無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第三章「ロスト・ハイウェイ」

妄想:西田三郎

■2005/04/01 (金) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 38

「黙りこくる少女たち-4」


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 しかし宮氏は引き下がりません。

 「(引用)いえ、私はフリーですが、ちゃんと自分の名前で仕事をしていますと胸を張って言うと、『まあ、奥へ入りなさい。咲ちゃん(宮氏のルポでのノノ子たんの仮名)の無念をはらしてくれるなら、お話しましょう』と仏間のある四畳半に通してくれた」

 宮さん、カッコええわ。ちなみにその『仏間のある四畳半』というのは、中尾氏のルポによるとテル夫さんがノノ子たんに怪しからんことをしたというあの仏間です

 テル夫さんは能弁でした。かつてテレビでククケンの上司である校長・教頭両先生を言葉を尽くして罵っていたテル夫さん節は健在でした。

「(引用)近親相姦なんかしてないぞ、ワシは」「(引用)ワシが職人風か?家は畳がすり切れているか?見てくれよ。あいつはここに一度もこずに記事を書いたんや。デタラメもいいとこや!」

 あいつ、というのは「修羅の家」の著者である中尾氏のことです。確かに中尾氏のルポによると、土家家の畳は擦り切れている、というようなことが書いてあります。宮氏が見たところ、仏間には畳の上に木目のビニールシートが敷いてあったので、擦り切れているかどうかは判らなかったようです。

「(引用)部屋の西側にはマホガニーの大きな祭壇があり、祭壇の上には「妙法氏家咲子(宮氏ルポ中のノノ子たん仮名)」と書かれた位牌と、青いトレーナーをまとった咲子さんの写真がある。壁にかかった額入りの写真には、一家で熊本に行ったときの写真が飾ってあった」

 テル夫さんはその写真をデジカメで撮影したといいます。中尾氏の描写によると「職人風で剽悍な印象のある」テル夫さんですが、宮氏のレポートではパソコンをはじめとするデジタル機器に習熟しているという一面も垣間見え、ますます何が何だかキャラが掴めません

<つづく>


■2005/04/03 (日) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 39

愛無き世界に 第三部  〜ロスト・ハイウェイ〜 34
 
「黙りこくる少女たち-5」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

「(引用)ある宗教を信仰しており、信心が自分を支えているから、酒に逃避することはないというのである」

 まあ、これはウソです。ある宗教というのは、創価学会のことです。確かに地図を見ますと、土家家の近所には創価学会の支部があります。いえ、何の関係もありませんよ。信仰の自由は憲法で保障されているのですから。

 宮さんを前に、テル夫さんは喋る喋る。当然、わが娘を死に至らしめたククケンへの総攻撃に始まり、裁判、量刑、警察の捜査方法に対してあらん限りの呪詛を連ねます。
 その中には、「(引用)検察がまだ見落としているところがあると思う。いまどきの車ならオートロックはワンタッチですべての部分ができる。(ククケンのワゴンの)後部座席だけがロックされていなかったなんておかしい。ロックされてなかった可能性がある」とか、「(引用)咲ちゃん(ノノ子たん)はもう死んでいるから、車内で何があったかは、柿本(宮氏のルポ中のククケンの仮名)がいいように話をつくっている可能性がある。咲ちゃんは、時速八十キロの車から飛び降りれば、自分がどうなるか知ってましたよ。あの中国道は。自分がよく車で乗っけてやってたんだから。アイツ(ククケン)に凄い言葉で脅された可能性がある」など、なかなか説得力のある話も出てきたりして、中尾氏のルポ中のテル夫さんキャラには、見られない側面も垣間見えてきます。

 しかし、話が進むに従って……中尾氏のルポとテル夫さん本人が語る『事実』は、ますますその符合性を曖昧にしていくのです。

<つづく>


■2005/04/04 (月) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 40

「黙りこくる少女たち-6」


※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 中尾氏の取材に対して、テル夫さんの犬畜生もはだしで逃げ出すような蛮行を当等と語ったお母さんのマナ子さんは、テル夫さんの弁では何ということでしょう

「(引用)母親は事件後、精神を病んでいて、カウンセリングに通っている。昼は精神安定剤、夜は睡眠薬を飲んでいる。」っていうじゃあーりませんか。  

じゃあ、家庭内暴力や近親相姦のくだりは「精神を病んだ」マナ子さんの妄想だってことですかああ?  

また、ノノ子たんが児童擁護施設に入所していた事実に対しても、あくまで「家庭の事情」ではなく、「学校の事情」「イジメの事情」からであるとシラを切ります。  

「(引用)また『上の子』(おねえさんのこと)とも折り合いが悪かったとも。『夏休みに、プールで遊んでいて、彼女に水の中に頭をつっこまされて溺れたようになり、仮死状態になったことがある。それを恨んでいた』云々。

 テル夫さんはあくまでノノ子たんはテル夫さん自身からの虐待を理由に児童養護施設に入所したのではない、と言い張ります。

 しかし、この事件の判決文にもノノ子たんの養護施設入所理由は「父親による虐待」にあると書かれていますし、ノノ子たんは2000年8月13日、その「折り合いが悪かった」お姉さんとともに大阪市中央児童相談所を訪れています。そして、二人はそれぞれ別の施設に入所することになりました。児童相談所もテル夫さんのノノ子たんとお姉さんに対する虐待の事実を認めたからこそ、この件に介入したのです。  

 テル夫さんは確かに口達者ですが……この件に関してだけはどうも舌がうまく回りません。
 宮氏も当然、このテル夫さんの苦しい弁解を受け入れられません。
 
<つづく>





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