終電ガール
作:西田三郎

■前半戦・動揺発快楽行き

 「…いやだ…っ」
 桐東さんが意地悪く見つめる中、藤岡と野尻は協力して、満のショーツをずり下げた。
 思わず手を伸ばして防ごうと思ったが、右手は野尻の激しく怒張した陰部に押しつけられていたので、左手一本で4本の手に抵抗することは不可能だった。
 あっという間に、膝小僧までショーツがずらされる。
 訴えるような気持ちで桐東さんを見てみても、そこには救いは何もない
 「ホント、役者やのう…」バカにするような口調で、桐東さんは満にそう呟いた。
 「ひゃっ……?」満は慌てて野尻の方を見た。野尻の陰部に押しつけらえていた手は解放されたが、陰部に何か冷たいもの塗りたくられたのだ。「…えっ…あっ?!」
 今度はそれが、尻に塗りつけられた。
 慌てて下を見る。ちょうど藤岡が、野尻にローションの瓶を返しているところだった。もっとも満はそんなものを見たこともなかったが。
 「あら〜…」覗き込んだ桐東さんが言う「…えげつないわ。これは」
 野尻がローションの瓶を床に置いた紙袋に仕舞う。
 前も、後ろも、下半身をぬめりの強い液まみれにされる。あまりの予想外の攻撃に、満は思わず野尻にしがみついた。
 野尻は荒い鼻息と、液を潤滑油とした淫らな愛撫で答える。
 「……んっ……やっ……」
 野尻は固くなった満の陰茎に、藤岡は尻の割れ目にローションを塗り込めるように手を動かす。
 満は頭がくらくらするのを感じた。
 世の中にはまだ知らないことが沢山ある。例えば、今自分が受けているローションを交えた愛撫など。
 野尻がぬめる手で満の陰茎をやさしく掴み、ゆっくり上下に動かし始めた。
 ぬめりが、ヌチャ、ヌチャという、この上なく淫らな音を立てた。
 「……あ…いっ…………んっ………もう……もう……ダメだ………」泣きそうな顔で野尻を見上げて、空しい訴えをする。「……お願い……許して………」
 「…何言ってんだよ。まだまだこれからだって」野尻は耳元でそう言うと、右の耳穴に、ふっと息を吹き込んだ
 「……んっ…」またも背中に悪寒が走る。
 「……ほんと、カワイイだけじゃなくてエッチなんだね、キミは」
 満のそんな反応に亢奮させられたらしい藤岡が、後から満の左の耳穴にふっと息を吹き込んだ。また満の全身が跳ねる。
 「…ほんっと。カワイイ顔していやらしいったらありゃしない」桐東さんがはやし立てる「ほら、いっちゃいなよ。もう限界でしょ?」
 「……あ…う…」満はいつの間にかつま先で立っていた。
 確かに桐東さんが言うように、満はもう限界に達していた。
 このローションによる攻めは、初めて陰茎を他人に嬲られる満にとっては、あまりにも強烈すぎた。
 「……あ…あ、あ、…」思わず出そうになった声を、野尻の肩に顔を埋めて堪える「くっ…」
 すると野尻はわざと陰茎を扱いていた手の動きを、実にゆっりとしたものにペースダウンした。
 「ダメだよ。まだイッちゃ……」満のもみ上げに溜まった汗を舐めながら、野尻が言った。「……もっと愉しませてもらうからね…3万円ぶん
 「………そ、そんな………ああっ!」何か金額が違うような気がするが、気に留めているひまはなかった。後から攻める藤岡の指が、肛門に触れたのだ。
 「…かわいいお尻の穴だねえ……毛も生えてないし。触られたことないでしょ、こんなとこ」
 「……んんっ」藤岡が肛門の周辺をマッサージし始めたので、満は藤岡の問いに首をぶんぶん振ることで答えた。「やだ……や………やめて」
 「……そうそう、その調子。ほら、お二人さんめちゃくちゃ亢奮しちゃってじゃん」桐東さんの茶々が入った。「…いいじゃない。前からも後からも、可愛がってもらいなよ
 「……」満は桐東さんを呪いながら、恨めしげに睨んだ。そんな表情が、前と後ろの変態をさらに欲情させることも知らずに。「……んっ!……くっ……ダメっ
