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童貞スーサイズ
第三章 「
(ディス・イズ・ノット・ア)ラヴ・ソング



■第20 話 ■ カルペ・ディエム

 芳雄が太田とはじめてキスをしたのは、それから4時間後の事だった。
 学校の帰り道、駅前の商店街の近くにある、小さな雑居ビルの非常階段の踊り場。
 鍵が掛かっているドアもなければ、日中はほとんど人が足を踏み入れることはない。
 どちらが先に言いだすわけでもなく、本能的にその場所を見つけ、気がつけばそこに二人忍び込み、抱き合って、唇を重ねていた。
 
 一体、自分は何をしているんだ?
 芳雄は太田とキスをしながら、妙に醒めた頭で、意識を浮遊させて自分の状況を見下ろしていた。
 これは現実の出来事なのだろうか?
 これまでずっと観てきた悪い夢の続きなのか?
 それとも悪い夢をみているうちに、夢のテーマや方向性が変わったのか?
 
 芳雄が一瞬唇を放すと、目を閉じ、切なげに厚めの唇を半開きにした太田の顔が目の前にある。
 唇の隙間から白い歯が覗き、唇と歯の間を蜘蛛の糸のように唾液が糸を引いていた。
 その表情は芳雄の本能的かつ反射的な欲情を刺激した。
 自然と、太田をぎゅっと抱き寄せて……もう一度キスをする。
 ちょっと驚いたが、太田のほうが積極的に舌を絡めてきた。
 芳雄も負けじと舌を絡める………と、脳裏には、あのホテルの一室で、女装して薬と酒を飲まされた状態で、大柳にこってりと口内を舐め回されたときの感覚がよみがえってくる。あれが、芳雄にとってのファーストキスだった。

 あの大柳に比べると、太田の舌使いは実に稚拙なものだ。
 芳雄はその感覚を、頭の中で最大限の快感に変換する。
 そして太田の舌で大柳に与えられたとろけるような痺れを味わいながら……自分もまた大柳になりきり、太田の口の中で舌を使った。
 舌先で前歯のつるつるした感触を愉しんだ後、相手の舌を上に押しやってその付け根を下から擽る。
 同時に上唇を甘噛みしてこぼれ落ちそうな唾液を啜る。
 「んっ……」
 突然の芳雄の猛攻に、太田がはじめて小さな鼻息を漏らした。

 太田は明らかにアグレッシブモードに入った芳雄に戸惑ったのか、慌てて唇を離そうとした。
 恐らくそれまで自分が主導権を握ったつもりでいたのだろう。
 しかし芳雄は逃げようとする太田の髪を後頭部に回した手で掴むと、ぐっと押さえつけた。
 そんな強引なアプローチに怯えたのか、太田の舌の動きが、とても大人しくなる。
 芳雄は何かまな板の鯉を目前にしたような気分になり、いろんな舌使いを試してみたくなった。
 どうも奇妙な気分だ……なんで自分はこんなに、この状況を愉しんでいるんだ……?
 
「んっ……ふっ……」
 太田の口内に満ちた唾液を、一気に強く啜り込む。
 ぶるぶるっと太田の痩せた躰が芳雄の腕の中で震え上がる。
 太田の身体から抵抗は感じられない。
 芳雄と太田は同じくらいの痩せっぽちなので、どちらかがどちらかの動きを腕力で封じようと思えば、そこそこの勝負になっただろう。
 しかし……いまや太田は完全に芳雄の腕に身を任せていた。ぐったりと弛緩した太田の躰を、さらにぎゅっと強く抱きしめる。
 そして後頭部に添えた右手で、その短い髪をくしゃくしゃにかき回した。
 左の手の平で背中全体を撫でさする……少しこわばっていた太田の身体から、力が抜け、柔らかくなっていく。
 手を離せば、太田はその場にへなへなと座り込んでしまうに違いない。
 
「ぷはっ……はあっ……」
 唇を解放してやると、太田は潜水後に水面から顔を出したときのような声を出した。
 そこで、じっくりと太田の顔を観察する。
 あの木の前でわけのわからないホラ話をしていた時と同じくらい、太田は耳まで真っ赤になっていた。
 昨日まで……いや、つい4時間ほど前までは、太田は芳雄にとって、まったくどうということのない存在だった。
 それどころか、その存在さえ認識していなかった。
 しかしどうだろう
 今、この瞬間……太田は恐らくこれまで誰にも見せたことがないはずの陶酔の表情を、惜しげもなく芳雄に晒している。
 それは芳雄に、ビデオの中で父に弄ばれているドウ子の表情を連想させた。
 ドウ子と太田は、似ても似つかない。
 お世辞にも太田は美少女などとは呼べない、どこにでもいるような痩せっぽちの女子中学生だ。
 芳雄が言うのもなんだが、スカートを履いてさえいなければ、性別もはっきりわからないくらい中性的な少女だ。
 しかしいま、彼女が見せている表情には、芳雄の劣情を充分に滾らせる魅力があった。
 一体、なぜここまで魅力的な表情が、これまでに他の誰かによって発見されなかったのか、芳雄は不思議でならなかった。
 そして限りない可能性の宇宙の中で、それを発見したのが自分であることもまた、同様に不思議に思える。
 
