愛無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜
第三章「ロスト・ハイウェイ」
妄想:西田三郎■2005/05/25 (水) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜72
「ロスト・ハイウェイ-32」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。そういえば……ククケンは思い出しました。
この少女は確か「友達に会うので10時くらいまでしか一緒におられへん」と言っていたな。まあ、ウソかホンマかはわからんが、今晩は一晩中、この少女を相手にスーパーエロエロ・ナイトをオールで愉しむつもりなので、どうせなら心おきなく愉しみたい。この子の友達やら、ひょっとすると親とかが心配して警察に届けないとも限らない。どうせなら心配の芽は全部摘んでおこう。フフフ、オレって冴えてるぜ。
ククケンは車をサービスエリアに入れると、駐車場に停車し、少女の所持品を探りました。スッパイ匂いのする着替えとともに、パールピンクの携帯電話が入っていました。「おい、今から友達に電話し。今夜はもう会われへんようになった、言うてな」
「えー……」恐怖でヒキツケを起こしかけている少女は、マヌケな返事をしました。
それがまた、ククケンの劣情ボタンを連打せしめました。
「友達と約束してる、言うとったやないか。友達待たせとるんやろう。今晩はもう友達に会われへんねんから連絡しとき。もう男とは会い終わったけど、これから別の男に会いに行くから、会われへんようになった、って言うんや。わかったか?」
「……はいー」蚊の鳴くような声で少女は言いました。
素直でした。
まあ、さっきから積極的にナデナデに身を許したあたりで、この少女が実に素直であることは判っていましたが、それでも尚かつ、己に恐怖を感じて否応なしに従っている、少女の怯えがククケンのツボを擽りまくりました。ええ調子や、とククケンは思いました。ククケンは携帯を少女に渡しました。
「ええか、いらんことは言うなよ」このへんでちょっと大袈裟に脅しておくのもよいでしょう「いらんこと言うたら、これから永遠に友達には会われへんようになるからな」<つづく>
■2005/05/26 (木) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜73
「ロスト・ハイウェイ-33」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。「永遠に会われへんようになるからな」
いくらニブいノノ子たんでも、男が何を匂わせているかは判りました。この男は、ともすれば自分を殺す気なのだ。改めてそう思うと、さらに身体がガクガクと震えました。言うとおりにするしかない。……でも、言うとおりにしたからって、生きて帰れる保障は……?
とにかくノノ子たんはそこまで考えず、ひろえたんに電話をしました。
「ノノちゃん??」ひろえたんは2コールで出ました「今どこよ?何してんの?何回も電話したんやで?」
「うーん……」ノノ子たんは男の顔色を見ました。男は、“はよ済ませ”と目で言っています「……ろえ、ごめーん…もう、男の人に会うのは終わったんやけど、今度は別のともだちに会いにいかなあかんねん」
「友達って誰よ?」と口達者なひろえたんが即座に聞きます。
「うーん…」ノノ子たんは電話口を手で塞ぎ、男に言いました「……あのー……誰と会いに行くんやって……友達聞いてるんですけどー……」
「どうでもええから、早よ話まとめて電話切れ」男は冷たく言い放ちます「友達ともう、会われへんようになってええんか?」
またノノ子たんは震え上がりました。
「ノノちゃん、誰としゃべってんの?そこに誰かおるの?」電話の向こうでひろえたんが叫んでいます。ひろえたんの察しがいいのは知っていました「ノノちゃん、誰と一緒なん?そこに誰かおるんやね?」
「うーん…ごめんなー…今日はもう帰られへんわー…」
「ちょっと、ノノちゃん?ノノちゃん!?」
ノノ子たんはそのまま電話を切りました。
「……あーウソついてもた……」ノノ子たんは誰に言うでもなく呟きました「今度、あやまらなー……」
「今度会えるか会われへんかも、お前次第やからな」男はまた、恐ろしいことを言いました「今度は、お前ん家に電話するんや」<つづく>
■2005/05/27 (金) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜74
「ロスト・ハイウェイ-34」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。男に言われるままに家に電話をすると、いつもなら一番出て欲しくない相手が電話に出ました。
「ノノちゃんか?今どこや?お父さん、もう警察に届け出したからな。そこへ行くから」
お父さんは何かと言うとすぐ警察に捜索願いを出しました。そして、ノノ子たんを法の手をも巻き込みながら取り戻すと、暴力を加え、その後で急に優しくなって、ナデナデするのでした。そんなお父さんから逃れたくて、大親友のひろえたんが本気で心配して止めてくれたのにも関わらず、ノノ子たんはこの凶暴な男に会ったのでした。
「……お父さん……」ノノ子たんは言いました。「お父さん、ごめん」
「とにかく、早う帰っておいで。帰ってけえへんねんやったら、警察とお父さんがそこに行くからな」
ノノ子たんは、お父さんが大嫌いでした。そして怖れていました。お父さんの暴力は理不尽きわまりないものでした。そして、その後のナデナデはもっと理不尽で、不可解なものでした。
そんなお父さんが、帰っておいで、と言っています。……どんなに殴られようと、ナデナデされようと、殺されるよりはマシです。あれほどイヤだった家が、お父さんが、恋しくさえなりました。お母さんの事も大嫌いでしたが、恋しくなりました。お姉ちゃんや、妹のミキたんや、弟のトオル君のことは、ますます無性に恋しくなりました。でも、男は余計なことを話すと殺すと言っています。泣きたくなりました。大声で叫んで、助けを求めたくなりました。しかし、ノノ子たんはあまりに怯えていたために、そうはできませんでした。
「お父さん、あたし、もうすぐ一人で帰るから」また、語尾も伸びませんでした。それは祈りであり願いでした。「もしもし?ノノちゃん?ノノちゃん!?」
男はノノ子たんから携帯を取り上げると、勝手に電源を切りました。そしてノノ子たんの足から、ゴムサンダルを脱がせました。
「あの……」ノノ子たんは言いました「あの……あたし、何したらええんでしょうか」
「そんなもん、決まっとるやないか」男は不気味な含み笑いを浮かべます「お前がいつもしとるようなことや」
<つづく>
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