 藤岡が人差し指を、肛門に侵入させようとしている。
 尻を揺すり、腰を前に突き出してその指から逃れようとする。
 しかし前には野尻の陰茎への愛撫が待ち受けている。野尻は満の包皮を、ぬるっと剥き上げた。
 「…いたっ……」甘い痛みに思わず腰を引いてしまった「……んんんっ!!!」
 藤岡の人差し指が第一関節くらいまで、肛門に挿入されたのだ。素晴らしい連携プレーであった。
 「…ほら、力抜いて。力抜かないと、痛いよ…」藤岡が囁く。
 「…い……いや……んんっ…」藤岡の言うとおり、力を入れると強い圧迫感が直腸を襲った。「…ああっ!!……は………………………はあっ………」
 力を抜いたその瞬間を狙って、藤岡は指をさらに押し込んだ。満の肛門が、根元まで藤岡の指をくわえ込む。思わずまた力を入れた。これまで経験したことのない異様で甘い感覚が、肛門から脊椎に這い上がった。
 「……すっごい締まってる。やっぱいいわ、初物は」藤岡が、桐東さんに言う。
 「……でしょ。この子の中、どうなってる?」桐東さんが藤岡に尋ねる。
 「…なんか、すっごく熱くなってて……中は、指に吸い付いてくるみたい」
 「…ふーん。良かったね…。やっぱ後ろまでいやらしいんだ、この子。…どう、初めてのアナルは。気持ちいい?
 「……」被虐感を煽る桐東さんの言葉に、受け答えする余裕はなかった。
 藤岡の指は満の直腸の中で、ゆっくり弧を描く。痛みとも快感とも断定できない微妙な感覚が、満を支配していた。いつの間にか満は、野尻のしわくちゃのYシャツを引きちぎらんばかりに、強く握りしめていた。野尻はそんな満の陰茎をさらにゆっくりしたスピードで扱き、追い打ちを掛ける。
 「…あれ、ホラあれ。あれいっちゃおうよ。前立腺」桐東さんが藤岡に耳打ちする。
 「…ヒドイねえ、桐東ちゃんは。大丈夫かなあ?」そう言いながら藤岡は満の直腸の中で何かを探していた。「……えーと…このへんかな……」
 肛門内をさまよう藤岡の指を感じながら、満の意識はすでに朦朧としていた。
 前立腺……?聞いたことはある。確か、ガンになったりするところだ。
 いったいそんなところを触って何を……心の中に浮かんだ疑問に、その感覚が全身で答えた。
 「……あああっ!!」目眩のしそうな感覚に、思わず大きな声が出た。桐東さんがその口を手で塞いだ。「…むぐ…」
 藤岡がその部分を探り当てたのだ。すべての意識と感覚が、脚と脚の間の底の部分に集中した。
 前から陰茎を焦らすように探る野尻の手の感覚さえ、遠くなるようだった。
 「…はい、ビンゴ」桐東さんがそう言いながら、満の唇の間に指を突っ込む
 「…あ…あう…」入り口では桐東さんの指が、出口では藤岡の指が蠢いていた。
 入り口である口の中では、涎が止めどなく溢れ出て、舌と桐東さんの指が戯れる。出口である肛門の中では、藤岡の指がその決定的な部分を捏ね続ける。そこから何と呼ぶのかも知らない怪しげな液が溢れ出て、括約筋が藤岡の指を締め上げる。
 桐東さんが満の口の中から指を抜いた。
 満の口から涎が溢れ、唇と桐東さんの指が糸を引いた。口の端からも、涎があふれ出している。
 「上も下もこんなにしちゃって……もうエッチなんだから」桐東さんが指で糸を引く指を満に見せつける。
 満は前後不覚になりながら、桐東さんの指を見た。
 確かに桐東さんは十代の少女にも見えたが、どうしても手だけはそう見えなかった。
 その手には瑞々しさがない。そして年齢相応の皺が深く、隠すことのできない年輪を刻んでいる。
 人は手から老い始めるんだな。
 満がそんなどうでも良いことを考えていると、電車が途中のターミナル駅に到着した。

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