P.T.A 作:西田三郎 「第6話」 ■SISTER & BROTHER
家に着いた時にはスニーカーの中まで水が侵入しており、理恵はまず玄関先で靴下を脱いだ。
家の中は静まり返っていて、明かりも点いていない。
食卓のテーブルを見ると、母の残した書き置きが目に付いた。
「PTAの寄り合いで遅くなりそうです。カレーとサラダが冷蔵庫に入っています」
理恵はその書き置きをひっつかむと、そのまま丸めてゴミ箱に投げ捨てた。
「PTA…PTAねえ」独り言を言いながら2階の自室に向かう。
湿った空気が家中に立ちこめている。制服の下の肌は全体的にじっとり汗をかいていた。一刻も早くシャワーを浴びて、とりあえず身体だけでもさっぱりしたかった。
自室のドアを開けると、ベッドに功が腰掛けていた。
傘もささずに帰ってきたのか、全身がぐしょ濡れである。
功は黄色い封筒を手に握りしめ、怖い顔で理恵を睨んでいた。
「何なのよ…ちょっと、そんなに濡れたズボンであたしのベッドに座らないでくれる?」
功は無言で理恵を睨み続けた。封筒の中から、2枚の写真を取り出し、理恵に差し出した。
理恵は受け取った写真を見た。一枚はあの学校の体育倉庫の写真。枝松と理恵が手を繋いで体育倉庫に入っていくところを望遠でとらえたものだった。
「…それで?」理恵は言った。「何なのよ、これ」
「もう一枚も、見てみ…」功が枯れた声で呟く。
もう一枚、それはモーテルの駐車場。車に乗り込もうとしている枝松と、少し離れたところに立っている母の奈緒美の姿を、同じく望遠でとらえたものだった。
「知ってた?枝松と母さんがそんなことになってること」と功。
「…」理恵は黙って写真を見ていた。
「知らなかったろ?」
「…別に、どうでもいいけど」理恵は写真をひらりと床に投げ捨てた。「誰だって、秘密はあるでしょ」
「…枝松のこと、好きなの?」功はベッドから立ち上がって言った。理恵は動かない。
「あんたよりって事?…さあ、どうだろ」
理恵が功から目を離した瞬間、功が飛びかかってきた。
理恵の両肩を掴んでそのままベッドまで引き寄せる。すごい力だった。
「きゃっ!」理恵は思わず声を上げた「やめてよ!」
まだまだ功を子どもだと思って理恵だったが、いつのまにか功には年齢に伴った体力が備わっていたらしい。
理恵はそのままベッドの上に投げ出された。その上に功が覆い被さってくる。両肩に全体重を掛けられて、理恵は全く動けなくなった。
「おれと、姉ちゃんのことも、アイツに喋ったのかよ!!」息が掛かりそうな距離まで、功の顔が近づいていた。「喋ったのかよ!どうなんだよ!!」
功に両肩を押さえられながら、理恵はあざ笑うような視線で功を見上げた。
「あのねえ…」理恵の口の右端がうっすらと上がった。「…この町には誰にも秘密なんかないのよ」
「え…」功の顔から、潮が引くように怒りが消えていく。
「みんな、秘密があるし、みんな、他人の秘密を知りたがってる。退屈な町でしょ?人の秘密を詮索する以外に、この町になんか楽しいことある?」
「…どういうことだよ」理恵の両肩に掛けられた功の力がどんどんか弱くなっていく。
「あたしが、枝松にしゃべったんじゃないわよ。あたしが、枝松に聞かれたの。“君、弟とエッチしてるんだろ”って」
「…なんで、枝松がそんなこと知ってるんだよ…なんで」
「…さあ、知らない。誰かに聞いたんでしょ。噂話で」
「…そんな…」
「…みんな、知ってんのよ。あたしとあんたのことも、あたしと枝松のことも、母さんと、枝松のことも。実際に何があったかは知らなくても、何かありそうだってことはみんな知ってんのよ。あんたは子どもだからまだわかんないだけ」
