ほんとうにお願いします 作:西田三郎 ■前戯
おれは河底さんの両脇に手を入れて、河底さんを立たせた。まだセーターの裾が、大きな乳房の上で引っかかっている。河底さんは抵抗無く立ち、おれは河底さんのジーンズの前ボタンに手を掛けた。そこではじめて河底さんがおれの手を制した。
「ちょっと…ちょっと、ここで、すんの?」
「いけませんか」おれはちょっと苛ついて言った。おれは今、最高潮に勃起しているのである。一刻も早くそれを、納めるべきところに納めたいのだ。「しましょう、ここで」
おれは河底さんの前ボタンを外し、ジッパーを引き下ろした。また河底さんがそれを制する。
「お願い…お願いやから、ベッドでしよ、な?」
「ここでいいっすよ」あんな尻の動かしかたしておいて、あんなフェラチオをしておいて今更何言ってやがる!おれは心の中で叫んでいた。おまえみたいな淫売はこの板間で全裸に向いて、四つんばいにして、後ろからぶち混まれるのが一番だ。それを何?ベッドでヤッて欲しいだと?何を気取ってやがる?
「だめ…あかん。ここじゃ、いや」河底さんがそう言っておれの両手を制した。また熱っぽい半開きの目でおれを見る。「お願い、ベッドで、しよ」
「…わかりました」しぶぶしぶおれは了承した。段取りが大きく狂った気もしたが、それはそれでまあおれの勝手だろう。それにベッドに移動してくれというそっちの要求を飲んだわけだ。ベッドではさぞいい仕事が期待できるんだろうな?
おれたちはベッドに移動した。河底さんがベッドに仰向けに横になった。
おれが河底さんを見下ろす。セーターをたくし上げられ、露出した胸は、仰向けになってもしっかりと天井を向き、両方の乳頭は固いままだった。その下に続く白い躰。胴は少し長く、腰のくびれが強調されている。中央にあるへそは縦型で、可愛らしくまとまっていた。腹は引き締まっているわけではないが、適度に薄く脂肪がついていた。すべてにおいて柔らかく、芳醇そうな肉体だった。
おれに開かれたジーンズの前から覗くローライズ用の黒いパンツ。おれはしばらくその全身から目が離せなくなった。
河底さんはおれに凝視されていることに気づき、顔を背けて躰をねじった。
「もう…あんまり見んといてえな。恥ずかしいから」
「…たまりませんわ」
おれは河底さんの足下に腰を下ろすと、ジーンズを脱がせに掛かった。
「…ちょっと、頼むし、電気、消して」
「…あきません」
身を起こして抵抗しようとする河底さんをまたベッドに引き倒すと、おれは皮を剥ぐみたいにジーンズを脚から引き抜いた。柔らかく、白い太股がむき出しになった。
「あかんて…なあ…電気消してよ…」
ベッドの上でヤッてやろうってだけでも有り難いと思えこの売女!
おれは全く耳を貸さず、河底さんの黒いパンツに手をかけた。
「…やっ」
下ろされまいとする河底さんの手より一瞬早く、おれの手がパンツを足首まで引き下ろした。
「いやあ…」
おれの目の前のベッドの上に、首の下にセーターをつけただけの全裸の女が横たわっている。肌はどこも一様に真っ白で、しみひとつ見られない。ゆるやかな丘陵を描く腹部の裾に、少し濃いめの恥毛。河底さんはおれの視線を全身に感じて、身もだえていた。目を固く閉じ、眉間にしわを寄せ、白い太股をすりあわせると、おれの視線から逃れるためか、腰をよじって恥毛を隠そうとした。
「きれいですね…」おれは言った。「ほんとうに」
「あほ…」河底さんがそう言って自分の人差し指を噛んだ。
その仕草をみて、おれの全身がビクンと脈打った。
おれはベッドに上がると、横にひねっている腰を正面に向かせ、両膝がしらを立たせると両手で左右に大きく開いた。
「いやっ…!」河底さんが慌てて身を起こそうとする。それより早く、おれは河底さんの股間に顔を埋めた。「…あかん…て」
おれはすばやく湿原に口をつけた。河底さんの陰唇は、すでに蜜で溢れかえっており、おれは溢れでるそれをすくい取るように舌を使った。
「…いっ…やっ…」河底さんが起こしかけていた半身を倒し、背を仰け反らせた。「…やっ…あかん、あかんて…くうっ…」
「さっきのお返しですよ」一瞬口を離して、おれが言った。「もうびちょびちょじゃないですか」
「あほ…エロ親父か…あんた…んっ!」
おれの舌が、的確に陰核を捉えたのだ。
「やあっ…やめっ…あかん…あかんって…んんっ!」
おれは舌先で集中的に陰核をくすぐり、転がし、吸い上げた。みるみる蜜が溢れてきて、おれの顎を垂れた。河底さんはさらに反り返り、ブリッジをしているような姿勢になった。必死で声を堪えていたが、もはや耐えきれず高い声で啼いた。
「あっ…ああっ…あっ…うんっ…ああっ…ああ…」
本当に好き者だなこの女は。おれはそう思いながら舌を思うように動かした。
思ったより子供っぽいその嬌声を聞いているうちに、おれの方ももう我慢できなくなってきた。
おれはだしぬけに口を外した。
「ん…?あ…」
身を起こして、乱れきった河底さんの躰を見下ろした。
顔は完全に上気し、湯気が立ちそうだった。半開きの物欲しげな目でおれを見る。腰がさらなる刺激を求めて、ゆっくり、ゆっくりくねっていた。太股は自分の分泌物と、おれの唾液で濡れ、てらてらと光っていた。
「…どしたの…」
「…気持ちいいですか、河底さん」おれは言った。
河底さんは答えず、拗ねたようにおれから顔をそらした。おれは黙ってしばらく河底さんを見下ろしていた。腰はゆっくり、ゆっくりくねり続けた。
「…なあ…」河底さんが口を開いた。
「何ですか」
「…こんなこと、言わせんといてえな…」河底さんが、潤んだ目でおれを見る。
「なんですか」おれはわざととぼけることにした。
「…ちょうだい…入れて…」河底さんが言った。「この助平…」
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