終電ガール インテグラル
作:西田三郎
■第一章 『千春』第六話「2回目はただではすまなかった」
『ひえっ……そんな、い、いきなり……』
何よりまず、心の準備が出来ていなかった。頭の整理もついていなかった。
準備や整理ができていれば、素直に受け入れられる、というような類のことではなかったが、少年の手はあまりにせっかちだった。「……ん」
あっという間にスカートの中で少年の指が、太腿の付け根の間に滑り込む。
かあっ、と千春の全身が熱くなった。
そんなことで熱くなるなんてどうかしてる、と思ったそのときには、もうその指は下着の上から千春の入り口を探り当て、前後にそれをなぞるように動き始めていた。もう、いきなり、千春に刺激を与えるつもりらしい。「うっ」
また、電車が揺れて、千春の躰がさらに少年のか細い躰に密着する。
それを合図に、少年の指がぐいっと奥に押し込まれた。
『だ、だめ……だって……』
思わず、少年の肩をつかんだ。
輝と同じく、いやそれ以上に、か細く、小さく、頼りない肩だった。も
ちろんまだ、違和感以上の感覚は感じていない。千春はなんとか……窮屈な車内で少年を自分からなるだけ遠ざけようと、その小さな体を押し返そうとした。
と、今度は少年の左手が千春の腰に巻きついてきて、ぐい、と下半身が押し付けられた。意地でも千春を逃がすつもりはないらしい。
『え……や、や……やだ………』
太腿に……また、違和感を感じた。
千春の紺のスカートと、少年のチェックのスカートの布地越しに、それは確かに息づいていた。
まだ……十分に硬さを得ていない。
『……って……何考えてんだあたし……』
思えば前回は後ろからの攻撃だった。今回はお互いに正面を向き合っている。
右の太腿で徐々にそれが息づいていくのが、実に生々しい感覚で伝わってきた。
『これ、これ……これちょっとどうにかして……』
自分の脚の間で、入り口をなぞる指にも大いに違和感があったが、それよりも今は、太腿の上でますます存在感を増していくその物体に、どうしても意識が集中してしまう。その感覚は、あの秘密の場所で繰り返している、輝との行為を否が応にも意識させた。
いや、こんな場でそんなことを意識してはいけない、いけないと千春が思えば思うほど、太腿で感じている感覚はますます明確なものになっていく。
『……何なのよ……何だってのよコイツ………』
千春はできるだけ顔を背けていたが……どうしても拭い去れない好奇心のせいか、ちらりと横目で初年の表情をうかがってしまった。
相変わらず、伏せられた長い睫毛はそのままだったが、頬はますます赤く染まっている。
視線はやはり斜め下だった。
むしろ少年のほうが、千春と視線を合わせることを恥らっているようだった。
『……待ってよ、………は、恥ずかしいのは……こ、こっちだっての』
思わず舌打ちしたくなった。この時の気分もまた、自分ではよく理解できない。
『……ってかコイツ……あたしのこと、ちゃんと覚えてんのかなあ……それとも今日たまたま、正面に着たから何も考えずに触ってきただけ……?』そんなことはどっちでもいいはずだったが、それでも頭が次々に余計なことを考えはじめる。
考え始めたとたん、いきなり少年の指が……切れ目の先端にある、突起を捉えた。
「あうっ……!」信じられない話だが、躰がびくん、と素直に反応してしまった。
これまでにはこんなことはあり得ないことだった。
輝に語って聞かせる痴漢体験では、よくそんなウソをついた。
たとえば、脂ぎったデブ痴漢のパンツの上からの愛撫に……ほんの、ちょっとだけ……感じてしまった、とか。
でもまさか、そんなバカな妄想どおりの反応が、こんなふうに現実となって襲ってくるなんて。
「……ん、ん、ん、ん……んんんんっ……」
少年がそのポイントの上で、たいへん優しい手つきで指先を振動させはじめた。
全身に汗が噴出してくる。
そういえば、少年の体からも……汗の香りがただよってきた。その見てくれを損なうことのない、ふしぎな甘い香りの汗だった。
これは、ちょっとたまらない。
慌てて千春は少年の耳に口を寄せて、控えめに抗議した。
「……や……やめてよ……大きな声……出すよ………」
少年は耳元で囁かれたせいか、びくっと肩を震わせた。
なに感じてやがんだこのバカ。千春はいまいましげにひたすら背けられたままの少年の横顔を睨み付けたが、下半身では少年のいたずらはすでに新しい段階に入ろうとしていた。
『え、え、え!……それ、だめだって!……お、お願い……ちょ、ちょっと待ってよ!』
慌てて腰を左右に振り、逃れようとしたが、案外強い力で腰を抑えられていたので、思うとおりに動くことはできなかった。
少年の指が、下着の端から……中に侵入してきたのだ。
「……い、い、いやあ……」
ぶるぶると、恐怖と不快感と旋律で、肩が震えた。
少年の指が……ぬめりの中を散策するように動いている。
というか、下着の中がもうぬめりを帯びていたことも、かなり衝撃的なことだった。
「いや……いや……ちょっと……ほんと……マジでダメだから……やめて……」
少年の指によるぬかるみの探索が、どこを探しているかは考えないでもわかった。
こんなことは、輝にさえ許してないことだ。
いや、そんな他者とのかかわりは別として、ここは電車の中で、認めたくはないけど自分はそれなりに亢奮させられている。少年の指がその部分を探り当てれば、一体この状況下で自分がどんな風に反応してしまうか、全く想像がつかなかった。「あうっ!!」
少しだけ、大きな声が出たので、慌てて周囲を見回し、なんとか顔の位置まで引っ張り上げた右手で、口元を覆った。いまだ、顔を背けたままの少年の表情は伺えない。
「……お願い……お願いだから……ね……ね、や……やめて……」
少年の耳たぶまで赤くなった耳元で囁く。
しかし少年は千春を許してはくれなかった。
しっかりとその突起に添えられた指が……ゆっくりと円を描くように回りはじめた。
「く、く、くううううっ……んっ………」
声が出そうになったので、仕方なく拳を噛んだ。
「……だ、だ、だめ………だって………いや……やめて………」
しかし次から次へと溢れてくる粘液をそこに塗り広げるような少年の指は、一向に止まる気配を見せない。
気がつけば千春は、自分の太腿で少年のむき出しのふとももをしっかりと挟みこんでいた。
そうでもしないと、立っていられなかった。全身の皮膚の下を、稲妻が駆け巡っているような気分だった……このまま続けられると……いやまさか……そんなことはあり得ない、と心で打消しはするが、どこかにそんな未知の冒険に踏み出してしまいたい気分がうずまいている。その未知への冒険は、以外なことからもたらされた。
「………?」
いきなり少年が、千春の口元でマウスピースの役割を果たしていた彼女の右手首を掴んだのだ。
……そのまま少年が……それほど強引にではなく……千春の手を下へ、下へと導いていく。千春はなぜか、大人しくされるままにしていた。
「……ええっ???」
驚くいとまもなく、千春の右手は少年のスカートの中に、当然のように導き入れれた。何をさせられるのか、気付いたときには遅かった。
少年は下着をつけておらず、スカートの中ではむき出しの肉の塊が息づいていた。
あっという間に、その物体を握らされ、その上からしっかりと手を固定される。『………ひ、ひ、……ひええ………』
頭がくらくらする。千春の目の前で、確かに火花が散った。「………お願い……さわって……」声変わり前のか細い声で、少年が囁いた。
NEXT/BACK TOP