功の顔色はだんだん青ざめていった。理恵の肩に掛ける力がまた強くなる。
「畜生…畜生…」功は低い声で誰に言うともなくそうつぶやいていた。
「…というわけで、離してよ」理恵はそう言って鼻で嗤ってみせた。
「畜生!」
功は懇親の力で理恵のブラウスの襟首を掴むと、思い切り左右に開いた。ボタンが弾け飛び、フリーリングの床にパラパラと音を立てた。
「やっ!」理恵は自分の胸を庇う。と、功の手がスカートのホックを外し、引きずり下ろした。
功の湿った身体が覆い被さってきた。理恵はそれを押し返そうとしたが、あっという間に両手首を片手でまとめられ、頭の上に押さえつけられてしまった。
「…何したんだよ…枝松と、何したんだよ…」荒い息とともに功が言う。
「…」理恵は黙って功から顔を背けた。
と、その首筋に功が吸い付いてきた。
「んんっ…」理恵の全身が緊張する。「…や…」
音を立てて理恵の首筋を舐めながら、理恵の両手首を押さえつけていない功の左手が、ブラジャーをたくし上げてきた。かすかな膨らみの頂点にある乳頭を功が強引にひねり上げる。
「くうっ!」傷みから、理恵は思わず声を出した。
しかし功の手はそのまま理恵の薄い腹をなで、下半身に向かった。
「いやっ!」腰をひねって逃れようとしたが、功の手は容赦なく下着に侵入してきた。
「…こんなことされてんのかよ…枝松にも、こんなことされてんのかよ…」譫言のように功が呟く。
「…やめなよ…こんなの…んっ!」功の指が陰毛をかき分けてさらに奥に進み、まだ潤っていない核心に触れた。傷みが走った「やだっ…痛いっ」
「…枝松ともしてんだろう?こんなこと、枝松ともしてんだろう?」
少し潤いを帯びた肉の裂け目に功の指が侵入し、その潤いをすくい取った指で、核心が捏ねられる。
「んっ…くっ…んんっ…」全身に鳥肌が立った。腰が左右にうねった。
また、あの感じが蘇ってくる。枝松に身体を玩具にされているときと同じ、甘い罪悪の感覚。
実の弟にこんなことをされて、それに反応している自分。いつも通りだ。
理恵の中で何か熱いものが膨れ上がり、理性を押し上げていく。
「んっ…あっ…」固くこわばっていた自分の躰が、ゆっくりと弛緩していくのを理恵は感じた。
「…どうなんだよ…枝松に、こんなことされてんのかよ…」同じ質問を繰り返す功。
「……そうよ…」熱を帯びた目で、理恵は功を見上げた。「…いつも、こんなことされてんのよ、あの汚いオヤジに…もっと…すごいこともされてるけど…教えてあげよっか?」
「……畜生!」
功が理恵の両手首を解放した。と、一気に理恵のパンティが足首まで下げられた。
「あっ…!!」
功の顔が、理恵の股間に埋まる。舌先が的確に理恵の中心を狙ってきた。
「んんあっ…!!」理恵は思わず全身を海老ぞりに反らせた。「…だめ…」
功の舌が縦横無尽に理恵を責め立てる。理恵は何度も背を反らせ、横顔をベッドに埋め、太股で功の顔を締め付け、シーツを強く握りしめた。
やがて、功が理恵の股間から口を話す。理恵が見下ろすと、熱ぽい目で理恵を睨む功の顔が見えた。唇からは理恵の核心の場所から伸びた蜜が、糸を引いている。
「…こんなこと…してんのかよ…あの、枝松と…」功が言った。
「…そうよ」理恵は掠れた声で答える。「…じゃあ、あたしが枝松に、どんなことをしてるか知りたい?」
「…?」
突然、理恵が起きあがり、今度は功を床に押し倒した。
「ちょっと…やめろよ!」慌てて功が理恵を押し返そうとする。
