ヴァージン・ホミサイズ
作:西田三郎「第6話」 ■まっすぐ歩けなくなるまで
ひとりずつお風呂に入ってから、あたしたちは床につくことにした。
宮本はベッドの横に、わたしのための布団を敷いてくれた。
宮本はベッドの上から喋り、あたしはその下の布団から喋った。
「この世の中は死んで当然の奴ばっかりだ」
そう言う宮本に、あたしはひどく共感した。同時に、この世の中が汚れているということも。
今から思えば、10代の時にそんなふうに考えない人間なんて居るのだろうか?
多分、誰もがそんな考えてもどうしようもないことを考え、悩み、結局無駄だと気づいて、考えなくなる。
そんなものじゃないだろうか?とにかくあたしはそうだった。
あたしの欠伸が多くなったので、宮本が言った。
「そろそろ寝よっか」
そして部屋の明かりを落とした。
この部屋で数時間前に宮本の前で着替えたときに感じたドキドキ感は、もうどこかへ行ってしまっていた。
あたしはすっかり宮本に心を許していて……まるで赤ちゃんのように眠りについた。
……が……、あたしは何か、淫らな夢を見ていた。
奇妙な姿をした、海牛のような生き物が、裸のあたしの躰を這っている夢だ。海牛はあたしの首筋や、おっぱいや、お腹をゆっくりと這い……あたしの躰に粘液の線を作りながら、あたしの脚の間を目指していた。
すごく気持ち悪くて嫌だったけど、何故か躰が動かなかった。
やがて海牛はあたしの脚の間に侵入し……。
「やっ!」そこで目が覚めた。
目の前に、宮本の顔があった。宮本は暗い中でもわかるほど頬を紅潮させ、亢奮しているようだった。
……これも夢の続きなのだろうか……と思ったが違った。
あたしのTシャツは、胸の上までまくり上げられていた。
ブラジャーはしていなかったので、胸が剥き出しになっている。
下にはパンツしかつけていなかったが、それも膝まで降ろされていた。
「……み……宮本……ちょっと」そう、悪い予感が、的中したのだ。
「……今田、寝てる間もすっごく気持ちよさそうだったよ……ほら」
「んっ」乳首をつままれた。びくん、と躰全体が大きく波打った。
「ほーら……こんなに乳首立っちゃってる……やらしーんだ」
「……宮本……ちょっと……何これ………へんな冗談やめてよ」あたしは言った。「……これじゃ、あんた……ほんとにレズじゃん……洒落になんないよ」
「……だって、そうなんだもん」そう言って宮本はあたしの上に這い上がってきた。
「……や……やめて……」あたしは宮本に言った。でも何故か、本気で抵抗できない。自分の声が、なんかか細くなっているみたいだ「……こんなの、変だよ……あたし、こんなの………」
「今田もレズなんじゃないかってみんなに……あのアホ共に噂されてるじゃん……いいからいいから……あたしがすっごく気持ちよくしてあげるよ」
「……そんな……いいってば………あっ」
宮本にゆっくりと両方の乳房を捏ねられた。
正直言って、びっくりした。
普段は重たいだけの乳房が、こんなにも人の指の感触を正直に感じ取ることができるなんて、知らなかった。
「……あ………やだ………」
言いながらあたしは、宮本の細い指によってこね回される自分の胸が、いろんな形に変形するのを見下ろしていた。
と、宮本がそっとキスをしてきた。
それも、これまで想像していたのとは全然違っていた。
宮本の舌が、あたしの口の中に入ってくる。それはあたしの舌をからめ取り、ゆっくりと愛撫した。
頭の後ろが痺れるみたいだった。
どんどん躰から力が抜けてきた。宮本はあたしの唇を甘噛みし、わたしの唇から離れようとした……思わずあたしは、唇でそれを追っかけていた。
「やっぱ……思ってたとおり、今田っていやらしいんだ……」宮本はそう言って、唇を下へ移動させていった「……なんか、わかるんだよね。今田ってあたしになんとなく似てるからね」
「……で……でも………そんな………あっ」
今度は左の乳首を甘噛みされた。
あたしはさらにのけぞった。そのまま宮本は舌先を小刻みに動かして乳頭の先端をくすぐる。
「……あっ………はっ…………ん………ぐ………」
思わず出てしまった声を手の甲を噛んで堪えようとしたけど、その手も宮本の手によって外され、頭の上に押さえつけられてしまった。
宮本の舌の動きは止まらない。あたしは唇を噛んで絶えるしかなかった。
「声出しちゃっていいんだよ………?ほら……今田、気持ちいいんでしょ……?」宮本があたしの耳元で囁く「ほら……今日、ウチには誰もいないしさ………我慢しなくていいんだよ?」
「んっ………で、でも……だって……あっ」今度は反対側の乳首を舌先で刺激される。
やばい、これではほんとうのレズビアンじゃないか。
宮本はあたしの右乳首を舌で転がしながら、ゆっくりとあたしのお腹を這うように、指先を下へ下へと動かしていった。
「……あっ………やだ………ダメだよ………そこはダメ……だっ………て………んんっ!」
宮本の指が、躰のなかでもっともむず痒く、熱くなっているところに触れた。
「……すっごい………今田ってほんとうにものすごいエッチなんだ」宮本はそう言ってあたしからにじみ出た液をひとすくい指に絡め、あたしの目の前に突き出した。
