ノルウェイの鮭
作:西田三郎「第13話」 ■アフターダーク
「暗く、してくださいね」緑はそう言いながら、ブラウスのボタンを外しはじめた。
「……いや、あかんって、いくらなんでも、そりゃマズいわ」僕はさらにボタンを外そうとするみどりの手を制した「そんなん、おれ、変態やん。犯罪者になってまうやん」
「安心してください、これっきりですし、誰にも言いませんから」
「……そんなん言うたかて……おうっ……」みどりの手が、僕のズボン前に押しあてられた「……ちょっと、待ちいな……あっ」
「とかなんとか言って、なんか、すごく固くなってますけど」みどりはさらにズボン前を怪しからん淫靡な手つきでなで上げる「わたしと、したくないんですか。へんなこと」
「……でも……そりゃいくらなんでも……あっ!おい!」
緑が僕の前にしゃがみ込み、ズボンのジッパーを降ろした。緑はブラウスの前をはだけている……スポーツブラらしいものが見えるが、乳房らしいものは見あたらなかった。当たり前だ。彼女はまだ11歳なのだ。しかしその11歳の少女が今、まさに、僕の肉棒を引きずり出し、あの、その、いわゆるフェラチオをしようとしている。一体どうなってんだ?僕は何か悪い夢でも見ているのか。それとも僕までおかしくなってしまったのか?
緑が、僕の肉棒を頬張った。11歳のやわらかく、暖かい粘膜が、先端を包み込む……緑がゆっくりと舌を使いはじめる。見下ろすと、目を閉じた緑が僕の陰茎を銜えているのが見えた。ほんのり赤く染まった頬に、僕の亀頭の形が浮き出ている。上手い。なんだか知らんが、めちゃくちゃに上手かった。
「……ど、ど、どこでこんなこと覚えたの?」
「……7つのときから……」緑が口から陰茎を話す…唾液が肉棒の先端と緑の唇の間に糸を引いた「いやらしいことばっかり考えてますから」
「……で、でも」
「……お願いがあります」緑が上目遣いに僕を見た。その目はミドリそっくりだった「暗くしてくだい。電気、消して下さい」
「……恥ずかしいの?」
「当たり前です」緑は言った……そしてもう一度、僕を見上げた「それと……わたしを、みどりさんだと思って、同じことをしてください」
「………」僕は大人しく電気を消した。月の無い晩で、部屋は真っ暗になった。
緑が服を脱ぐ音がする……僕はズボンのがま口からいきり立った肉棒を突き出したまま、突っ立って待っていた。余計なことを考えないように努めた……僕のこれまでの人生信条どおり、すべてを流れに任せるのだ。
「……全部、脱ぎました」緑が小さな声で言う「へんなこと、してください」
「ふつうに、するわ」僕は言った「みどりも、“ふつうにして”って言うてたし」
「何がふつうなのかよくわかりませんけれど、じゃあふつうにしてください」
暗さに目が慣れてきて……痛々しいまでにか細くて真っ白な緑の裸身が布団の上に横たわっているのが見えてきた。緑はしっかりと目を閉じている。ほんの少しだけ、陰毛の兆しが見られた。まったく、何ということだ。
緑の耳の穴に舌を入れた。あの日、みどりにしたことをしっかり思い出しながら。
「あっ……」緑が小さな声を上げる。多分、くすぐっったいだけだろうけど……僕はそのまま、首筋に舌を這わせた。緑の躰がびくん、と跳ね、ますます固くなる。
「……気持ちいい?」
「……ていうか、くすぐったいです」その素直さに、天井知らずに亢奮させられた。
「あっ……えっ……」緑の両手を上に上げさせ、ひとまとめにして頭の上で押さえつける「こっ……こんなこと、するんですか」
「嫌?」
「……い……いえ、なんか、ちょっと、亢奮します」
緑のまったく膨らみのない乳房の頂点にある、乳頭に吸い付いた。
「やんっ……!」
