終電ガール インテグラル
作:西田三郎
■第二章 『輝』第二話「バニシングポイント」
「そっ……そこ…………んんっ!!!」
「ここ、触られると……そんなに気持ちいいの?」千春がからかうような口調で囁く。「なんか、ひくひくしてる……ほしがってるみたい」
「そ、そんな……あ、あっ!!!」浅く、千春の指が入り口から……本来は、『出口』だが……進入してきた。
「ほら……それからどうしたの?……言いなさい。言ったら許してあげる」
「言うよ……い、言うから……ま、待って……んんんっ!」
「……それから?……その子はどうなったの?……輝くんは……どうしたの……?」
「……そ、それから………し、しばらくすると……そ、その子に……そ、その子に……げ、限界がきたみたいで……」
「イッっちゃた、ってこと………?」
真っ赤になった顔を背けながらも、輝がこくり、と頷く。「……………後ろの太った男が……その子のちんちんにそのヘンな器具をつけたまま……その子にパンツを元通りに履かせた……ちゃんと女物のパンツで……その中で、機械と、その子自身のちんちんが……ピクン、ピクンと動くのが……はっきり見えた……」
「………マジ、えげつないよね……」えげつないのはどっちだよ、と輝は思ったが、それどころではなかった。
「その子が……ぴん、と背伸びをするみたいに……伸び上がって……身体が、弓みたいに反り返った……すると……その子が履いていた……ってか履かされていた……女物のパンツの中で……ちんちんが……びくん、びくんと大きく跳ねて……みるみるパンツが……内側から染み出してくる………精液で濡れていった……」
「うわあ………」千春の指は、第一関節の手前まで浅く潜り、待機している。
「…………す、すると……その子が握らされていた……デブとヤセ、それぞれのちんちんが……ほとんど同時に……びくん、と跳ねて……ま、まるで水鉄砲みたいに……そこから精液が飛び出したんだ………その子の履いていたスカートの前に、デブの精液が……お尻のほうには……ヤセの精液が飛び散った………」
「………ひええ」そこで輝は、自分の躰が示していた反応に気付いた。
ここまで語ったんだから、それ相応のご褒美をくれ、とでも言わんばかりに……千春の目の前で、官能的に、悩ましげに腰をくねらせ、“おねだり”をしている自分に気付く。
千春はぷっと吹き出すと……さらに意地悪な笑みを浮かべた。……輝の背筋は凍りついた。
「……それから?……」
「えっっ??」……思わず、声が上ずっていた「……そ、それからって……も、もう何もないよ…………こ、怖くなって……その場からは逃げた……それだけだよ……」
「……家に帰って……それで、オナニーしたでしょ」千春が、また絡めるような指使いで陰茎を弄びはじめた。
そして……入り口付近で待機したままだった指先が……少しだけ奥に、くいっ、と進入してきた。「………あうんっっ!!!!」
「……聞いてんですけど。オナニー、しまくったでしょ。その子のことを思いながら……それからずっと………何回も何回も、思い出してはオナニーしたんでしょ……そうでしょ?」
まるで自分の身体の一部であるとは思えないくらいに、腰が跳ね、踊った。
ぐいっ、っと千春の指がさらに奥に侵入してくる。
あと少し……もう少しだった……。もちろん、人からこんなこをされるのは初めてである。しかしこの感覚はすでに輝にとって馴染み深いものであり、普段の自分の指で与える感覚と、今味わっている感覚は……話にならないくらい違っていた。「………う、うんっ!!し、したよ……し、しまくったよ……したってば!!」
ギブアップのために、ロープを掴むような気分で、輝は千春の頭をしっかりと掴んでいた。
「……想像してオナニーするときは……ねえ、教えて。その子に痴漢をしてた、デブとヤセ、そのどっちかの気分になって……つまり、その子を攻めてる側の気分になって…………するわけ?………たとえばあたしに……やーらしいことするときは……そのデブとかヤセになったつもりで………あたしをその子に見立てて……あたしのおっぱい揉んだり、パンツの上からエッチに触ったりしてるわけ……?」
「………そ、それは………あううんっっ!」……またするり、と指が少し前進する。「い、いやっ!」ますます上げる声の質はかぼそくなり、反応も少女じみてきた。
「………正直に言わないと、めちゃくちゃにしちゃうよ」と千春。
「………言うよ……言うから……」千春のやわらかい髪を、ぎゅっと握り締める。「………オナニー……したよ……ってかあの日以来、ずっと……それこそ何千回も何万回も……あの時見たことを思い出しては………オナニーしまくった。ああ、やってやってやりまくったよ……オナニーするときは…………それを始めるときは……いつも、あの子を攻めていたデブか、ヤセの気分になって……妄想の中であの子を攻めるつもりでいるけど……だ、だんだん……き、気持ちよくなっていくに従って………いつのまにか、妄想の中で……攻められてるのはぼくになってる………そう、あの電車の中で、みんなに見られながら……ちんちんにヘンな器具をつけられて……お尻の穴に指を入れられて……両手に男のちんちんを握らされて……いたぶられて、はずかしめられてるのは……ぼくなんだ………それを……ぼくらを取り囲んだ周りの人たちが……興奮しながら……じっと見守ってる……その視線を感じてることを想像してみると……ますます亢奮が強くなるんだ……それに……ぼくたちのことをじっと見てる人たちのうちの……顔のひとつは…………………12歳のぼくなんだ」「……………へ、へえ」さすがに千春は、驚いているようだった。
もはや、何を隠し立てする気もなかった。何を恥じる必要もなかった。
輝は見上げる千春の目をまっすぐに見つめると……自分から口を開いた。「しょ……正直に………言うよ………き、君とエッチなことをするときも……最初、ぼくは………き、君を……あの子に見立てて……そして、自分があのデブかヤセになったつもりで………君を責めたてるつもりで……がんばるんだけど……君が……いやらしく反応すると……いつの間にか……ぼくは、君のことを羨ましく思ってる……君の身体を通して……あの子が味わった恥ずかしさや、快感や……とにかく『責められてる』って感じを……ぼくも感じてみたい、って……いつも思うんだ……」
「わ、わかんないけど……」千春の目に、不快感はなかった。好奇心しかない。「すごくエロいね、それ」「……いかせて」輝は言った。「ぜんぶ、喋るから……いかせて……」
「う、うん」ちょっと気おされたように千春が頷く。「いくよ……」
ずぶり、と千春の指がさらに奥まで入ってきた。「あああんっっ!!」憚ることすらできず、声があふれ出した。
「……すごい……中がひくひくしてる………ねえ、どこがいいの?」
「そ、そっちじゃなくて……んっ………も、もっと裏側………」
「ここ?」……千春はまさに手探りだった「……ええっと……ここ?」
「……ち、ちがう……そ、その……た、玉の……う、裏側……あたり……」
「あ、そか。いわゆる前立腺ってやつ?」千春が無邪気に笑った。「ここでしょ?」ビンゴ、だった。
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