無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜

第二章「手
の男」

妄想:西田三郎

■2004/12/09 (木) 第二章 〜手錠の男〜 20 

「小人が背をかがめる」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割9分くらいまでが妄想です。

 15歳の女生徒と恋愛関係にあったククケンには、29歳の男性としての大人の自覚はなく、さらにその年齢差に欲情していたわけではない。
 当時のククケンのセクシャリティが、15歳レベルであったというだけの話です。
 
 己の立ち位置を15歳レベルに保ち、性愛対象もその年代に求めるという点において、ククケンはペドフェリストではなくロリコン野郎だったといえます。ただし、“子どもが好きだから”という意志が高じてロリコンになった訳ではない。自分とその女生徒の間にある世代間の断絶を認めなかったことがつまり、ククケンの問題性なのです。
 
 よく教師志望の学生さんの話を聞いていますと、「常に生徒の視線に立った教育ができる教師になりたい」という言葉を耳にします。これは一般企業の営業・事務職を志望する学生が面接の席などで「人とふれ合う仕事がしたい」というのと同じくらい無意味なことですが、恐らくはククケンも教師になる以前、そのような教師像を目指していたことでしょう。
 79年の「3年B組 金八先生」以降(“アフター金八”と呼びましょう)教師を志した者は必ずそう思ったはずです。
 
 しかし、“生徒の目線に立つ”ことにモチベーションの多くを費やしている若い教師は、結果、自らの立ち位置を見失いがちです。生徒の目線に合わせて姿勢を低くしてみたところ、その視点が生徒達のものよりずっと低くなったとしたら?

 …社会経験も乏しく、元々大人物でもない若い教職員が、視線を意識的に低めた結果、逆に生徒に舐められてしまうのはよくある事です。もともと視線など落とさなくても、その教職員の視線はニュートラルで生徒レベルに低いのです。

 まして自分が教え子の恋愛対象にもなり得るという、地べたを這いずるような視線の低さはもはや絶望的です。そしてククケンは自らの視線の低さに気付くことができませんでした。
 
<つづく>


■2004/12/10 (金)第二章 〜手錠の男〜 21 

「そしてダメ教師へ」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割9分くらいまでが妄想です。
 
 ククケンとかの女子生徒との関係がどのような結末を迎えたのかは判りませんが、15歳の少女と29歳の世間知らずのこらえ性のないトッチャン坊やでは、事が上手く収まることはまずありますまい。ですので2人の関係は、それが周囲に知られることとなった暁に、破局を迎えたと見るのが道理でしょう。当然ククケンは激しい批判を受けたことでしょうし、受けて当然です
 
 しかし、その事に対する自己反省を全くしなかったククケンは、首の皮一枚でつながっていた、『生徒達と教師』の距離感覚を失い(というか、そういうものが元々あったのかどうかも疑問ですが)、「ダメ教師街道」を「バニシング・ポイント」のように爆進していくのです。
 
 「こら!廊下を走んな!それとそのワイシャツ、ちゃんとズボンの中に入れなさい!」とククケン。
 「えーなんや。ロリコン教師がなんか言うてますけど」と男子生徒。
 
 「こら!授業中に私語すんな!それから学校にそんな短いスカート履いて来るのはやめなさい!」とククケン。
 「えーなんか目つきがイヤラしいんですけど。キモー
 「なんでセンセーは人の太ももばっかり見るんですかーキショー
 「なんやかんや言うたってうちらとやらしいことしたいんちゃうの」
 「ぜったいうちらでコイてるわ」…等々と女子生徒。
 
 そりゃそうですね。自分の教え子と正面切って交際するような大人の自覚に欠けた教師を、尊敬しろっていうのが無茶な話です。とにかくククケンの学校生活は地獄となりました。

 仕舞いには「バトルロワイヤル」のキタノ先生のように、生徒に授業をボイコットされるまでにナメ切られてしまいます。

<つづく> 



 
■2004/12/13 (月)第二章〜手錠の男〜 22 

「ワグ・ザ・ドッグ」

※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。8割8分くらいまでが妄想です。

大人になってから、『俺(私)の中学時代は良かった!そう思える人生を歩んでください

 上に挙げたのは1996年度カズミ第二中学卒業文集にククケンが寄せた文章です。

 この年はククケンが件の15歳女生徒と交際していた年であり、恐らくククケンが教師らしかった最後の年であると思われます。ククケンには大人の自覚も教師としての矜持もありませんでしたが、それを不必要なほどのやる気でカバーしていました。しかし性根がたるんどる人間がいくらやる気を見せたところで、その地金が見えてくるのは時間の問題でした。
 
 当時ククケンに指導を受けていた生徒達の目からみたククケン像は、以下のようなものでした。
 
 「責任感が強くて、ほかの先生より熱心だった。逮捕されたなんて信じられない」(卒業生:当時17歳)
 「勉強が遅れていると、個別に教えてくれる熱心な先生だった」(二年生:当時14歳)
 
 と、好意的な意見もある反面、

 「女子をえこひいきして、男子には厳しかった」(三年生:当時15歳)

 と、その後のククケン像に説得力を与えるものから、当時カズミ第二中を卒業していましたが、中2の妹が在学中だったある女子卒業生は、
 
 「妹はククケンに手や脚を触られたと言っていた」
 
 と、もはやフォローのしようのない証言をしています。
 件の女子生徒との交際のウワサも広まっており、それが所謂、援助交際であった、というような根も葉もあるのかないのかわからない噂には驚異的な速度で尾鰭・腹鰭がついていきました。
 ククケンは、教師として生徒達を管理しコントロールしていく自信を完全に失いました。教師にとってはこれは致命的です。
 
 <つづく>


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