「いやっ」
「………こんなになっっちゃってる………ねえ今田、毎晩オナニーすんの?」
「……そ………そんなの………しないよ……んっ」
宮本の指が、先端に触れた。あたしはいつも、その包皮の上で指を使っている。
「ウソついちゃだめだよ………ほんとのこと言わなきゃ……」
「あっ……!いやあっ……!」
宮本がその部分の包皮を、つるん、と剥いたのだ。指が、軽く触れる。
「い……いたっ」あたしは思わず顔をしかめた。
「……いつもはここ、剥かないんだ………ちょっと我慢してね。すぐ、しんじられないくらい、気持ちよくなるからさ」そう言って宮本は指の先を自分で舐め、またあたしの股間に指を伸ばした。
「……あっ……ひっ………やめ………やめ……て」
宮本の唾で滑りのよくなった指先が、生まれてはじめて剥き出しになったあたしの陰核に触れる……そして、ゆっくり弧を描くように動く。
あたしは気持ちいいんだか痛いんだかわからない激しい感覚に腰をゆすり、宮本にしがみついていた。
「………お………お願い………だめ……これ以上したら………」
「いっちゃう?……今田ってイきやすいんだね」
「……ほんとうに………ダメだって………あっ……ああっ………あっ」
言われたとおりに、はやくもあたしはイきそうになっていた。
腰が浮き上がり、つま先が突っ張る。あともうちょっと……もうちょっとのとこだった。
……が、突然、宮本が指の動きを止めた。
「……あ………え?」あたしは拍子抜けした。絶頂まで、準備万端の状態だったのに。
「………えへへ、まだ、イかせてあげない。もっともっと、いじめたげる………だって今田、可愛いんだもの………」
「……み……宮本………それじゃ………へ……変態じゃん」
「そうだよ」宮本は言った「退屈な奴よりはマシでしょ」
そう言うと宮本は、舌をあたしのお胸の間からお腹、おへそを舐……さらにを下のほうに這わせていった。
と同時に、脚を左右に大きく開かされる。
宮本が何をしようとしているのかはすぐにわかった。
「……や、やだ!!………それ……ダメだよ…………ほんとに……汚いから……許して……」
「お風呂にでちゃんと洗わなかったの……?……あたしが調べたげる。ラクにしててね」
あたしは脚を閉じることもできず、宮本にべちょべちょになった股間を見られて……思わず顔を背けた。
右手で顔を覆って、枕の端を噛んだ。
「………すっごい……今田……すごい溢れてるよ………」
「………へ……へんだよ……こんなの………ああああっ!」
宮本が顔を埋めてきた。そしてチュウチュウ音を立てて、吸い始めた。
あたしはまた腰を浮かせてしまった。腰と布団の間にできた隙間に、宮本の両手が入ってきた。
あんなにか細い躰の一体どこにそんな力があるのか知らないが、あたしはそのままがっちり腰を押さえ込まれ、逃げられなくなった。
「……気持ちいいでしょ……今田。あたしら、やっぱり、似てるんだよ。ほかの人とは、違うんだよ」散々あたしのを舐めた口を離して、今田は言った「………藤田と伊東のセックス、見たでしょ?……あんなの、愛し合ってるなんて言えないよ。おしっこするのや、うんこするのと同じ。伊東は、入れたり出したりしたいだけ。藤田は、がんがん突かれたいだけ……あんなの、セックスじゃないよ。動物の交尾だよ」
「………ん……あっ……いやっ!!」剥き上げられた陰核に、宮本の舌先が触れた。
目眩がするくらいの感覚が、あたしを襲った。
「ほら、気持ちいいでしょ、今田。たまんないでしょ……」
あたしはまたも、瞬く間にまたイきそうになった……でもまたはぐらかされる。
「……あ………はあ………お………おね……が……い」
「……どうしてほしいの?」宮本が意地悪そうに聞く。答えは知ってるくせに。
「………ん………その………」あたしはこの期に及んで口ごもった。
「もっとして欲しいの?」
あたしは首を縦に振った。
「もっとして、イかせてほしいの?」
あたしはもっと強く首を縦に振った。
宮本はもっといやらしい音を立てて、いまや全身の神経が集中してるのではないかというその部分を激しく転がし始めた。
「ああっ……………………………………っく」あたしは全身を痙攣させて、イった。滞空時間は新記録を更新したと思う。わけがわからなくなって……大袈裟じゃなく、ほんとうにこのまま死んじゃうんじゃないかと思った。
「でも……」宮本がまた意地悪に笑う「……まだまだこれからだよ」
「そんな………ちょっと………ちょっと……もう、ダメだよ、もう………うんっ!!」
まだ痺れたままの陰核に、また宮本の舌先が触れた。
ほんとうに、今までのは序の口だった。
窓の外が白んでくるまで……あたしは指と舌を使った様々な方法で、何回もイかされた。
最後にはほとんど半泣きで許しを乞うて、やっと宮本は許してくれた。
その日何回イったかは、さすがに覚えていない。あたしはその後、まっすぐ歩けなかった。
<つづく>
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