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童貞スーサイズ
第一章 「ザ・ガール・ウィズ・ノー・ネーム」

■第4話■ 裏町マリア

 父の死から、1年が経った。
 家の中には、すっかり父が存在した形跡は消えうせている。まるではじめから居なかったようだ。
 もともと、父は存在感が薄かった。
 母も姉も、意識して恥ずかしい死に方をした父を忘れたがっていた。今や父のことが家族の話題に上ることは、ほとんど無かった。
 芳雄は相変わらず、“工藤”に渡された動画を観ては、自慰を続けていた。母と姉はそのことに全く気づいていない。あたり前だ。秘密保持には万全を期して いるのだから。

 芳雄が母と姉に黙ってやっていることが、もうひとつあった。
  母と姉には、天文部に入部したと言ってある。少し暗い感じがしないでもないが、夜空を見上げるためには遅くまで自宅に帰ることができないの は仕方がない。我ながら上出来な嘘だな、と芳雄は思っていた。当然、そんなクラブには入部していないし、そもそも芳雄の通う中学には天文部すらない。何年 も前に、廃部になっていたのだ。
  
 芳雄は学校が終わると……そのまま父が死んだホテルのある、ラブホテル街をあてどもなく歩いていた。
 芳雄は偶然に賭けていた……あのビデオの少女はもうここには寄りつかないだろう、と芳雄の理性が言っている。
 しかし彼女と巡り会うための糸口といえば……この界隈を彷徨くくらいしかないのだ。
  
 はじめの頃は、自分の全く知らない世界を知ることができて、新鮮さを感じた。
 つまりその一帯は、人がセックスをするために存在する地帯なのである。そんなものが堂々と町中にあるなんて、何か不思議な感じだ。
 
 楽しそうに笑いながら、コンビニで買い込んだおやつなどがいっぱいに詰まったビニール袋を手に、ホテルに入って行く若いカップル。会社員風と、OL風の カップル。ひどく年齢の離れたカップル。男が女に比べて歳を食っていることの方が多かったが、たまにはその逆も見かけた。また、どこからどう見ても年輩の 夫婦にしか見えないカップルがそそくさと入っていくこともあった。家ではセックスできない、彼らなりの何らかの事情があるのだろう。
  
  また、その一帯にはそこら中に、タイか、韓国か、フィリピンか、中国か、その他名前も知らない様々な国からやってきた女たちが、街娼として 角ごとに経っていた。

「マタ、アノコイルヨ」
 タイ人らしい太った女には、顔を覚えられてしまった。
ドーテー、ステルカ?
 韓国人らしい女に言われた。
「アンタガ、シラナイヨナ、スゴイコト、シタゲルヨ」
 フィリピン人らしい女にも言われた。
  
  いつの間にか芳雄は、そんな女たちと顔なじみになっていた。彼女らも毎晩上手く客が取れる訳ではない。
 殆どの時間を、街頭に立って過ごすのだ。その一帯に似つかわしくない少年である芳雄は、彼女らにとって都合のいい暇つぶしだった。
  
「アンタ、カワイイカラ、ジョソシテ、キャクトレルヨ」ある日、アジ ア系ではあるがほんとうに何人かわからない女が言った「ソウイウノ、スキナ、ヒトモ、イッパイココクルヨ」
 “ジョソ”とは、“女装”のことらしい。
  女は自分のことをマリアと名乗った。本名なのかどうかはわからない。
「いえ、僕にはそっちの趣味はありませんので」芳雄は出来るだけ丁寧に接した。「でも、女装かあ……やってみたい気もするなあ」
 マリアは細長い煙草を吸いながら、笑った。歳の頃は30歳前後だろうか。タヌキ面で、決して美人ではないが、人なつこそうな笑顔を見せる。
 背丈は芳雄より高く、がっしりとした体つきをしていた。胸は信じられないくらい大きく、いつもそれを過剰に強調するぴたっりとしたセーターを着ている。
「……ヤテ、ゴランヨ。タブン、ヒトバン、5人ハ、キャクツクヨ」
 マリアは笑う。芳雄も力無く笑った。
  
