリと笑った。
  
 思わず、思考が浮遊する。
 少女はあの白いブラウスだけを身につけ、下半身裸の姿で、屈強なやくざの前に跪いていた。
 やくざの背中には立派な唐獅子が彫り込まれている。全裸で仁王立ちのやくざは不敵な笑みを浮かべ、目の前に跪く少女を見下ろしている。
 少女はあの癖毛の頭を揺らしながら、やくざの巨大な陰茎を口一杯に頬張っている……ちなみに妄想とはいえ、芳雄には真珠を入れた陰茎がどういうものなのかまったく想像がつかないので、陰茎の部分とやくざの顔には、モザイクが掛かっている。
“どや、おいしいか”と妄想のやくざが関西弁で聞く。芳雄の中でやくざは、関西弁である。“すぐ、これをおまえにぶち込んだるさかいな……丁寧に、丁寧に舌使って舐めるんやで”
“ん……”少女がとろんとした目でやくざを見上げる。
 卑猥な音を立てて少女が舌を使う。
 頭を揺らし、口に入りきらない陰茎を小さな手でしごきながら、少女は一生懸命グロテスクな(モザイク入り)陰茎に奉仕を続ける。
“さて……そろそろええやろ……今度はお前をヒイヒイ言わしたるさかいな……”
“あっ”
 少女がベッドに突き飛ばされる。

 さて、ここからヤクザがすごいことを少女にするわけだが……それをリアルに想像するのは、14歳の芳雄には不可能だった。
 しかし……すごいことというからには、すごいことをするのであろう。

“ほれ、縄化粧や”
“えっ……そんな”

 やおら、想像のなかのやくざは、少女を荒縄で亀甲に縛り始める。
 無惨にも、あっという間に少女の青白い柔肌には複雑に結わえられた荒縄が食い込む。
 少女が太めの眉根を寄せて苦悶の表情を浮かべる。
  “ほうれ……こいつで思う存分イかせたるさかいな……”と、やくざは極太のバイブを取りだし……少女の唇に押し当てる……。
  これが童貞の想像力の限界であった。
  
「アンタ、ソウゾウシテルデショ」
「えっ」
 マリアが耳元で囁き、芳雄は我に返った。
「アノコガ、ホテルノナカデ、ドンナコトサレテルカ、ソーゾーシテルデショ。……ソーゾーシテ、固クナッタカ?」
 いきなりマリアが芳雄のジーンズの前に触れる。
「……ちょっと……! ……やめてくださいっ……こんなときにっ!」
「アーラ………ヤッパリ、固くク、ナットルヨ。カチンカチンニ、ナットルジャナイカ」
 それは事実だった。確かにジーンズの前はすでに突っ張っていた。
 布地越しに、またもマリアが淫靡なてつきで先端あたりを撫で上げてくる。
 芳雄はびくん! と腰を震わせるという。、非常に判りやすい反応を見せてしまった。
「……お願いです……こんなとこで……やめてください……」芳雄はマリアに懇願した。
「ジャアマタ、路地裏イクカ? マタ、オクチデ、シタゲヨカ? ……ダイジョブ、ダイジョブ……マダアノコ、出テコナイヨ……ホーレホレ……コノママジャ、ジーンズ、恥ズカシイ汁デ、ヨゴレチマウヨ」
 マリアの指がジーンズの布地越しに固く、さらに敏感になった快楽器官を弄ぶ。
「……あっ……」思わず甘い声が出てしまった「んっ……だめっ……で、すっ……」
「ホレホレ、カラダハ正直ネ……ホレ、路地裏、イクカ?」
  
 マリアの言うとおり、少しくらいなら目を離してもいいかな、と頭の片隅に良からぬ考えがよぎったその時だった。

「ああっ!!」

 芳雄の声に、思わずマリアも手を止める。
  
 『いたずらラッコ』の出入り口に、あの少女が立っていた。
 父の遺した動画の中と同じ、くしゃくしゃの髪と、不機嫌そうな顔で。
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