わるいおまわりさん
作:西田三郎
「第8話」 ■ボロボロ
もう三島に頬っぺたを張られても何も感じなかった。
アドレナリンが全身に満ちていたからだろうか……?まあそんなとこなんだろうと思う。それほど怖くもなくなっていた。ただたんにあたしは、三島に対してムカついていた。
もっと三島を怒らせてやろうと思った……これから、どんなに殴られようとどうだっていい。当然なことだけど、その場で泣く、なんてことは頭の隅にも浮かばなかった。「……ほれ!!脚開け!!」三島が唾を飛ばしながらあたしに叫ぶ。
あたしは靴下と靴だけにされた情けない格好だったけど、そんな三島に泣いて許しを乞うなんていう、それよりみっともないことはしなかった。
「…………」ただ打たれた左頬を押さえながら、出来るだけ死んだような目で三島を見つめた。「なんだよその目は……」三島があたしを壁に押し付け、左足を持ち上げる。
「………ん」無理に脚を上げられて痛かったけど、それ以上は何も言わない。
「……今にひいひい言わせてやるかな……見てろよ」
三島はそういいながら器用に片手だけで自分のジーンズの前を外して、青いブリーフ(なんつーか、三島らしいどうしようもない趣味だ)をずらして……あれを引きずり出した。なんとまあ……これまで見たどのときよりも、三島のそれは大きく硬く、紫色に変色していた。
あたしは呆れると同時に気分が悪くなった。
しかし三島はあたしの右手を取ると、引っ張ってそれを握らせた。
「……ど、どうだよ………硬いだろ?ええ?熱いだろ?」
「………」あたしは答えず、首を縦に振った。
「……あいつのはどんな感じなんだよ……ええ?こんなふうに硬いのか?それとももっと太いのか?……え?ちゃんと皮は剥けてんのか?……もっと長い?それとも短い?……先が太かったり、大きかったりすんのか?……え?どうなんだ?」
「……」あほらしくてあたしは答えなかった。
「どっちがいい……どっちが好きなんだよ……ほら、扱いてみろよ……ますます大きくなるから……」
三島があたしの手の上に自分の手を重ねて、上下に扱かせる。
確かに熱くて硬かった。ぴくぴくと、脈打っているような感じだった。
それに……何だって?
あいつのより硬かっただって?太かったかだって?……さあ、どうだろ。「ほうら……こいつがまた、お前ん中に入るんだぜ……懐かしいか?ええ?懐かしいだろ?」
「…………」また一層高く、三島があたしの膝を高く持ち上げた。そしてあたしの背中を強く壁に押し当てる。三島が覆いかぶさってきて……しばらく狙いを定めてから、一気にその……“懐かしいやつ?”が、生で根元まで入ってきた。
「んんんんっっ!!!」あたしは必死で出そうになった悲鳴を堪えた。
「……ああああ……」あたしの耳元で三島が囁く。「……ええなあ……いや、やっぱりすごいわ……お前ん中は」
三島がゆっくりゆっくり……腰を使い始めた。
あたしを焦らしているつもりだったんだろうか?……だとしたらお笑い草だけど。「……ほら、いいか?……どうだ?あいつよりいいだろ?」
「………んっ………」あたしは言った「………もっと……激し………かったよ」
「ち、畜生!」三島はそう言うなり、めちゃくちゃに突き上げはじめた。
あたしも我慢してたけど、それはほんとうに激しかった。多分、三島にしてみるとあたしをボコボコにする代わり、みたいな感じだったんだろう。それくらいに三島の動きは暴力的で、なんかほんとうにあたしを懲らしめてるみたいだった。
「……くっ……ん……あんっ…………あ、あ、あ、………んんんっ…………」
「声出てるじゃねえかよ……ええ?気持ちいいんだろ?……やっぱ気持ちいいんだろ?」
「………き、……きもち………よく………ない………」なんとかあたしはそれだけ言った。