 今、自分はこの魅力的な少女を、好きなように弄べるのだ。
 その愉悦に、芳雄は陶酔していた。
 芳雄は腕の中で喘いでいる太田をさらに抱きすくめると、その首筋に吸い付いてみた。
 
 「んっ……あっ」
 打てば響くように太田が身を固くする。
 そういうものなのだろう。芳雄にもその感覚は、痛いくらい理解できた。
 あの恥辱の夜、自らの身体に刻み込まれた攻撃のリズムに伴って、芳雄は太田の首筋や耳たぶ、そしてブラウスから覗く鎖骨に次々と唇をつけてみる。
 びくん、びくん、と太田のか細い身体が腕の中で跳ねた。
 まるでゲームみたいだ、と芳雄は思った。他人の身体をおもちゃにするのが、こんなにも楽しいとは。
 太田の唇からもれる甘い喘ぎをもっと聞きたくなった。
 もっと太田を好きなように弄くり回し、メチャクチャにしてやりたくなった……その結果、太田がどうなってしまうか?
 その行為によって、太田は傷つくのか?
 自分がやりたいようにやることによって、太田の心にいったいどんな思い出が残るのか?……知るか、そんなこと。

「えっ……ち、ちょっと」
 ブラウスのボタンに掛けられた芳雄の手に気づき、太田がはっと顔を上げる。
「……見せてよ」
 声を精一杯低くして、芳雄は言った。
「……でも……そんな……ちょっと……いきなりそれは」
 太田が何か、許しを乞うような視線を芳雄に向ける。
 当然、許すつもりはなかった。
 太田に抗議の隙を与えず、芳雄はブラウスの一番上のボタンを外した。すかさず二番目のボタンも外す。三番目も。
 太田はおろおろしながら、その様子を見下ろしていた。
 安物の綿ブラジャーに包まれた、ほとんど隆起が認められない平らな胸が覗いた。
 シャツの前を大きく開き、そこに顔を突っ込む。
「やっ……いやっ……ちょ、ちょっと待って、待ってってば……タイムタイム」
 太田が制しようとしたが、芳雄はそのまま汗ばんだ胸元を舐め挙げた。
「ひゃっ……んっ」
 勢いに乗って、そのまま右手をスカートの中に忍び込ませる。
「ひゃあっ……ひ、ひいっ……だ……だめだって………そんな………いきなり……そっちは」
 太田が芳雄の手を制しようとする。
 容赦はせず、聞く耳は持たなかった。
 太股の間に手を差し入れて、綿のショーツの底……クロッチの部分に指を据える。
「だめっ!」
 びくん、と身体を弾ませたあと、太田が前髪の向こうから三白眼で芳雄を睨んできた。
「僕が好きなんだろ?」
 顔を上げて、太田の目を睨むように見返す。
 太田の小さめの黒目が、潤んだ瞳の中を泳ぎ回る。なぜか、少しだけいい気味だった。
 
 ……いい気味? 太田が芳雄に一体何をしたと言うのだろう?
 
 しかし、太田が戸惑えば戸惑うほど、“いい気味だ”という思いは消えなかった。
 何故だろうか?
 
 芳雄は太田のクロッチに当てた指をくにくにと動かせて、湿りを帯びた部分を探り当てた。
 なるほど……これが、いわゆる“濡れてるぜ……”というやつか。

「い、い、いや……やだ……もう」湿った部分をからかうようにこすり上げると、太田はびっくりするほど淫らに、腰をくねらせはじめた。「やめて……」
「でも……もう、湿ってるみたいだけど?」
 気がつくと芳雄は、ビデオの中の父と同じような言葉を口にしていた。
 そしてそのまま、さらに激しく指を前後させる。
 力の入れ加減がよくわからなかったが……その時はあの夜、大柳が下着の上から自分の性器を弄んだときの指使いを思い出し、それを応用した。

