終電ガール インテグラル
作:西田三郎
■第二章 『輝』第二話「She was not a girl.」
自分の陰茎にさらに血液がみなぎり、その部分に集中する感覚は、もはや痛いくらいに自分を責めさいなんでいた。
今はもう、千春の視線は気にならなかった。
せり上がる陰嚢の中では、出口を求める熱いマグマのような精液が、ひたすら解放されることを待ち望んでいる。しかし……その前に、口から心の中のマグマを、すべて吐き出してしまう必要があった。「……そんな……」千春が、信じられない、という顔でぽかんと口を開く「まさか……その子って……」
「……ぼくも一瞬、自分の目を疑った……いや、よく『自分の目を疑った』なんて、言葉にはするけれど、ほんとうに自分の目を疑ったのはあれが最初だった……だってその子は……とってもきれいな顔をしていたんだ……切れ長の目で、真っ白な肌で……髪の毛は今のぼくくらいだけど……あんなきれいな顔をした女の子は、あれ以来見たことなんか……」輝ははっとして口をつぐんだ。
いかに気分が乗っていたとはいえ、さすがに千春の気分を害したのではないかと思ったからだ。
でも見下ろすと、千春はにやにや笑っていて、そんな輝の気持ちを察していたようだ。「あたしを除いて、でしょ……?」やさしく、千春が囁く「……いいよ。続けて」
「……と、とにかく……その子が女の子じゃないなんて……とても考えられなかった……へんな話だけど……信じたくないような気分だった……でも、その下半身に視線を移したときに……そのときのぼくにはとても現実としては受け入れられないようなものが……そこにあったんだ」
「……その……」今度は、千春が唾を飲み込む音がした。「……お、おちんちんが……ついてたわけ……?」
「……ああ……」こくり、と輝は頷いた。「……その子のパンツは……太腿の途中まで降ろされてた、って言ったっけ?…………で、股の間から……ものすごく……大きくなったちんちんが生えてた………紫色に……そうなんだ……むらさき色に……変色して、硬くなった先っぽが……ローションなんだか……何なんだかよくわかんない液体で……濡れて、光ってた……」
「……………こんなふうに?」そのとき、不意に……千春が輝の陰茎を掴んだ。
「あっっ!!」
びりっと、鞭打たれたような痛みをともなう感覚が輝の全身を掛けめぐった。
背中が反り返り、壁にまた磔になる。千春が、輝の亀頭を、またすっぽりとその口に含んだのだ。
「あっ………んんっ……だ、だめっ……待って……や、やめて……」
またも、強烈すぎる感覚だった。
亀頭を転がす千春の舌は、さっきよりかなり乱暴だった。
輝の靴の中では、すべての足の指が内側に丸まっていた。「……続けて……」千春が一瞬、輝の亀頭を吐き出して、荒い息づかいとともに囁く。「もっと鮮明に、はっきり思い出して……思い出したまま……あたしに聞かせて……」
「……うっ……あっ……で、でも……このまま、このままだと……」
W君の口の中に出しちゃう”と喉元まで出かけたところで、千春が輝の言葉を制した。
「いいから……気にしないで」
また、亀頭が千春の熱い口の中に飲み込まれる。
「ああああっっ………だ、だったら……だ、だったら……このまま……このまま……このまま……」
「いかせてほしいの?」千春がまた口を離す。「……あの子も同じように言ったよ……今朝、この場所で、そんなふうに……輝くんも、今、あの子に負けないくらい、かわいいよ」
「……あっ……うっ……くっ……」千春が手を使って、乱暴に輝の陰茎をしごき始めた「だ、だ、だ、だめだよ……」
「だめじゃないよ。しゃべらないといかせてあげない……」
「しゃ、しゃべってるよ……んんっ……しょ、正直に……しゃ、しゃべってるじゃん……」
「まだまだあるでしょ……ねえ、その子のこと見て……どんなふうに思ったの?……自分も……おんなじような目に遇いたいと思った?」
「あっ……うっ」千春の手が、これまでにない力で輝の陰茎の根元を握り締め……また亀頭がやわらかな粘膜に包み込まれる。
みたび、舌が動き出した……まるでその表面を、舌先で丹念に磨かれているような気分だった。息も絶え絶えになりながら、輝は話を続けた。
「……その子の……その子のち、ちんちんには……なにか……見たこともないような器具が取り付けられてた……マジックテープのバンドに……ろ、ローターっていうの……?そういうものがくっついてて……そこからなんか……コードが伸びてた……コードは太った男の手の中に続いていて……男はコントローラで……その子のちんちんに取り付けられた……ろ、ロータの振動を調節して……その子が涙を流しながら……死に物狂いで喘ぐのを……目で楽しんでるみたいだった……」
「……痩せた男のほうは?」亀頭をいったん開放して、千春が聞いてくる。
「その子の……真後ろに立ってた……その子のお尻の後ろに……手を伸ばして……何をしているのかは、ぼくの位置からは見えなかったけど……たぶん……お尻の穴に……指か……何か……別のものを………入れてたんだと思う……」
「す、すっごい」これ以上赤くなりようがないように見えていた千春の頬が、さらに赤くなった、
いまやその頬は熱を帯び、周りの空気さえ暖めているようにさえ見える。
千春の左手が……(右手はあいかわらず陰茎の根元をしっかりと握り締めている)……するすると輝の骨の浮き出た腰の表面を這っていく。
まさか??……と思ったときにはもう遅かった。小動物のような敏捷さで、千春の手がくるり、と輝の尻に回ってくる。思わず腰をよじって逃れようとしたが、遅かった。あっという間にその熱い指は輝の尻肉を押し広げ……的確に……その部分を探り当て、触れた。
「あっ!!……だ、だめだって……そ、そ、そこは……」
「いいから」千春が、抑えた、厳しい口調で言う「続けなさい」
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