今晩中にできる女 作:西田三郎 ■トラベリング
タクシーには、後ろの席に3人で座った。あたしが真ん中で、あたしの左に倉本さん。右にバタやん。倉本さんは小柄で、あたしもちびだけど、バタやんはとても太っていたので、あたしは左右に二人それぞれの体温を感じていた。運転手さんは白髪のおじいさんで、倉本さんが近くのホテル街へ行ってくれ、というと「はい」と答えただけで後はなにも言わなかった。
しばらく雑談していた。あたしたちはちょっとお酒が入っているので、少し陽気だった。
あたしがさっき部屋で観ていたドラマのことを話していると、話の流れとは全く関係なしに、バタやんが言った。
「ほんとに、おっぱい大きいねえ」
「え?」
「触ってもいい?」あたしが返事する前に、バタやんの手があたしの右胸を掴んだ。
「あっ」あたしはびっくりして声を出した。「…ちょっと」
バタやんの指がゆっくりと動いて、あたしの胸を揉みはじめた。助けを求めるみたいに倉本さんの方を見ると、倉本さんはあたしの胸がバタやんに揉まれるのを見てニヤニヤしていた。
「こらこらバタやん、なんてことすんだ」倉本さんは笑いながら言った。「じゃあおれも」
「んっ」倉本さんがあたしの左胸を掴んだ。倉本さんもあたしの胸を揉みはじめた。
運転手さんは、あたしたち3人がなにをしているか、全然気づいていない様子だった。あたしは抵抗したり声を出したりしたら運転手さんにばれるし、ばれると恥ずかしいので黙って左右から胸を揉まれながら、俯いていた。しばらくバタやんも、倉本さんも無言であたしの胸を揉み続けた。
バタやんははじめゆっくり、やさしく揉み始めたけど、だんだんその手つきが乱暴になった。掴むようにして胸を引っ張ったり、手のひらでぐりぐりと押さえつけたりした。少し痛かった。
倉本さんは最初冗談みたいにくすぐるように揉んでいたけど、揉んでいるうちに本気になったのか、いつの間にかとてもいやらしい揉み方になっていた。おっぱいをすくい上げるように持ち上げたり、揺らしたり、乳首のあたりをいじったりした。
あたしは前に倉本さんにおっぱいを触られたときのことを思い出した。
馬鹿みたいだけど、そんなことを思い出すといやらしい気分になった。なんだか鼻息が荒くなって、顔が火照ってきた。
「…感じてきた?」倉本さんが、左耳に囁いた。あたしはびくっとした。
「…ていうか…」あたしが口ごもっていると、バタやんが右に顔を近づけてきた。
「気持ちいい?」バタやんがあたしの右耳に囁く。
「…あの…ちょっと…」
「…乳首立ってるよ」倉本さんがまた左耳に囁いた。
「張りのあるおっぱいだねえ…」続けてバタやんが右耳に囁く。
倉本さんは優しく、バタやんは乱暴にそれぞれあたしの左右のおっぱいを揉む。そして、それぞれがあたしの両耳にいやらしいことを次々と囁いた。さっき飲んだビールのせいか、あたしは頭がくらくらしてきた。運転手さんはそれでも全く気づいていないみたいだったけど、恥ずかしくて顔から火が出そうだった。鼻息がますます荒くなって、あたしはさらに俯いた。
「やっぱ…気持ちいいんだ…」倉本さんにそう言われた。さらに固くなった乳首をつままれた。
「やんっ…」
「なんか、エッチそうな顔してるもんねえ」バタやんがそう言って右の乳首をつまんだ。
「…やめ…て…ください」あたしはすごーく小さな声で言った。運転手さんに聞こえたら恥ずかしいからだ。
「…なんで?いいじゃない。なんか、すっごく気持ちよさそうだし」と、倉本さん。
「…そんな…」
「…こっちは、どうなってんのかな…?」バタやんは胸を揉んでいない左手を、あたしのジーンズの前に延ばした。
「…やっ!」思わず、ちょっと大きな声が出た。バタやんがあたしのジーンズのチャックを降ろそうとしたからだ。運転手さんに聞かれただろうか?「…ダメですって」
あたしはバタやんの手を制した。すると今度は倉本さんが左から手を伸ばして、バタやんと同じようにジーンズのチャックを降ろそうとする。それを制していると、今度はバタやんが右側からシャツの下から手を入れようとしてきた。大騒ぎになって、一瞬バックミラーで運転手さんと目が合った。でも運転手さんはあたしを睨むでもなく、びっくりするでもなく、そのまま目を逸らせた。
バタやんがジーンズのチャックを降ろし、あたしが上げる。あたしが上げると、倉本さんが下げる。そんなことを繰り返しているうちに、タクシーはホテル街に着いた。
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