  ある晩、突然、マリアが芳雄の手を取った。そのまま強い力で、路地裏に連れ込まれてしまった。
  あっけに取られた芳雄は、為す術もなく壁に押しつけられた。

「アンタ、ナンデマイニチ、ココクルカ?」ナルミは真剣な顔で言った「ナンカ、トクベツナ、リユウアルカ?」
「……別に……僕は……」
 芳雄は怯えた。殺されるのではないかと思った。
「ココ、コワイトコヨ。アンタミタイナ、コドモガ、ウロウロスルトコナイヨ」
「実は……人を……」ここは正直に答えたほうがよさそうだ。「人を探してるんです。高校生くらいの、女の子です」
「コウコウセイ? ソンナノ、イパーイイルヨ。サイキンハ、アタシラヨリ、オオイクライヨ」マリアは言った。「……ナンデ、ソノコ、サガシテルカ?」
「………」
 芳雄は黙って俯いた。
「……コタエナイツモリナラ」突然、マリアが芳雄の前に跪いた「アンタニ、 コノカイワイデドンナコワイコトガアルカ、カラダニオシエチャルヨ
「……えっ」マリアは、芳雄のジーンズの股間をさらりと撫でると、素早くジッパーを降ろした「ち、ちょっと……やめ、やめて下さいっ!!」
「アンタ、イクツ? 13? 14?」マリアはあっという間に芳雄のズボンを降ろしてしまった。「毛、もモウ生エテルカ?」
「そ、そんな。やめて……ください」大きな声で助けを呼ぶべきだろうか? 芳雄は狼狽しながらも悩んだ。「………あっ……えっ!!」
 
 ボクサーショーツも足首まで降ろされた。
 マリアは薄い陰毛に覆われた発達途上の芳雄の性器を、まじまじと見つめる。

「……マイニチ、コイテルカ?」
 マリアが芳雄の性器をそっと握った。思わず芳雄は腰を引いてしまう。
「………あっ……や、だ、……だから、やめて……」
「……ソノ、サガシテル、オンナノコノコト思テ、コイテルカ? ヒト ニ、コナコトサレルノ、ハジメテダロ?」マリアがまさぐるような手つ きで芳雄の性器を愛撫した。「ソノコニ、ドーテー、アゲタイカ?」
「……そっ……そんなんじゃ……ないです」芳雄はマリアの焦らすような手つきに、躰は否応なく反応した「……どうしても、会いたいんです……その子に…… その子は………」
「ソノコハ?」マリアが厳しい目で芳雄を見下ろす。「ソノコハ……ナニ?」
「……ぼ、僕の父と……し、心中したんです」
「シンジュウ? ジサツシタカ?」微妙に硬化し始めた芳雄の性器を、マリアが握る「ジャア、死ンジャッテンジャ、コノ世ニイナイヨ」
 マリアはペッと自らの掌に唾を吐くと……その手で芳雄の肉棒をゆっくりと擦り始めた。
「んっ!……あっ……そ、そんな……」
  ねちゃねちゃと聞くだにいかがわしい音が、芳雄の耳に入ってくる。
  毎晩のように父と少女の動画を自慰を繰り返していた芳雄だったが、その感覚は彼の全身を否応なしに沸き立たせた。
 マリアの指は、絡みつくように性器の側面を撫でたかと思うと、包皮に覆われた亀頭をやさしく撫で、肉茎をしごいた。
 いつの間にか芳雄は、路地裏の汚れたコンクリートの壁に体重を預けていた。
  何故か……動画の中で父にパンツの中を弄ばれていたあの少女の意識に、ぐん、と近づいたような気がした……そうするとますます、芳雄の感覚 は鋭敏になり、寄せては返すような快楽の津波に対して、正直にならざるを得なかった。
「死ンダコサガシテモ、ショウガナイヨ」
「……ち、違うんです……ち、父は死にましたが……そ、その子だけが……い、生き残ったんです」
  