実際どうだったんだろう?ほとんど痛かったのは覚えているけど、気持ちよかったかどうかは覚えてない。ともすれば気持ちよかったのかも知れない。しかしそれを感じるには、そのときのあたしの心はものすごく醒めていたし、今思い出してもその記憶はあたしの中ではほんんとうに無味乾燥なものになってしまっている。
気持ちよかったか?……どうなんだろう?今日、三島はひどい災難にあって……これからこのことに関してどう思い出すのかは知らない。
でも、この災難がなければ、三島は死ぬまであたしが気持ちよがっていたと信じて一生を過ごすのだろう。それで、たまにそれを思い出しては、オナニーしたりするかも知れない。三島の想像の中で、あたしはもっと乱れて、悶えて、腰を使って、ひょっとしたら“おねがいだからもっと激しくして”とか言わされるのかも知れない。あの警部補さんは……これから先、誰か別の女の子が三島の手に掛ってあたしのような目に遭うかも知れない、と言った。だから三島は許せないんだと。
正直言って、あたしにはそんなことどうでもいい。
あたしは他人がどうなろうと、そんなことを気にするほど優しくもないし、心が広いわけではない。あたしみたいに馬鹿な女の子が居て、その子が馬鹿である結果、あたしと同じような目に遭うのであれば、それはただ単に世の中がこともなしに普通に稼動しいて、同じことが繰り返されるだけの話だ。
ほんとうに、ほんっとうにそれはどうでもいい。しかしあたしが許せないのは、三島がこのことを自分の頭の中だけで“いい思い出”にして、あたしがそのことに関してまるでうれし涙流して悦んだみたいに、それを頭の中で描き変え、そのまま人生を全うすることだ。そして、あたしとこんなふうにしてセックスしたこの思い出を、その後の人生で何度も何度も思い出しては、それでオナニーしたりすることだ。たぶん三島のような男だったら、そういう事をするだろう。
それだけはどうしても許せなかった。
あたしがどうしても許せないのはそれだけだ。「……ちくしょう……こんなに濡らしやがって……こんなに締め付けやがって……」三島が憎憎しげにあたしを突き上げながら言う。「じゃあこれはどうだ?」
三島はいきなりあたしからアレを引き抜くと、あたしをくるり、と裏返し、壁に向かって手を突かせた……ちょうど良かった……裸の背中がコンクリートに擦られて、痛かったところなのだ。……後で鏡を見てみると、あたしの背中には無数の擦り傷が出来ていた。
「お前はこっちの方が好きだもんな?…………あいつにもこっちからやってもらいたかったんだろ?」
そう言うなり、三島はあたしの脚を大きく開かせた。
まるで脚払いをかけるようにして。「うんんっ………」
今度は後ろから三島が入ってきた。
その勢いで、今度はあたしの頬がコンクリートの壁に押し付けられた。
「そうれ……そうれ………ほうれ……」アホみたいにグラインドとリズムをつけて、三島があたしを突き続ける。
まるであたしの中をかき回しているような感じだ。あたしのお尻をしっかりと掴んで、そのままお尻の肉まで引きちぎってしまわんばかりの勢いだ。
それだけではなかった。三島は前に手を回して、あたしのおっぱいを握りつぶすみたいにして揉んだ。さらに別の手があたしの腰から前に回ってきて、クリトリスを闇雲に擦り始めた。
いったいこいつには何本の手があるんだろう?「いきそうか……え?いきそうなんだろ?………」
三島が言ったので、あたしは少し顔を後ろに向けて……これまで生きてきた中で最高なくらいの冷たい目を作って、彼を省みた。「ちっきしょう!!!」
三島はあたしを突き飛ばした。あたしは壁にぶつかり……そのまましゃがみこむようにその場に崩れ落ちた。
息つくひまもなく、三島が駆け寄ってきて、あたしの髪を掴んで前を向かせる。
目の前に、三島のアレがあった。次の瞬間、あたしの顔に三島の精液が飛び散った。
ああそうか……つまりいきそうだったのは三島の方だったわけだ。
<つづく>
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