大人はよくしてくれない

作:西田三郎



■第七章 ビニールシートの理由

 すでにぐったりとしているちあきから、イソヤマはTシャツさえ剥いでしまった。
  真っ白で痩せたちあきの身体が、ビニールの上でまだΩの姿勢を保っている。
  その景色も辛かったが、ずっとこっちを見ているちあきの視線のほうが、悠也には辛かった。
  ちあきは泣きはらした目で、悠也を見ている……ずっと無言で。悠也は自分を呪った。今、何もできないことよりももっと、その情景を見て反応しいる自分の下半身の節操のなさがもっと呪わしかった。
  今ではその部分は、ズキン、ズキンと甘い痛みを伴ってうずいている。
 
  「……ほれ、ちあきちゃん、おっきや」
  「………」イソヤマに抱き起こされるちあきの上半身。
 
  かすかな膨らみの兆しを見せている、ちあきの胸が見えた。
  痛々しい膨らみだった。その先端は、赤く尖っている。
 
  「……ほれ、あーんして……」ちあきの顎を掴むイソヤマ。
  「いやっ!!!」ちあきが顔を背けようとする。しっかり口を閉じて。
  ……しかし、そんな抵抗が許されるはずがない。イソヤマはちあきの顔に自分の陰茎の先を突きつけ、口を一文字に閉じて抵抗するちあきの鼻を摘んだ。……沈黙……悠也には長い時間のように感じられた……しかしやがて時がきて、ちあきの息が切れる。
  「ぷはっ………んっ………うぐっ………」

 ちあきの唇の中に、イソヤマの陰茎がねじ込まれていく。ちあきの小さな唇と顎のせいで、イソヤマの陰茎はとても巨大なものに見えた。それはあっというまに奥まで押し込まれ、やがて、ちあきの鼻がわさわさと茂っているイソヤマの陰毛に隠れた。
  「……ほれ、ちゃんと教えたやろ……お口と舌使うて……おっちゃんを気持ちようさせてみ……できるやろ?……おっちゃんが一から、教えたったやろ……?」
 
  イソヤマの陰茎を根元まで含み、陰毛に鼻をうずめながら、一瞬、ちあきが横目で、横たわっている悠也の視線を捉えた。凍てつくような冷たい視線だった……その後、上目遣いにイソヤマを見ると……しっかりと目を閉じる。剛毛に覆われた象のような太腿にしなだれかかったまま、ちあきの上半身がゆっくりとくねりだした……首を動かし、口を動かす、そして陰茎の上で唇を……前後に滑らし始める。

 「……おっ……ちあきちゃん……ええやんかぁ……ええわあぁ……調子出てきたやないか……」

 目を閉じ、イソヤマの醜悪な出来物のような陰膿に手を沿え、ゆっくりと動くちあき。
  ゆうべと同じだ……と悠也は思った……ゆうべまで知らなかったちあきが、今、正体不明の隣人であり最低最悪の男の陰茎を……ゆうべ、自分にしたように同じく丹念に、丁寧に、愛おしそうに刺激している。当然、それを見ている悠也の下半身では、昨夜ちあきの舌が与えてくれた感覚が、正確に再生される。さも気持ちよさそうに、徹底的にその感覚を味わおうと、目からも刺激を吸い取ろうと、かっと見開いた目でちあきの媚態を凝視しているイソヤマが感じているはずの感覚が、空気を通して悠也の脳にも伝わってくる。
  もう悠也の陰茎も爆発しそうなくらい激しく昂ぶり、その先端は下着を濡らしていた。

 ちあきは頑張った……恐ろしく長い時間、イソヤマの陰茎への刺激を続けた。
 
  「よっしゃ……ちあきちゃん、もうええわ」

 そう言ってイソヤマがちあきの頭を抑えて自らの陰茎から引き離したときも……ちあきは名残り惜しそうにその先端に2回ちゅっ、ちゅっ、とキスさえしてみせた。そして……ニヤついて見下ろすイソヤマの腹の下で……その後ちあきは、一度もイソヤマにも目を合わせずに身体をひねり、何の指示も受けずにまたうつ伏せになり、尻をくにゃり……と高く上げて見せた。あの『Ω猫のポーズ』に戻ったわけだ。そういう無言の了解事項が、この二人にはある……オートマチックに物事が進むさまを見て、悠也はそう思った。

