無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第三章「ロスト・ハイウェイ」

妄想:西田三郎

■2005/03/02 (水) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 31

「修羅の家-7」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

「(引用)離婚もな、ほんまはしたいんや。今度のことで(則子の殺害)、補償のおカネが入ってくるやろ。たぶん五百万円くらいになると思うんや(西田注:結局、ククケン側が家族の協力も得て払った補償金は一八〇〇万円)。おっさんは、『そのうち半分くれたら別れてやる』言うてるけどな。ほんま、カネにうるさいで。『カネは幾らおりるんや。手続きはちゃんとやっとんのか』。そればっかりやしな。私も大変やで」 〜母マナ子さんの弁。

「(引用)おっちゃんは、いっつも酔っ払って、病院から抜け出してくる。怒鳴ったりして、物凄いうるさい。『うぉりやーっ、ボケーッ』て。おばちゃんの両肩を掴んで、食器棚にバーンとぶつけたり、殴ったりしてる。おばちゃん、ネクタイで首を絞められた時もあったんやで」〜ミキたんの友達の弁。

 とにかくテル夫さんの評判は最悪でした。特に、報道陣にとっては。
 
「(引用)犯人が逮捕されても、則子の無念は晴れません」「(引用)このままでは則子も浮かばれない。テレクラをやっていたことを、もっと早く知っていればやめさせたのに

 などと、マジかよ、というような発言をしたかと思えば、
 
 「(引用)香典を持ってこない記者には取材させないんです。仏壇の前に記者をずらっと並ばせて、『香典なんて、わしが欲しいんやない。則ちゃんのためや』。そう言って、順番に徴収してゆく。香典を置かない者に対しては、『何じゃ、お前はっ!帰れ、帰れ。お前なんかに話はせん』。どう見たって、あれはまともじゃない」 〜マスコミ関係者の弁
 
 まー手ぶらでやってきて取材しようっていうマスコミの非常識な態度もどうかとは思いますが、それにしてもテル夫さんの傍若無人ぶりは相当なもので…あの鬼畜ライター、村崎百郎氏をして、『思わずあの親父のファンになっちゃったよ』と言わしめるほどでした。
 
<つづく>


■2005/03/03 (木) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 32

「修羅の家-8」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。
 
 さて…こっからが本番です。この中尾幸司氏のルポ「修羅の家」がわたしを含むゲスな一般大衆のハートをゲッツしたのは、以下のような衝撃的な記述によるものでした。
 
 なんとまあ、テル夫さんによるノノ子たんへの虐待は、暴力によるものだけではなく、性的な搾取も含まれていたというのです。
 
 ノノ子たんが死亡する3日前、ミキたんは母のマナ子さんに、以下のようなことをうち明けていたといいます。
 「(引用)あのな、(お姉ちゃんは)お父さんとエッチしてるんやて。則ちゃんがな、『お父さんとヤッてんねン。おカネやるから、言われてな。ほんまは嫌なんや。別におカネなんて欲しないわ』て言うとった。昨日、相談されたんや」
 
 中尾氏のルポによりますと、ノノ子たんが亡くなる1週間前の7月17日、自宅に帰ってきたミキたんは、とんでもない光景を見てしまいます。その時、自宅にはテル夫さんとノノ子たんしかいませんでした。ノノ子たんはいつもテル夫さんがセンセイへ向けてのお経を上げている仏間で、下半身パン一の姿で立っていたといいます。幼いミキたんの目から見ても…それはあまりにも異様な雰囲気だったとの事。
 
 母のマナ子さんは中尾氏の取材に対して、こともなげにこう言いました。
 「(引用)あの則ちゃんの携帯電話も、おっさんが買うてやったんやけどな、そういうこと(援交)なんやないですか」「(引用)みかちゃんも、あと、一、二年したら危ないで。いちばん下の子を産んだ時に、私、帝王切開したんです。卵巣もとってな、もう、ここ二、三年は夫婦生活もないわ。でも、おっさんはしつこいしな
 ライター、中尾氏のジャーナリストとしての自戒は、そこでプッツンしてしまいます。
 