  ぴたりと、マリアの指が止まった。

「ソノコ、カミノケがクセゲデ、ヤセタコカ?」
「……えっ?」芳雄はマリアの顔を見あげた。「し、知ってるんですか?」
「……知ってナイデモナイケド……」マリアは芳雄の肉棒の先端から溢れていた粘液を指で掬い、芳雄に見せつけた。「……コレ、ドスルネ」
 マリアの親指と人差指の間を、芳雄があふれさせた粘液が糸を引いて繋いでいた。あの動画の終わりに、父が見せた指のように。
「そんな……」芳雄は顔を背けた。ビデオの中の少女と同じように。「……ドスルネって……」
「……サイゴマデ、イキタイカ?」マリアがニンマリと笑い、首をかし げて聞く。「……ソウダヨナ?」
「………」芳雄は、しばらく考えると、マリアの目を見ずに……こくり、と頷いた。
ホレ
「あっ!!」
  いきなり、亀頭の包皮を剥き上げられた。ぴりっとした痛みが芳雄を襲ったが、亀頭が外気に触れていたのはほんの一瞬だった。
 気がついたときには、亀頭はマリアの口の中にあった。
 濡れた熱い肉に、亀頭が包み込まれる。すぐさま舌先が這い始めた……尿道のあたりをからかうように、チロチロと。
「そっ、そんな……ダメです……ダメですってばっ」言いながらも、自分の声がか細くなっていることに気づいた。「………あっ………んっ……」
「………アンタミテルト、クニノオトトオモイダスヨ」マリアが亀頭から口を離して言う。
 芳雄の亀頭は唾液と自分が溢れた蜜で濡れ光、びくん、びくん、と跳ねていた。限界まであと一歩だった。
「オトト?……って……弟さん?」
「……オトトガ14歳ノトキ、アタシガ口デシテアゲタヨ」
「お、弟に……? ……嘘でしょ?」
「……オトトハ、キョネンマデ、クニデ、日本人ノオトコアイテニ、ショバイシテタヨ。生キテクタメノ、ホウホウヲ、ワタシガ教エタネ。オトコマエデ、カワ イカッタカラネ。ニホンジン、ウチノクニノ、カワイイ男ノコ、ダイスキダカラ。7ツや、8ツノコモ、キャクトッテルヨ」
「…………」
 萎えるような話だったが、芳雄は萎えなかった。シケた話はいいから、早くイかせてほしかった。
 そうすると腰が、勝手に左右に揺れていることに気づいて、芳雄はますます赤面した。
「…………スグ、ラクニシタゲルヨ」
 マリアの猛攻が始まった。プロの技だ。
 物凄い派手な音を立てて、芳雄の亀頭を吸い上げる。
 肉茎を奧まで含み、唾液で濡れた掌で睾丸を揉む。彼女はわざと音を立てているようだった。
 路地裏からは、表通りの喧噪が聞こえる……ということは、この音も外に聞こえているということじゃないか?……そんな事を考えているうちに、芳雄はあっ という間に絶頂に到達した。
「うっ……くっ……あ、あ、ああああっ!」
  
 マリアの口内に、激しく射精する。
 
 射精の律動が続く間も、マリアは芳雄の肉棒を扱きあげ、吸い上げた。一滴残らず搾り取られていくようだった。
 すべてが終わった時……芳雄は路地裏の汚い地面にへたり込んでいた。
 後頭部の当たる壁の高さは、ちょうど酔っ払いが立ち小便をするあたりである。
 しかし芳雄は、呆然としてマリアの顔を見上げていた。マリアは笑い、少し哀しそうな顔をしている。

「……ワタシノオトト、キョネン、エイズデシンダネ」
「……えっ……ええっ?」
「……ワタシ、ダイジョブネ。検査、チャントシテルネ」
「…………」
  芳雄はマリアに助け起こされて、何とか立った。そしてパンツとズボンを上げた。
「アンタガ探シテルコ、コノチカクノ『いのこりラッコ』テ、ホテルニ、ヨク、オトコト、イッショニハイッテ、一人デデテクルネ」
 ぱっ、と目の前が明るくなったような気がした。マリアの濃い顔立ちの後ろに、後光が差したかのように。
「……ほ、ほんとうですか?」
「ソノコノタメニ、アンタノドーテー、トットイタルネ」
 マリアはそんな頓珍漢なことを言って笑った。
  やがて彼女は小さな声で歌を歌いながら、芳雄を置き去りにして、路地を出ていった。

  聞いたことのない歌だったが、多分……マリアの国の言葉に訳された賛美歌なのだろう。


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