「何言ってんのよ、こんなにして」理恵の手がはちきれんばかりに熱くなっている功の肉棒をズボンの上から捉えた。「興奮する?…あたしと、枝松がヤらしいことしてるとこ想像すると興奮する?」
「ちょっと…やめ…」
理恵は功のズボンのベルトを外すと、一気にチャックを下ろした。
「ほーら…」功のズボンの中に手を入れると、激しくブリーフを持ち上げる陰茎の固さと、その先端の湿りを感じた。「なんだ、べとべとになってんじゃん」
「やめ…あっ!」
理恵はブリーフと学生ズボンを一気に引きずり下ろした。功の激しく隆起した陰茎が、腹を打つように弾かれる。さらに、理恵は功のシャツの襟首を掴むと、先ほど自分がされたように左右に大きく開いた。ボタンがはじけ飛ぶ。ほとんど全裸に向かれた功の身体が床の上でくねる。
「…あっ…あうっ…」
いつものように、丹念に両方の乳首を責めてやる。功はか細い声を出して鳴き始めた。ピクン、ピクンと反応してくねる功の身体を見ながら、理恵は功の肉棒の先端に指を触れた。
「…どうしたのよ…いつもよりなんか、すごいじゃん」理恵はそう言いながら、先端に溢れた先走りの液をゆっくりと陰茎全体に塗り広げた。「枝松とあたしのエッチ、想像すると興奮する?」
「…」今度は功が顔を背ける版だった。
「…枝松にしてる、同じことしてあげる…」
「…やめ…あっ!」理恵は功を立たせ、そのまま壁に背を押しつけた。
「ホラ、いつも、こうやってしてんだよ、あたし」
理恵は壁を背に呆然と立ちつくしている功の前にしゃがみ込み、陰茎を扱き上げた。功自身が分泌した液でネチャネチャといやらしい音がした。功が腰をゆっくりと左右に振る。その腰を両手で押さえつけると、口に陰茎を根元まで含んだ。
「…んんっ!!」功が身体を反らせて腰を突き出す。理恵は後ろに伸ばした手で功の尻肉を掴んだ。枝松のボコボコとした固い尻とは違う、柔らかい肉だった。
舌を使う。理恵は出来る限り、頭の中であの薄暗い体育倉庫を思い浮かべた。陰茎の側面に舌を這わせ、先端を擽り、残った手で縮みあがった陰嚢をこね上げる。功の柔らかい陰毛が理恵の唇をなぜた。枝松とはまるで違う。しかし、出来る限りの想像力を動員して、頭の中で功の姿を枝松と置き換え、責め立てた。
「………ぅぅうっ」逃げるように功の尻が壁を這い上がる。
そのチャンスを逃さず、理恵は尻に回した指で功の肛門に触れた。
「………っはあっ!!」
功が理恵の口の中で激しく射精する。いつもより量が多く、熱く、濃いような気がした。理恵は一滴残らず、それを飲み下した。
やはり違う。味も、のど越しも、枝松のものとは。
「…………ああ…」壁を背にして立っていた功がそのままへなへなと床に崩れ落ちる。
しゃがんでいた理恵と同じ高さまで功の目線が落ちたとき、理恵は口を拭いながら、言った。
「…枝松とも、これ以上のことはしてないから安心しな」
「…」敗北を認めるように功は理恵から目を反らせた。
理恵は立ち上がって功に背を向けた。
「…で、あの写真、どうしたの?ひょっとして、アンタが撮ったの?」
「…違う」肩で息をしながら、功が答える。
「じゃあ、誰が?」
「いつの間にか、あの黄色い封筒が鞄の中に入ってた。午前中に学校で気が付いた。…誰が入れたんだろ…」
「ふーん…」理恵はまり関心を引かれなかったが、そのまま功に脱がされたパンティに脚を通した。
功は床にへたり込んだまま、こちらに尻を向けてパンティを履く姉の姿を見ていた。
枝松の言ったとおりだ。今まで気づかなかったが、姉の左の尻には、小さな黒子がある。
<つづく>NEXT/BACK TOP