無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第三章「ロスト・ハイウェイ」

妄想:西田三郎

■2005/04/25 (月) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜53

「ロスト・ハイウェイ-13」


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。
 
 
 はてさて23日の晩はひろえたんをはじめとするお友だちとファミレスやコンビニ前などで、なんとか楽しく夜を明かすことができましたが、それでも朝はやってきます。
 ノノ子たんはお家に帰る気はサラサラありませんでしたが、ひろえたんを含むお友だちのうちの数人は、
 「……ほな、今日は帰るわ……またなー」と実に直腸検査を受ける前の患者のような覇気のない顔で自転車に跨って帰ってしまいました、
 ノノ子たんは“サラサラ家に帰るつもりがない組”の残った数名のお友だちと、ダラダラのブラブラをはじめました。アイスを食べたり、学校(ノノ子たんは施設での生活のため、お友だちとは違う学区の中学に通っていました)でのムカつくやつや、ムカつく先生のことを話し合ったり、ほのかな恋心に関するねぶたい話題で盛り上がったりです。

 ノノ子たんを含め、お友だちのみんなは“活動電話”愛好者でしたが、それと自分たちが思い描く“性”にはとんでもない隔たりがありました。確かにまあ、援助交際にうつつを抜かすような世の男どもの剥きだしの情動に関しては、その最前線で体験済みの彼女たちでしたが、それを世間一般でいうところの“性”と頭の中で結びつけることはなかなか困難でした。“活動電話”は彼女らにとってスーパーの前でぶらつくような、時間潰しに過ぎません。
 
 季節は初夏まっさかり。容赦なく太陽が照りつけてきます。
 人生で最も新陳代謝が激しい時期にある彼女たちの躰からは、早くもスッパイ匂いが出始めていました。これから季節はさらに蒸し暑い夏本番に入り……季節が変わるまでに、彼女らの皮膚細胞は何度新しいものに生まれ変わったことでしょう……ただし、ノノ子たんを除いて。
 
さて、深夜2時まで東淀川区内でタムロっていたノノ子たんたち「お家に帰らない組」の子どもたちでしたが、突然、ノノ子たんの携帯電話に着信がありました。
 ノノ子たんが恐る恐る表示を見ると……良かった。お父さんではなくお友だちのひろえたんでした。

<つづく>


■2005/04/26 (火) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜54

「ロスト・ハイウェイ-14」


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 「これから“活動”で知り合うた男の人二人とこに行くんやけど、一緒に来えへん???」
 ノノ子たんは一も二もなくこの提案に飛びつきました。
 
 「ほな、ひろえから呼ばれたから男の人らに会うてくるわー」
 
 そういってノノ子たんは愛車である、ハンドルが歪曲した、通称“カマキリ型”のチャリンコで去っていきました。ハンドルには「アンパンマン」のベルがついていたといいます。しかし、ノノ子たんの死後、そのチャリンコはノノ子たんの自宅近くに何事もなかったかのように駐輪されているところを発見されています。また、このときにノノ子たんを見たお友だちの中には、「どうも違うチャリンコに乗ってたみたい」と証言している子もいます。ミステリーです。この件に関しては、事件から4年を迎えようとする今も、解明されていません
 
 さて、ノノ子たんが待ち合わせ場所である橋のそばにいきますと、同じように自転車に跨ったひろえたんが、二人のヤング・リーマン系の男と立っていました。どちらかの愛車なのであろう、白いワゴン車も停まっていました。
 
 「ええ???」リーマンの太った方がいいました「ええ??この子も15歳?ウソやろ?
 「15歳いうたら15歳なんや。なあ、ノノちゃん」
 「うんー……」ノノ子たんは答えながら二人の男を見ました。それほど恐そうな人たちでもなさそうです。
 「……ひとり、2万ずつでええねんな」と比較的痩せたほうのリーマン。
 「うん、もっとくれるんやったらあたしはええで」口達者なひろえたんが言います。
 男たちはクスクス笑いながらお互いの顔をチラチラとみていました。
 「なんやねんな。キモー」とひろえたん。
 「キショー」とノノ子たん。
 まあそうこうしているのも何ですので、取りあえずノノ子たんとひろえたんは自転車をその辺りに停め、ドライブがはじまりました。

