無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第三章「ロスト・ハイウェイ」

妄想:西田三郎

■2005/01/13 (木) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 1

「ジョーク」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。8割7分くらいまでが妄想です。

 “そう言えば、戦争中の古い冗談だけど、軍需工場で働いてた女工が停電中に強姦されたって話は聞かせたかな?…(中略)…やってきた警官はその女工に、誰にやられたのかと尋ねた。女工は、停電中のことだっったので相手の顔は見ていない、と言った。『でも、これだけは言えるわ』彼女は言った。『そいつは絶対、うちの工場の現場主任の誰かよ』『なぜ、そんなにはっきりと言えるんだね?』と警官は尋ねた。女工は応えた。『だって、初めから終わりまでずっと威張りくさってて、あたしひとりがせっせと動かなくちゃならなかったんだもの』”
 …R・D・ウィングフィールド『フロスト日和』
 
 …明けましておめでとうございます。
 新年早々、さわやかな話題をお届けするこのコーナーですが、第三部では九九本健がその後法の裁きを受けることとなった、二つの犯行の詳細に関して、妄想を逞しくしていきたいと思います。

 ククケンこと九九本健(38歳:元中学校教諭)は二つの犯罪によって刑事裁判に掛けられ、最終的に6年の懲役刑を言い渡されることとなりました。

 ひとつは、2001年6月9日、京都市在住の女子高生、長尾ナナ子さん(仮名:当時16歳)に対する暴行・監禁・強盗。そしてもうひとつは、同年7月24日、大阪市在住の女子中学生、土家ノノ子たん(仮名:当時12歳)を監禁したうえで中国自動車道にて放置、後続トラックに轢かせて死亡させた事件。

 以下に記述します小説風散文の多くは、資料に基づいた事実でありますが、足りない部分はわたくし西田三郎の妄想力によって補われていますので、ご了承ください。

 また、内容上、不可避的に性的かつ暴力的内容を含みます。

 特に年限は設けませんが、それらに不快感を持たれる方には、お薦めできない内容となっておりますので、予めご理解とご了承のほど、よろしくお願いいたします。

<つづく>


■2005/01/14 (金) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 2

「2001年6月9日 午前10時前」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割5分くらいまでが妄想です。

 待ち合わせ場所に立っていたのは、中肉中背の貧相な男でした。野球帽に濃いサングラス。わざと伸ばしているのか本当に無精なのかよくわからない中途半端な無精ひげ
 長尾ナナ子(仮名:当時16歳)さんは溜息をつきました。
 
さいきんは援交も板に付いてきたナナ子さんでしたが、本日伝言ダイヤルで約束を取り付けたその男、なんだかいかにも暗そうでヤバそうです。有名人でもあるまいに、なんで帽子やサングラスまでして素顔を隠しているのでしょうか。多分、自意識過剰なんでしょう。そして恐ろしく気が小さいのでしょうね。ナナ子さんはその男を見て、一瞬バックレようかと思いましたが、懐具合もキビシイことですし、わざわざここまで出てきたのに今更引き返すのもなあ…という思いで、男に声を掛けました。
 
「鈴木さんですか…?」明らかに偽名でしたが、ナナ子さんも偽名を使います「アヤです
「あ…」
 
 男はナナ子さんに気付くと、いきなりサングラスの向こうからナナ子さんのつま先からてっぺんまでを嘗め回すように眺めました。ナナ子さんはぞっとしましたが…まあ、これくらいのキモイマンはナナ子さんの短い援交キャリアでもザラでした…。
 サングラスと帽子と無精ひげで、その男の素顔を伺うことはできませんでしたが、その男の顔の輪郭が面長で、鼻の下のくぼみが特徴的だったことをナナ子さんは覚えています。

 「そしたら、僕の車で行こか」男は低い声で言いました。
 近くに停められていた男の車は茶色の大きなワゴンタイプ
 助手席に乗り込んだとき、ナナ子さんはそのフロントガラスに横一文字に入った大きなキズに気付きましたが何も言いませんでした。
 車の中は結構きれいに整頓されていました。

 やがて男は車を出し、一路車は福知山方面のラブホへ直行したのですね

<つづく>


■2005/01/17 (月) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 3

「スプレイ」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。8割7分くらいまでが妄想です。

 午前11時ごろ。
 安っぽく、湿気臭い国道沿いのホテルの一室。
 茶色に焼けた壁紙はそこでまぐわった何千、何万もの男女の汗と淫液が染み込んでいるようで、赤黒く染まった絨毯にはいかにもダニがいそうです。いくらなんでもこんなシケたホテルはないだろ、と突っ込みを入れたくなったナナ子さんでしたが、まあ今日は特についてない日なんだな、と思うことで気を取り直そうとしました。
 
 なんせ男は3万円くれると言ってますし。
 
 しかし、その日はナナ子さんが思っていたより、もっとついてない一日だったのです
 部屋に足を踏み入れて、出入り口あたりでゴソゴソしている男の方を振り返ったナナ子さんの目を、激痛が襲いました。
 
 「…何??
 
 男が何かスプレーのようなものを、ナナ子さんの顔面、特に目の辺りに吹きつけたのです。猛烈な痛みがナナ子さんの両目と鼻孔を直撃、吸い込んでしまった喉にも焼けた火鉢を突っ込まれたような痛みが襲い、ナナ子さんはあっという間に涙と鼻汁と涎を大量にたれ流しながらその場に崩れ落ちたのですね。あまりの意外な出来事に、ナナ子さんは声もありません。恐怖よりなによりも、
 “何!?”と“何故!?”の疑問が頭の中をグルグルと廻ります。
 男がナナ子さんの服を掴んで強引に引きずりました。ナナ子さんの私物が入っている黒いナイロンポーチも男に取りあげられてしまいます。
 
 “これってやっぱ、ついに地雷踏んじゃったってやつですかあああ???!
 
 ナナ子さんは混乱しながらも己の運命を呪いました。
 普段は出来るだけこんな事態に陥る危険性に関しては考えないようにしていたのですが…遅かれ早かれ、こんなことになる気はしていたのです。
 男はさらに、ナナ子の左手首に、ガチャリと金属製の頑丈な手錠を掛けました
 
 <つづく>




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