図書館ボーイ
作:西田三郎
■10■ 声なき被害者の声
なんと、この講義室の奥にも、大きな鏡があった。
覆いが掛かっていたから、気づかなかったのだ。仲馬さんが、ぼくの背中を押して鏡の前に立たせ、手品師のような仕草で覆いを取り去った。
あのときとまったく同じ姿勢で、スカートを脱がされた情けない姿で、自分の恥ずかしい姿を見せつけられる。
背中には、ぴったりと仲馬さんが張り付いていた。久保先生よりはかなり控えめな、彼女の胸が押し付けられている。
そして、それだけじゃなくて……仲馬さんの手は、ぼくのパンツの中に侵入しようとしていた。
「いっ……いやっ……ダメ、ダメですっ……」
「なんでえ?……なんで学校一の美熟女先生ならオッケーで、わたしはダメなの〜?」
「そっ……そういう問題じゃ……あっ……」
仲馬さんの手によって、左耳のイヤフォンが外される。
包帯に隠されたマイクロフォンはそのままだった。
「ほ〜ら〜……こんなにしちゃってるクセに……」
「あっ!……うっ……うっ……あっ……」
「すっごい……先っぽがもうヌルヌルしてる……ピクピクしてるよ、変態くん」
「んんっ……んっ……くうっ!…………」
扱かれて、思わず自分の指を噛んだ。
その姿が鏡に映し出されていることはわかっていたけど、目を開けてそれを見る勇気はなかった。
「外に出しちゃおうっと」
「あっ……やめっ!……」
ずるり、とパンツが下ろされて……パンツのゴムに引っかかっていた先端が、ぴたん、と臍の下辺りにぶつかる。仲馬さんはそれを握りなおし……ゆっくり、ゆっくりと上下に扱き始めた。
「もう、さっき閲覧コーナーでいっぱい出したはずなのに……元気だね〜……このスケベ。変態」
「あっ……うっ……あああっ……」
先端をいじくりまわす手は、明らかにぼくを焦らそうとしていた。
ぼくはぐっとこらえた……だって、この場所は子どもたちに絵本の読み聞かせを行うための空間なのだ……そんなところで……そんなところで……ああ、だめ だ……そんなことを考えると……また、狂わしいくらいの痺れが下半身を駆け巡る……いつの間にか、いつの間にか……ぼくは……
「自分で腰振ってるじゃん」仲馬さんに指摘される。「……久保先生にされたときも、こんなふうになっちゃったの?……自分で腰振っちゃったの?……ほんっと……いやらしい子」
「…………あうっ……んっ……ダメ……だめだよ……ほんと……もう……」
「で、久保先生はどうしたんだっけ?……女子の水泳の授業だって、永遠に続くわけじゃないよねえ……?」
「……………そ、そんな……………」
「されたいんでしょ?……久保先生にされたみたいに、またおんなじことされたいんでしょ?……だからあんな本……『学校現場の性被害〜声なき被害者たちの声』を読んで……ゴシゴシしちゃってたんでしょ?……してほしいなら、してほしいって、ちゃんと言いなさいってばよ」
「……………あ…………うっ…………」ぼくは首をぶんぶんと横に振った……理性による、最後の抵抗だった。
「……………ほら、してほしいでしょ?」
「………………んんっ…………」また、首を横に振る。
「じゃあ、このままここに置き去りにしちゃおっと……」
仲馬さんの手が、ぼくから離れていった。
考えるより先に、ぼくは自分の手で仲馬さんの手を握っていた。
「……あら、な〜あに〜い?」
「……………」
「してほしいの?」
ぼくは首を……おずおずと縦に振った。
「もう、やめてって言ったり、もっとしてって言ったり……ワガママなんだからあ…………じゃあ、条件出しちゃおっかな〜…………目を開けて、自分の姿を鏡で見ながら……ゴシゴシしてごらんよ……我慢できなくなる、ギリギリの限界まで」
「…………えっ……そ、そんな……」
「しないなら、やってあげない」また、仲馬さんがクスクスと笑う。
「……………」
おずおずと……目を開けた。
透明人間になれるわけじゃないので、当たり前のようにそこにはぼくの姿が映っている。
グロテスクなまでに赤く充血したあれをお腹にくっつけるように直立させて、鏡を見つめているのはぼくだった。
セーラー服の上を着て、下半身を丸出しにし て、真っ赤な顔で、バカみたいに口をアングリ開けているのは、ぼくだった。
カツラが少しずれて、顔の右半分を隠していた。鏡で確認できる左目は、とろんと していて、潤んでいた。
そして、中腰になると……先端から、つう、と透明な液がひとしずく、床に向かって落ちた。
「はずかしいねえ……はしたないねえ……いやらしいねえ」耳元に唇を寄せてきた仲馬さんが囁く。「ほら、はじめて」
もうやけくそだった。
ぼくはぎゅっと自分のあれを掴んだ。まずは右手で掴み、さらにその上から左手を添えた。
そして、猛烈な勢いで扱き始めた。
鏡に映し出されている、自分の姿をしっかり見つめながら。
腰も動かした。手の動きにあわせて前後に腰を動かし、お尻も左右に振った。
頭も振り立てた。
カツラがふっとんだ。
唇の端からは、よだれがたれる……もう、たれるに任せた。
そんなむちゃくちゃなやりかただったから……あっという間に終わりが近づいてきた。
「あああっ…………だめっ…………もうだめですっっっ!!!」
「しょーがないなあ……どれどれ、おねえさんに任せない」
鏡を通して……仲馬さんがぼくの前に跪くのが見えた。
その後ろ姿は、座り込んだ猫にそっくりだった。
やわらかく、あたたかい粘膜が、ぼくの感覚の中枢になっているその部分を、やさしく包み込む。
「ああああっ…………あっ…………いっ…………」
舌が動き出す。
「はあっ…………あっ……んんっ……!」
身体の中で津波が起こったが……ぼくは理性でそれをせき止めた。
正直言って……………もっと、じっくりと、楽しみたかったからだ。
「久保先生とおねーさん、どっちが上手い?」口を離して仲馬さんがぼくを見上げ、笑う。
「…………も、もっと…………もっと………して………」
「………ほんっっと………しょーがないなあ………正直な子だなあ……すけべ」
仲馬さんが再び、ぱっくりとそれを口に収める……そして、彼女の右手がぼくの汗ばんだ尻の素肌を這っていく。
指は、尻の割れ目に忍び込んで……その部分に触れた。
「あああっ!!!だめっっ!!」思わず叫んでしまった。
「『図書ではご静粛に』」仲馬さんが一旦口を離して言う。「シー、ね?」
ずぶり、とぼくの出口であるはずの部分を入口にして、細い指が侵入してきた。
久保先生が、ぼくにしたように。
「………………くはっ………んっ………」
慌てて仲馬さんがまた咥え直す……次の瞬間に、ぼくは激しく射精した。
彼女の口の中に。
仲馬さんは、それを……ごくり、と飲み込んだ。
彼女の小さなのどぼとけが、ぴくりと動くのを、はっきりと見た。
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