「ほら、こうして舐めると……だんだんここが固くなるんやで」舌で転がしながら言う……ほんものの変質者になった気分だった「……ほら、くすぐったいだけや、無くなってきたやろ」
「……ん……」左右のの乳頭を交互に舐めた……11歳の淫売、緑は早くもそこに快楽の糸口を見つけたらしく……次第にそのしなやかな肢体をのけぞらせていく。
「……いやらしいね、緑ちゃん」
「……だって……あっ!!」
下半身に移動して、緑の膝頭を掴み、左右に開いた。暗くてよく見えないのが残念だ。
「……えっ……そんな……なに……なにするんですか」
「……みどりにしたのと同じことや」
そのまま、緑の細い太股の間に顔を突っ込んで、火傷しそうなくらい熱くなっている緑の入口に、軽くキスをした。さすがに緑は狼狽した。
「……そんなっ……そんなの、ダメですよ……汚いですよ……お風呂にも入ってないし……」
「……みどりにも同じことをいしたんやで」僕は息づく緑の入口の前で笹やいた「……オナニーでは、こんなことされるとこ、想像せえへんかった?」
「………し………しましたけど………」
「……どや、実際にせれてみて………」
「す……すごく……」僕はさらに致命的なポイントを激しく舌で捏ねた「………すっ……すごく、へんな感じ……」
自分でも酷いとは思うが……めちゃくちゃに舌を使って緑を責め立てた。意地悪だとは思いながら……緑がいきそうになると舌を止めた。ああ、そうさ。僕は人間の屑だ。寂しさだけでやってきた、心の病を抱えた11歳のいたいけな少女を、酒でべろべろに酔わせて、その躰を玩具にしている。中途半端なイヤな奴ではなく、本物の悪人になった気がした。それはそれで、いい気分だった。
やがて、僕はひくついて溢れかえっている緑の幼い裂け目から、口を離して言った。
「……ほら、好きな格好になってみ」
「……え?何ですか?」不安げな声で、みどりが聞く。
「……いつもオナニーするとき、どんな格好でされるのをを想像してしてたんや?その通りの格好でやったるわ」
「……そんな……恥ずかしいです」
「……ほら……こんなんか?」
緑の羽布団のように軽い躰を裏返し、固い尻だけを高く持ち上げる。
「……え……これって」みどりが枕に顔を埋めて言う「あの……“後背位”っていうやつですか?」
「ぴんぽん」僕はまたも……調子に乗りすぎていた「……ほら、こんなふうにされるの、想像してた?」
「………」みどりは枕にさらに顔を深く埋めて顔を隠した「……しました……いつも……」少々不安を感じながら、緑の入り口にまるで鉄パイプくらい固くなっている肉棒の先端を押しあてた。びくんっ、と緑の躰が波立つ。
「……や……やさしく……」緑が枕に顔を押しつけたまま言う「やさしくして……くださいね」
やさしくした。やさしくしか、仕様がなかった。信じられないくらい、緑の中は狭かった。みどりや、ミドリよりも。肉棒が根元から抜けてしまうのではないかと思うほど、強く食いつかれた。これぞ、一生忘れられないセックスになるだろう。出来れば緑にも、覚えていて欲しかった。彼女が娑婆に出て、二十歳くらいになって、ちゃんとしたボーイフレンドを作り、その彼とセックスするときに、ふと、一瞬だけでいいから、僕のことを思いだして欲しかった。何も一生の思い出にしてくれなんて傲慢なことは思わない。それだけでいいのだ。
あっという間に限界が来て……僕は緑の背中に強かに射精した。我ながら、最低である。
「……はあ……」
意外なことがあった。
「……初めてじゃ、なかったんやね」
「詳しくは、聞かないで下さい」緑は言った。
それから二人で風呂に入って、深夜番組を観ながら眠るまでの時間を過ごした。
このまま朝が来なければいいのに、と、子どもっぽいことを思った。NEXT/BACK TOP