  「……ちあきちゃん、お赤飯はまだやな?」
  「…………」ちあきは尻を突き出したまま、イソヤマの方を振り返りも答えもしなかった。
 長い髪に覆われて、悠也からは表情は伺えない。
  「………ほな、今日も中でええな」

 イソヤマがちあきの後ろに跪くと、右手をちあきの尻に、左手を自らの陰茎に添える。
  部屋が一瞬、しんとした。
  悠也の隣で寝ている卓郎の寝息だけが聞こえてくる。
  不意に、ちあきが声を上げた。

 「ふあっ……」
  悠也は目を見開いてしっかりと見た。ちあきの小さな尻に、イソヤマの陰茎がゆっくりと飲み込まれていくのを。逃げようとするちあきの尻を、イソヤマの手がしっかりと掴む。そして、そのままぐいぐいと押し込む。
  「あっあっあっ………うっ………んっ………ぐうっ………」
  ちあきが髪を振り立てる。イソヤマは容赦しなかった。そして、ずん、と腰を前に突き出す。
  「………ぅっ…………くあぁっ!!!」ちあきがビニールの床に手をついて、上半身を起こした。
  薄っぺらい白く小さな肢体が、まるでジェットコースターのようなアーチを描く。と、イソヤマが腰を引いた。
  「はあっ……」くにゃっ、と床につっぱっていたちあきの手がビニールの上を滑って、上半身が床に投げ出される。その尻を捉えて、イソヤマがまた深く突く。またちあきの身体が弓なりに反る。

 ……繰り返し繰り返し、その共同運動は続けられた。

  そのスパンがだんだん短くなる……やがてイソヤマはちあきの腰を逃さないようになり、しっかりとちあきの細い腰を捕まえたまま、何か恨みでもあるかのように激しく自分のたるんだ腰を打ち付けていく。巨大な腹と太腿が、ちあきの小さな腰と太腿にパチン、パチンと音を立ててぶつかる。ちあきはほとんど泣き声のような声をあげて長い髪を振りたてていた。イソヤマはトレーナーを汗でぐっしょり濡らせて腰を振っている。
  床のビニールの上には、二人の間から溢れたなんらかの液が雫となって降り注いだ。
  長かった、あまりにも長かった。まるで永遠に続くかのようだった。

  「お、おね、おねがい、お、おっちゃん、あかん、う、うち、うち、もう、あかん……」ちあきが泣く。
  「なにがあかんのんや?なにがあかんのんや?」
  「あっ……あかんねん……もう、あかんねんっ……あかんっっ」
  「おっちゃんも……おっちゃんそろそろや……あっおっおおおうっ………おおおっっ!!

  イソヤマが上半身を仰け反らせる……そしてぶるぶると、醜い肉をたわませて震える。
  ちあきは尻を高くあげて……何かを受け入れていた。

  「あ……はあ………」ひくっ、ひくっとイソヤマの顫動にあわせて、ちあきの肩が引きつる。

 いきなり、ずぼり、とイソヤマがちあきから陰茎を引き抜いた。白濁した液に濡れた陰茎が、まだビクン、ビクンと弾んでいた。しかしイソヤマはちあきが倒れこむのを許さずに、その腰を掴んで離さない。そして、指を2本……中指と薬指……さっきまで自分の陰茎が納まっていたその部分に突き立て、激しく動かし始めた。

 「あああっっっ!!!あかんっ!!それあかんっっ!!!!」

 ちあきが慌てたような声を出して懇願したが、イソヤマは聞く耳を持たなかった。
  はげしく指を動かすイソヤマ。
  ちあきのその部分から何かが噴き出し、ビニールの床にポタポタと滴った。ちあきの尻が極限まで緊張するのを見計らったように……イソヤマが指を引き抜く……ざあ、という音を立てて大量の液体がビニールの上にこぼれ落ちた。
  それと同時に イソヤマがちあきの中に放った、大量の精液もそれに絡みついて床に飛び散る。
 

  ……そうか……ビニールシートはこのために敷かれていたんだな、と悠也は思った。



 


 

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