どちらへお掛けですか
 
作:西田三郎


■金曜の夜、午後11時30分

 「……あ……や……」
 ベッドの上で膝を立てて横たわる薫。おれはその膝と膝の間に手を差し入れて、ゆっくりと開いていった。
 かすかに薫の膝から抵抗を感じたが……それは実に弱々しく、義務的なものだった。
 「……や……だ……」薫の二重の垂れ目が、薄目でおれを見る「……は、恥ずかしいよ」
 おれは気にせず、ぐいっと力を入れた。
 「……んっ」薫がきつく目を閉じ、顔を背ける。枕にポニーテールが踊った。
 「はあ……」おれは姿を現したものに、目を奪われていた。

  艶やかな茂みの下で、それは恥ずかしげに口を開けていた。薄く、柔らかく、そして熱く熟れたもうひとつの唇。薫は上の唇をしっかり歯で噛んで閉じでいるが、下の唇では待ちかねて涎を垂らしていた。
 かなりの量の蜜が溢れだしている。一部はさっきまでしっかり閉じられていた内股に付着し、糸を引いていた。
 この上なくいかがわしい眺めだった。

 「ね……ねえ……お願い……そんなに、見ないでよ」薫が目を閉じたまま言う。
 「すごいことになってるよ。知ってる?」おれは行った。「脚の間で、糸引いてるよ
 「……ん……」薫が薄目を開けて、恨めしそうにおれを見る「そ……そんなの知ってるって……」
 「いやらしいんだねえ、薫ちゃん」
 「……ん……バカ、ヘンタイ……」薫がまた目を閉じる「誰が、こんなにしたと思ってんの?」

 おれは天にも昇る心持ちだった。次にやることは決まっている。

 「じゃあ、さっきのお礼に、おれがしてあげる」
 そのまま、薫の脚の間に頭を突っ込んだ。
 「あっ!!……やっ……“お礼”って……だめっ!」慌てて薫が太股を閉じる。
 しかし時すでに遅し。おれは薫の下の唇に口づけしていた。
 「……だめ……だめだってそれ……ん……ダメ……だよ」薫が手を降ろしておれの頭を掴んだ。まるでシャンプーでもするかのようにおれの髪をかき回す。「……それ……キ、キライなんだ……ってば……ふうんっっ!

 おれは舌を動かし始めた。
 びくん、と薫の腰が跳ね上がった。背が弓なりになり、シーツと背中に隙間ができる。すかさずおれはそこに両手をこじ入れ、しっかりと抱え込んだ。

 「やああ……っ……ダメ……だって……あんっ!」
 舌を動かしやすい位置に薫の腰を固定して、おれは下唇に溢れる蜜を、舌ですくい上げるようにして舐め取った。
 暴れそうになっていた薫がおとなしくなる。
 「あんっ……あ……」ますます薫の腰が弓なりに反った。
 おれはわざと、下品に音を立てて薫のその部分を舐めた。ひと舐めするたびに、薫の躰がビクッと固くなる。舐めて、吸った。吸っては唾液を流し込み、またそれを吸い込んだ。
 「あっ……いっ……あんっ……やっ……いいっ……んっ……」
 おれの舌のリズムに合わせて、薫が可愛らしい声を上げて腰を踊らせる。口の中に濃厚な味がしみる。陰毛が数本、口の中に入ってきた。おれは薫の腰の下にこじ入れていた手をそのまま下にずらして、豊かで固い薫の両方の尻肉を、掌で掴んだ。

 「……あ……」おれが口を離すと、薫はぐったりと腰を落とした。
 「……気持ちいい?」おれは薫を見上げていった。すぐに薫が、熱っぽい目で睨み返してきた。
 「知ってるくせに……」薫が非難がましさを装って言う。豊かな胸が、息づいている。
 「もっと気持ちよくしてあげる」おれは言った。自分でも呆れるくらい、ニヤけた顔をしていたんだろうと思う。「まだまだこれからだよ」
 「しつこい……もう……やだ……」薫が半身を起こしておれの頭に手を伸ばす「ねえ……ね、もう、いいでしょ……ねえ……ねえったら……んあっ」

 おれは薫の尻肉を両手で揉み込みながら、今度は舌先で正確に、感覺の集中点を狙った。
 「あ、や、やあ……くっ……うんっ」
 薫は起こそうとした半身を再びベッドに埋めて、また太股でおれの頭を締め付けた。
 舌先で、薫の蕾の薄皮を、ゆっくり剥く。
 「……やあ……おねがい……それ、キライだから……もういいから……あああんっ!