 そう、確か、こんなふうにやさしく触れるのだ。出来るだけ優しく……殻のうすい卵でも扱うように。
 相手がもどかしくなって、さらなる刺激を求めて自分から腰をゆり動かし始めるのを促すように。
 その感覚は、自分の身体が覚えている……これまでされてきたことで自分から奪われていたものを、ここで取り返すんだ。

 太田はどこまでも敏感だった。面白いくらいに、芳雄の指に過敏に反応した。
 切なげに顔を背けて荒い吐息をこぼす太田の表情は、ビデオの中のドウ子の表情に重なった。
 そして鏡を通して、画像を通して目撃した、自分の淫らな表情に重なった。
 姉の服を着て、大柳、大西、そしてドウ子に嬲り回されている見知らぬ少女……自分自身の顔に重なった。
 いま太田が味わっているはずの戸惑いや快感や羞恥を、なんとか吸収して自分のものにしたかった。
 太田を自分の指で責めながら、芳雄は太田の心の中に深く分け入り、太田自身に乗り移ろうとした。
 そうすれば補食するものと補食されるもの、両方の快楽をいっぺんに味わうことができる。
 
 ああ、なんて楽しいんだ?

 芳雄は歓喜の絶頂にあった。
 これまで誰かの嬲りものだった自分が、今は他者をおもちゃにしている。
 芳雄にとって、太田は与えられた玩具だった。
 人をおもちゃにすることは、こんなにも楽しいんだ。
 これは「嬲りもの」としての自分の「分」をわきまえない行為だろうか?
 でも、だからと言ってなにが悪い?
 みんな、自分の快楽のために人を玩具あつかいしているのだ。
 それはこれまでの経験で、いやというくらい理解している……自分が弄ぶ側に回って何が悪い? 愉しんで何が悪い?
 
 自分は太田のことが好きなのだろうか?

 いや、そんなはずはない。
 太田は自分にとって……4時間前と変わらず、どうでもいい存在に過ぎない。
 出会って4時間くらいで、相手のことが好きになるなんてことがあり得ない。
 なぜなら芳雄は、太田について何も知らないのだ。
 わけのわからない与太話を人に強引に聞かせる、変な少女であるということ以外は。
 しかし、相手が何者かなんてどうでもいい。
 そんなことはこうして相手を嬲って愉しむことに、何の関係もない。
 そう、相手のことを、好きでもなんでもないほうがいい。
 どうでもいいと思っているほうがもっといい。
 さらに言うなら、相手を蔑んでいるくらいのほうがいいかも知れない。
 
「……あっ……やっ……い、や……」
 指を激しくこすりつけるにつれて、太田が震え始めた。
 しっかりと目を閉じて、小さな顎をかたかたと鳴らしている。
 芳雄は指を下着の縁からするり、と内部に侵入させた。
「………びちょびちょになってる………」
 芳雄はそう呟きながら、その台詞はビデオの中の父から拝借したのか、ドウ子から拝借したのか、それとも他の誰かから拝借したのか……いろいろと思いを巡らしてみたがどれもしっくりこない。そんなことはどうでもいい。
 ほんとうにそこはぐっしょりと濡れ、火傷しそうに熱くなっていた。
 あふれる体液に指を浸し、その中で指先を泳がせた。
 熱い肉に指先が触れる。
「ふんっ……!」
 それまで逃れようとしていた太田が、自分からきつく芳雄を抱きしめてきた。
 
 ええと………芳雄はおぼろな知識に導かれながら、ひたすらにその一点を探した。
 確かそれは、肉の裂け目の前の方にあるんだっけ? ……でも生まれて初めてのことなので、なかなかそれらしい部位は見つけられない。
 しかしそれを求める芳雄の指が濡れた肉の上を這い回ると……太田は芳雄に巻き付けた腕に力を込め、さらにおびただしい液を溢れさせた。
 そういうものなのだろうか?……芳雄は思った。そういうものなのだろう……自分もそうだった。
 
 「いやあっ……!」
 突然、小さく太田が叫んで、芳雄の肩に顔を埋めた。
 指先が突起物を探り当てたのと同時だった。
 
 これか。
 
 芳雄は慎重に………さらに太田を追い込んでやろうと、気持ちを落ち着かせた。
 今や太田は完全に観念したように……芳雄の肩で大きく息をしている。
 その部分を探り当てられたことが恥ずかしいのだろうか?
 
 愉しんでやろう。ここは思いきり。
 愉しんで何が悪い?
 生きることを愉しむことの、一体どこが悪い?
 
 芳雄が本格的にその部分を捏ねようとしたその時。
 胸ポケットに入れていたドウ子のオレンジ色の携帯が、ストゥジーズの“ I wanna be your dog ”のリフを奏で始めた。



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