<つづく>


■2005/04/27 (水) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜55

「ロスト・ハイウェイ-15


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

おなか空いたー」というひろえたんの要望に答えるべく、一行は国道沿いにある24時間営業の回転すし屋に入ることにしました。
 
 「なんでも遠慮せんと好きなもん食べていいいんやで」とデブ男。
 ノノ子たんとひろえたんもそのお言葉に甘えました。何と言っても全品150円なのですから。
 「あたしウニ!」
 「あたしチャーシューマヨネーズ巻き!
 二人はがつがつと流れてくる寿司を片づけ、やがて満腹しました。満足そうなようすの二人を見て、ニヤけたリーマン二人もまた満足そうでした。
 回転寿司屋を出ると、今度はカラオケボックスに入りました。
 ノノ子たんは得意の浜崎あゆみさんの歌を「きょおおがとおてもおおおおおお楽しくてええええええええええ」と大熱唱、ひろえたんとはデュエットで「ラブ・レボリューション21」やら「LOVEマシーン」声がかれるまで歌いました。男二人も負けていません。デブのおはこであるらしいウルフルズの「バンザイ」やデブではないほうのおはこスピッツの「チェリー」など実に心の籠もっていないナンバーを披露した後、男二人だけで「奇跡の惑星」を歌いました。クワタのパートはデブが、サクライのパートはデブではないほうが歌いました。
 とにかくカラオケでは皆がハッスルしました。
 ノノ子たんもひろえたんも随分スッパイ匂いがしていましたが、そんなことは少しも気にせず、ソファの上でピョンピョン跳ねながら歌を歌いまくりました。
 リーマン2人組は、小学校を卒業したての女子とこんな楽しい時間を過ごしたのははじめてだったので、とても満足していました。
 散々歌い終わった挙げ句、時間はもう午前3時を過ぎていましたが、一行は白いワンボックスでデブリーマンのヤサに向かったのですね。
 
<つづく>


■2005/04/28 (木) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜56

「ロスト・ハイウェイ-16」


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 はてさて彼女らの“活動電話”の相手でありますところのデブリーマンのヤサにつくなり、ノノ子たんはシャワーを借りてサッパリしました。着替えはダイエーで購入したもので、とりあえずオレンジ色のTシャツを身につけます。ノノ子たんはそれら着替えを、銀色のビニール袋に入れて持ち歩いていました。いわば“家出セット”みたいなものでしょうか。
 
 お風呂から上がりますと、ひろえたんは早くも比較的痩せてるリーマンの膝の上でナデナデされていました。それを鼻の頭に油を溜めて見ていたデブの方はノノ子たんがお風呂から上がったことに気づくと、“待ちかねたぜベイベエエエエエエ”とでも言いたげな表情でニンマリと笑みを浮かべます。
 
 “あーあ、どっちもイヤやねんけど、デブやないほうの人のほうがデブの人よりはマシか、思てたんやけどなー……まーしゃーないかー……あたしかてお風呂入ってたんやしー……”
 
 せっかちなデブがおいでおいでしながら、自分のボンレスハムのような膝をポンポンと叩きます。仕方なくノノ子たんもデブの膝の上に座ってあげました。デブがナデナデをはじめました。いつものことながら、ノノ子たんは“気持ち悪いなあ”と思いました。ひろえたんの方を見ると、なんとひろえたんは、男の方から大人しくナデナデされているだけではなく、男をナデナデしてあげているではあーりませんか
 
 何となく、負けた気がするノノ子たんでした。
 
 「お風呂上がりやしええ匂いやねー……」デブリーマンが耳元で囁きます。
 
 “……きっしょーーーー………”ノノ子たんは思いましたが、口には出しませんでした。

<つづく>




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