実在少女
もしクラスメイトが淫行教師に調教された変態M少女だったら

作:西田三郎




■3 「部屋のなかで」



  「ちょ、ちょっと……ちょっと待ってよ!!」

 ホテルに入るなり……無人のカウンターからキーを受け取って、エレベーターに入るなり、高野くんがあたしにものすごい勢いで襲い掛かってきた。ああもう、これだからガキは。……まあいつもの客も、こういう奴は多いけどさ。Tシャツの上から、まるで握りつぶして何かを搾り出すみたいにおっぱいを揉んで(まあ潰されるくらい大きなおっぱいじゃないけど)、いきなりスカートの中に手をつっこんでくる。デニムの短いやつだったので、ちょっと純情少年には刺激が強すぎかもしれない………で、なんと、そのままパンツのゴムに指を引っ掛けて、脱がせようとしてくる。

 なんで?……なんでそんなにアセるわけ……?……もーすぐ部屋につくじゃん!!

 さらに、顔を真っ赤にして、鼻息フーフーいわせながら、キスをしようとしてきた。

  「キスはだ・あ・め、っていったら怒るう?」あたしはニヤニヤ笑って高野くんに言った。
  「させろよ」高野くんはまだ鼻息荒い。「関口には……させてんだろ?……ほかの男にもさせてんだろ?……だったら、させろよ」
 
  口をピングーみたいに尖らせて、高野くんの顔が迫ってきた。
  そこでエレベーターがあたしたちの部屋の階についた。

 「だーーーーめーーーーーん
 
  どん、と胸を押して高野くんを突き飛ばす。高野くんは勢いのわりに、見かけどおり身体が軽かった。
  エレベーター入り口の正面の壁に背をつけて、あたしの顔をにらみつけたけど、それはあまり長く続かなかった。きょろきょろと慣れないラブホテルの廊下で戸惑っている様子だ。あたしは逆に、少年をお金で買った変態ばばあみたいな気分になってしまった。高野くん、の一挙一動がかわいくて、胸がざわざわした。
  でまあ、ちょっとさっきの彼の勢いのせいもあるけど……また濡れた。
 
  あたしはアホなんだろうか?たぶん、そうなんだろう。

 「ほら、こっち」
 
  まだキョドっている高野くんの手を引いて、ランプが点滅している『304』の部屋を目指した。

  「天満、いつもこんなことしてんのかよ?……」さっきまでの威勢はどこへやら、という感じで高野くんがあたしの顔を覗き込んで聞く。「……これまでどれくらい……こんなことしてきたんだよ……」
  「さあね」あたしは部屋のドアを開けて、高野くんの背中を押した「……ほら、入んなよ」
 
  高野くんは大人しく部屋に入った。
  ガチャ、とドアに鍵をかけた瞬間、不意に……ほんとうに不意に、また高野くんがあたしに襲い掛かってきた。
 
  「……キスさせろよ!!!」
  「えー……もう、ちょっと待ってよ。ベッドまで行こうよ」暴れる高野くんの薄い肩を抑え付けながら、ベッドまで押していった。「……はいはい、どうどう、落ち着いて」
  「バカにすんなよ!!」高野くんが思いのほか、強い力を出して、あたしをベッドに投げ飛ばした。
  「きゃっ!!」ちょっと、かわいく叫んでしまった。かわいすぎただろうか。

 あたしはベッドに腹ばいになる姿勢で倒れこんだ。弾みでスカートが腰までめくれて、パンいちのお尻がむき出しになった。ちょっと半身を起こして肩越しに高野くんを見ると、真っ赤な顔をして、ヤンキースの帽子を床に叩きつけていた。ダチョウ倶楽部の上島みたいに。
 
  「……どうせ、やりまくってんだろ!!」ぶかぶかのジャケットを脱ぎながら、高野くんが叫ぶ。「関口とやりまくってんだろ??……関口だけじゃなくて、こんなふうに何人も男ひっかけて、やりまくってんだろ!!……おれもカネ払うっつってんだよ!!だからヤらせろよ!!」
  「……ま、待ってったら」その剣幕に、少しだけヒいた。「……やらせるからさ、やらせたげるから……ちょっと待ってよ。お願いだから………」
  「……待てねえよ!!」

 高野くんが……スラックスのベルトをしゅるり、と抜き取った。……すとん、とこれまたぶかぶかのズボンが床に落ちる。青白いくらいのすべすべした、細い脚があらわになった。筋肉質でもない、すね毛なんか一歩も見当たらない、女の子みたいにうらやましくなるくらいきれいな脚。でもグレーのボクサーブリーフの前は……ちょっと怖いくらいに突き出して、あたしの方を向いていた。
 
  「………す、すごい」

 思わず、何の思惑もなく、言ってしまった。
  いや確かに、これまでもこんなことはしょっちゅうだった。中にはしょぼーん、と元気のない人もいるけど。
  でも……クラスでいつも見る高野くんが、あたしに対して、目に見えて、欲情をあらわにしている……というこの状況は……ちょっと息苦しくなるくらい、胸に迫ってきた。あたしはドキドキしてきた。
  マンガみたいに、ごくん、と唾を飲み込んでしまった。

  「……キスさせろよ……」
  「ど、どこにぃ?」……なんとか、平静を装った……「に?……それともに?」

 あたしはお尻のほうからゆっくりと身体を起こして、ベッドの上でくるりと一回転し、スカート伸ばして両足をぴん、と揃え、高野くんのほうに突き出した。まあ、自分でいうのもなんだけど、あたしの脚はきれいだ。細いし、膝も小さい。それがもっと高野くんにきれいに見えるように、ゆっくりと組み替えてみたりした。上目遣いに、バカにしたような顔をして、いやらしく笑ってみた。そうやって高野くんを、じりじりとコーフンさせていくのが……なんだかいつもほかのキモ男たちを相手にしているよりずっと楽しかった。
  幼稚園のころに、粘土をこねあげて何かを作ってるときみたいに。

 「…………くそ………くそ………ちくしょう………」高野くんの顔がどんどん真っ赤になっていく。
  鼻息のしゅー、しゅーという音がこっちまで聞こえてきた。
 
  くすっ、とあたしが笑うと、高野くんはくいしばった歯をむき出して、一気にパンツを下ろした。

 「ひやっ……

 目を疑った。いや、びんびんのアレが出てくるのはあたりまえなんだけれど……驚いたのはそれがもう、すでにコンドームに覆われていたことだ。
  高野くん……ひょっとしてあたしと会う前からずっと、コンドームつけてたの?
  ずっとビンビンだったの?

 あたしは思わず……またぷっと吹き出してしまった。

 

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