<つづく>


■2005/03/04 (金) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 33

「修羅の家-9」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 「(引用)『……そんな、そんな悠長な事態じゃないでしょう!」思わず私は声を荒げていた。すぐに子供を連れて、家を出るなりしたらどうなのか
 
 しっかしマナ子さんは一向に聞く耳を持ちません。逆に「カネもねーのにどーしたらええんよ!」と言い返されてしまう始末。中尾氏はその後、アル中で入院中の父、テル夫さんとの面会を果たしています。中尾氏の描写によるとテル夫さんは「(引用)白髪まじりの短髪。身長は百六十五、六センチで痩身。パジャマ姿で現れた朝夫(中尾氏のルポでのテル夫さんの仮名)は、職人風の剽悍な印象」があったそうです。
 
 「そんなこと、ある訳ないやろがあああ!!
 中尾氏にその畜生にも劣る所業を問いただされたテル夫さんは、にべもなくそれを否定したばかりでなく、酒を飲んでいることすら否定したといいます。
 
 その後、中尾氏は土家家と関わる福祉関係者の人々にも会い、ミキたんの身にいまにも鬼畜親父の毒牙が迫りつつあることを訴え出たといいます。しかし彼らは全く打つ手がないことをモゴモゴと言い訳するばかりか、「あの夫婦にはトラウマがありまして…」などとクソの役にも立たない御託を並べたそうです。中尾氏の行動はジャーナリストとしては逸脱したものです。客観性と、公平性が、ジャーナリズムがの美徳であるとするなら。氏はコミットメント過ぎるし、ナイーブ過ぎるかもしれません。
 
 しかし…もし、中尾氏の突き止めた事が事実であったとするなら、そのように行動した中尾氏を、わたしは支持したいと思います社会正義を代行している気になっているマスコミのウジ虫ども、このへん試験に出るからちゃんと聞いとけ。
ジャーナリズムの公平性?
そんな綺麗事はクソくらえです。
本当に公平な報道などないのです。気象情報と株価の変動を伝えるもの以外は。
 
 中尾氏のルポは、そんな子ども達を救う手だてのない自らの無力さやるせなさを残して終わります。
 
 <つづく>



■2005/03/14 (月) 愛無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜 34

「修羅の家-10」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。

 …しかし…、とは言うものの、中尾幸司氏のルポ「修羅の家」が事実の全てではありません
 もし、中尾氏の書いたこのルポが、誇張と偏見に満ちたデッチ挙げだとしたら…?
 
 別にわたしはテル夫さんにも創価学会にも恩はありませんし、ヒマ潰し子どもをにブン殴るような親はブチ殺すべきだと考えており、学会の人はやたら公明党への投票を勧めるので好きではありません。
 しかし、中尾氏はフリーライターとは言え「新潮45」という超有名雑誌の看板のもとでこの原稿を認めたのであり、槍玉に挙げられたテル夫さんなどに比べると、ずっと権威ある存在であることは確かです。ルポ「修羅の家」掲載に対するテル夫さんからの目に見えた反論はありませんでしたが、だからと言ってテル夫さんがこのルポに書かれたことの全てを事実であると認めたということにはならないでしょう。文句があるなら反論すべきであり、反論がないならそれを肯定したものと見なす、という理屈は一見まっとうに見えて、実のところ力ある者のもの凄く傲慢な見解であると言えます。
 
 自分の娘の事を書かれて「週間新潮」の発売を差し止めさせた田中真紀子のような発言力と権力を、テル夫さんは持ちようもありませんし、何の力もない一般市民はマスコミに好きなことを書かれ、それに対して反論する力を持たない限りはそれを認めたとして、世間に対して汚名を被らざるを得ない、というのはたいへん恐ろしいことです。
 
 幼いミキたんが危機に瀕していると知り、放ってはおけなかった中尾さんの正義感と公共心は支持しますが……現状のままでは、何一つ解決はしません
 中尾氏はこの事件に関して、この後どのようなアプローチを取られたのでしょうか?
 新しく舞い込んでくる仕事に忙殺され、すっかり忘れてしまったのでしょうか?
 この世間全体と同じように
 
<つづく>




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