 おれは舌先を振動させて、剥き上げた薫の熱い陰核を擽った。両手に握った豊かな尻の肉が、きゅうっと緊張するのが分かった。新たなすごい量の蜜が置くか ら溢れだし、それがおれの口から流れ出た唾液と混ざり合う。その混合物で口が一杯になりそうだった。おれはその多くを飲み、飲みきれない分を下に溢れさせ た。薫の脚の間はあっという間に泳げそうなくらいの水浸しになり、その水位が下がることはなかった。溢れかえった粘液が、薫の茂みをぐっしょりと濡らせて いる。それはさらに、太股の上まで溢れる。重力に従って下に滴り落ちた液は、すぼまった初々しい後ろの孔をも濡らし、尻肉を握るおれの手までも濡らせた。

 「……あ、あ……あ、あ、あああっ……いい……いく…ん…ああっ……え?」
 絶頂を迎えようとして、離陸準備に掛かっていた薫の陰核から、おれは無慈悲に舌を離す。
 そして起きあがると、悶え喘いでいる少女の豊満な身体を見下ろした。
 「……な、なんで……なんで?」薫が薄目を開けておれを見る。すがるような目だ。

 ベッドの上でさらなる刺激を求めて、脚をぴったりと閉じ、遠慮がちに腰をくねらせている薫の肉体は、その眺めでおれをますます悦ばせた。もはや薫は乳房 を隠す気力もなく、仰向けになっても形を崩さないその豊かすぎる胸を晒している。そして、下腹の辺りからは粘液で濡れて光っている。充分に湿気を吸い込ん でしっとりと肌に張り付いた茂み。両方の脚の付け根から太股の中央くらいまでが、同じように淫らに濡れていた。
 目がレンズで、頭がハードディスクなら、と思う。そうすれば、この景色を永遠に保存しておけるのに。

 「あ……」薫は何かを言いかけて、口をつぐんで、また顔を背けた。
 「もっといやらしいことして欲しい?」
 「……」薫は答えなかったが、うねる腰が言葉以上にその返事を物語っている。
 「……じゃあ、するよ」
 おれはまた薫の膝を立たせると、左右に開いてその間に顔を埋めた。
 「……って……さっきと一緒じゃん………キライなんだったら……んっ」
 確かにおれの舌先は先ほどと同じく、薫の陰核をとらえていた。しかし、その下にこじいれられた手の親指は、ゆっくりと薫の入り口に侵入をはじめていた。 熱湯の中に指をつけたように、指がひりひりする。しかしこれ以上ないほど潤んだその入口は、やすやすとその侵入を許した。
 「やっ……だ……め……そんな」
 舌の動きと平行して、親指を出し入れし始めたおれの手に、薫の身体は引きつっていく。
 「………ええっ?!……ちょっとやだ、そこはだめ。マジでダメ……ねえ、ほんとに、お願い…そこは」
 親指を差し入れながら、おれは人差し指をたっぷりと濡らせて、薫の肛門に触れた。
 「……やだ……って言ってるじゃ……ん……んんっ…」
 ゆっくりと、窄まった孔をマッサージする。案外それは強情を張らなかった。いじくっているうちに、つるり、と指の先が迎え入れられる。
 「んん……んっ……やっ……や……だ……ああんっ!」
 そのままずぶずぶと人差し指を沈めた。継続して舌ではクリトリスを嬲っている。

 薫の腰ががくがくと揺れた。
 おれは肛門に挿れた人差し指と、淫孔に挿れた人差し指をそれぞれに動 かしてみた。薫が痛がらないように、細心の注意を払った。親指は火傷しそうに熱く、締め付けられ、人差し指はそれよりもさらに締め付けられた。薫の淫孔の 中は心地よい熱さを帯び、みるみるあふれ出す蜜が、おれの手の平をつたって肛門に差し入れられた人差し指の根元まで垂れてくる。おれは一旦人差し指を第一 関節くらいにまで引き抜いて、その蜜をすくうと、再びそれを潤滑油に指を肛門に突き入れた。

 「あああっ……あ…あ、あ、あ、あ」薫が悲痛なまでの声を上げる。「ああ……いく……もうすぐ……いく…」
 その言葉を合図に、親指と人差し指をくわえ込んでいる二つの孔が、急速に収縮しはじめた。
 薫が絶頂を迎える様子を見たくて、おれは上半身を起こした。
 すかさず左手の指で薫の陰核を捉え、激しく擦り上げる。
 「……や……や…だ……見ないで……ねえ……」
 「ほら、見ててあげるから、そのままイッてご覧」息を切らせながら言う「我慢しなくていいから、思いっきりイッてみ
 「………んん…だめ………おかしく……なっちゃう……」

 薫が腕を上げて上腕で自分の目を隠した。シーツを掴んでいた手を、そのまま自分の豊かな乳房に移動させる。そして自分の指で、それを弾くように転がしはじめた。なるほど、これがいつも自慰をするときのクセなのか、とおれは思った。
 薫の両脚はつっぱり、足の指が全部曲げられていた。

 「あ、あ、ああ、あああ、…………んっ!!………ああああっ!」
 ぐいん、と薫の腰が跳ねて、おれの両手をはねとばした。そのまま薫はブリッジをするような姿勢で、頭と足の先を軸に全身を弓なりに逸らせる。凄絶な絶頂 の風景だった。薫はその顔を真っ赤にして、目をきつく閉じ、歯を食いしばって自分自身が壊れてしまうのと戦っているようだった。

 長い、長い滞空時間の末に…薫はぐったりとベッドに身を投げ出した。
 しばらくの無言と、荒い息づかいの後に……薫はおれに、呟くように言った。
 「……この、どすけべ
 

 
 

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