無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第三章「ロスト・ハイウェイ」

妄想:西田三郎

■2005/01/18 (火) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 4

「ハンドカフ」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割3分くらいまでが妄想です。

 ナナ子さんの顔面に男が噴射したのは、女性が凶暴な変質者や痴漢などに襲われた際に自己防衛手段として使用するために市販されている、催涙スプレーでした。相手の顔面めがけてプシュっと吹きかければ、ペッパーガスの威力で暴漢は瞬く間に無力化するというスグレモノです。しかしそれをククケンのような暴力的な変質者がナナ子さんのような幼気な女子に対して使用したというのは、なんとも皮肉な話です。
 
 実に…想像以上にその効果は絶大であり、ククケンは涙と鼻汁と涎を垂らしてへたりこんだナナ子さんを見て、改めてその威力に惚れ惚れしていたのですね。同時にククケンは爆発寸前の圧力釜なみに欲情していました。
 
 「じっとしとく!ハイ!動くな!
 
 裏返った声でククケンはナナ子さんに言い放ち、苦しむナナ子さんからポーチをひったくりました。さらにそのまま彼女を引きずって床に押し倒し、ククケンにとっては特別の意味を持つグッズであるところの手錠を取りだすと、ナナ子さんの左手首に掛けました。
 
 「なに?なに?なんなん??」狼狽したナナ子さんが叫び、抵抗します。
 
 ナナ子さんが狼狽すればするほど、抵抗すればするほど、ククケンはまるでケツの穴を蹴り上げられたような激しい情欲を覚えました。ククケンは手錠の片方のワッパを、ホテルの部屋に据え付けられていたテーブルの金属製パイプに固定し、ナナ子さんの抵抗を封じました。
 
 火がついたようにナナ子さんが泣き叫びはじめます。

 静かにさせなければいけないことは判っていましたが…泣き叫び、自身に対して著しく恐怖している16歳のしょうじょの姿を見ていると…ククケンは何か、奪われていたものを再び取り戻したような、言いようのない幸福感とドス黒い悦びを感じるのですね。

<つづく>


■2005/01/19 (水) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 5

「ラブ・ポップ&フィアー」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。8割7分くらいまでが妄想です。

 「ええか、大声出したり暴れたりしたら、またこのスプレーかけるからな。またスプレーかけられたいか?お前、痛いんの好きなんか?
 男はこの上なく威圧的でした。ナナ子さんは恐怖でチビりそうでした。
 「痛いの好きなんか???」さらに男が聞きます。
 ナナ子さんは言葉では応えられず、首をぶんぶんと横に振りました。
 「よし」男はナナ子さんの傍らに腰を下ろします。帽子とサングラスを未だに外しません

 「……痛いことせんといて…」ナナ子さんは辛うじてそれだけ言いました。

 それを聞いて男はさも満足そうに頷きました。
 「…大人しいしとれ。あと、おれの言うことちゃんと賢う聞いとったらええ。ほんなら痛いことはせえへん。わかった?」男はナナ子さんからの返事がないのにいらついた様子で語気を荒げていいます。「わかったか??返事は??
 「ひっ……はい。わかった。わかりました…」ナナ子さんは泣きながら首を縦に振りました。
 
 “これってやっぱ、絶体絶命ってやつですかあああ????
 
 ナナ子さんの脳裏に、なんで朝、バックレとかなかったのだろう?なんで今日この男と会う約束をしてしまったのだろう?そもそもなんで援交なんてはじめたんだろう?、といった根元的後悔がエコーし続けましたが後悔先にに経たず。
 
 ほうれ、援助交際なんかしとるとこないなるんやで、というような大変判りやすい例題のような、村上龍先生の“ラブ&ポップ”的な状況に陥ったナナ子さんは、ここは男を怒らせずに言うことを聞いておいたほうが得策、と考えて覚悟を決めました。
 
 男はナナ子さんの手首に掛けた手錠を一旦外し…ナナ子さんへの性的搾取をはじめたのですね。

 <つづく>


■2005/01/20 (木) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 6

「初めから終わりまでずっと威張りくさってて」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。8割7分くらいまでが妄想です。
 
 ナナ子さんは根元まで!とか首つかう!とか「頭から動かして!」と好き勝手に命令する男に大変な屈辱感を味あわされながらも、その指示に従うよりほかはありませんでした。男はなんと、ヴィデオカメラまで用意しており、ナナ子さんの屈辱の一部始終は、冷徹に、完全に、そのつめたい機械に収録されていったのですね。
 
 男の命令口調は実に威圧的であり、恐ろしいものでした。
 男が指示を出すたびに…ナナ子さんは中学時代に所属していたテニス部の顧問であった鬼先生のことを思い出しました。思えば先生は“おれかてお前らが憎くてやってるんやない”と言いつつも、ナナ子さんら部員の女子たちをサディスティックにいぢめ、イビるのに悦びを感じているのは明らかでした。
 
 ナナ子さんの短い援交経験のうちでも、ここまで凶暴ではないにせよ、似たような男はたくさん居ました。
 待ち合わせて顔を合わした時は気弱そうで、いかにも大人しそうになのですが、いざ性交がはじまると、やたら横柄になり、えーぶいなどから拝借してきたと思われる卑猥で口汚い言葉を発し、ナナ子さんを貶め、まるで玩具のように手荒く扱う男達。

 そういう男達は、性交そのものよりも、お金で買ったナナ子さんのような女性達をそういうふうに貶めることの方に悦びを見いだしているようでした。まあよくありますよね“金払ってんのはこっちでオレは客だ”というアディチュードを取る、消費者の風上にも置けない奴ら。
 
 支払いの見返りとして供給者は何らかのサーヴィスを提供し、それを対価としているのです。
 需要者かが自らの支払い、サーヴィス行為以上の対価を相手に求めるのは、はっきりいってインネン以外のなにものでもありません。

 ククケンの凶行は、そうした消費姿勢の凶暴化であるといえます。

<つづく>




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