蛇蝎 作:西田三郎
■元極道との性交
「…ごめん…」七瀬が言った。いつもの七瀬の声、七瀬の口調だった。
髪の毛にまで大量に精液を受けた藤枝は、しばらくその場に座り込み、呆然としていた。精液の熱さを感じた。ただ事ではない粘りを感じた。一瞬、見てはいけないと思いつつ、横目でまた部屋の壁の鏡を見た。大量の精液を顔に浴び、潤んだ目で座り込んでいる自分が映っていた。さらに股間が熱く潤んだ。正面には七瀬の逸物があった。先ほどまで藤枝の口の中で猛り狂っていたそれは、唾液にまみれて濡れ光り、先端に精液の残滓を垂らしていた。恐るべきことに、少しもその勢いを失っていない。
「…口の中で出して、良かったのに…」藤枝は自分の口から出た言葉に我が耳を疑った。言葉にするとそれは、おぞましいばかりに生々しい内容だった。
「…そんな…ダメだよ」七瀬が言った。「思わず、出す前に躰を離そうとしたら…こんなになっちゃって…」
「…」
藤枝は四つん這いになり、再び七瀬ににじりよった。明らかに、いつもの自分とは違う行動だった。さっき大酔いしたせいだろうか?いや、酔いなんてとっくに醒めている。藤枝は未だ勢いを失っていない七瀬の真珠入りの逸物を手に取ると、ゆっくり両手で扱き始めた。
「…今度は…口のなかでいって…」目を閉じ、再び七瀬の肉棒を口に含もうとしたときだった。
「…そんな何回も、口でしてもらわんでもええがな…」七瀬の低い声が聞こえた。「…どうも口でするんが好きみたいやけどな…」
いきなり、強い力でベッドに突き飛ばされる。不意を突かれた藤枝は、力無く仰向けに転がった。
「きゃっ…」
「…さあて、そろそろ違う穴で楽しませてもらおか…」
七瀬を見上げようとしたら、強い力で腹這いに裏返された。
「…あっ…」
「ほれ、おけつ上げて…」七瀬が藤枝の両腰を掴み、そのまま持ち上げる。
「いや…」顔を上げようとすると、七瀬のの手が藤枝の顔を上から枕に押しつけた。「んっ…」
尻を突き上げるように高く持ち上げられ、上半身は這い蹲るようにベッドに押しつけられっている。枕に半分顔を埋めながら、藤枝は頭の中で今自分がとらされている屈辱的な姿態を思い描いた。
あまりの羞恥に、全身にむず痒いような痺れが走った。そのはけ口が見つからず、思わず枕の布を噛んだ。しかも、その姿勢を、七瀬が後方から見ている。息づかいも感じた。羞恥と悦びへの抑えきれない期待で、高く挙げた尻が震えた。ベッドに立てた膝が、がくがくするのを感じた。
「…ほうら…可愛いケツの穴まで丸見えや…」
「やあっ!」
軽く、肛門をつつかれた。そんなところを人に触られたのは初めてだった。
思わず飛び上がり、逃れようとした尻を再び七瀬ががっちりと捕まえる。
「…ふんっ…」
先端が体内の入り口に押し当てられた。ほんの少し、切っ先が濡れた陰門に潜っている。
「…や…そん…な…」藤枝は七瀬に振り向いて懇願した。「…うんっ!」
さらに熱い先端が早紀に進む。
「…ほれ…どうや?」七瀬が言った「…どうして欲しい?」
「む…」藤枝は再び、枕に顔を埋めて耐えた。このままだと、とんでもなく恥知らずなことを口走ってしまいそうだ。言葉にはならなくとも、尻は震え、腰は円を描くように動いていた。そんな藤枝の淫らな反応をはぐらかすことを楽しんでいるのか、先端を浅く沈めたままの七瀬は藤枝の動きから逃れるように腰を動かした。
「…あ…い…」
「…ん?…どうした?」七瀬がそういって腰を引く。
「…んん…」思わず引かれた腰を追いかけてしまいそうになる、自分の尻の動きに気づいた。
「ほれ」不意に、七瀬が腰を突き出した。
「…んあっ!」思わず藤枝の顎が跳ね上がった。
肉棒の3分の1ほどが、差し入れられている。ちょうど、埋め込まれた真珠の手前だった。
「…ほれ…どうする?…どうしたい…」
「…ん…」藤枝は身をよじり、シーツの上で喘いだ。「…く…」
「…どうしてほしいんや…言うてみ…」
「…あ」唇が、勝手に開いた。漏れた熱い吐息が、ひとりでに言葉になった「…いれて…」
「ん…?」七瀬が低く笑いながら言う「…なんや…そんな小さい声で言われても、聞こえへんがな」
「んっ…ああっ…」切ない声が漏れた。七瀬が埋まっていた肉棒を軽く引き抜こうとしたからだ。
「…ほれ…どうしてほしい?」
「ああ…」
藤枝は顔を上げ、だらしなく唇を開き、うつろな目で宙を見ていた。
もはや理性はあまり残っていない。舌も、唇も乾ききっていたが、そこから自分の、少しかすれた声が出てくるのを聞いた。
「…い…入れて…」さらに熱っぽい目で七瀬を振り返り、続けた「…奥まで…入れて」
ひひ、と七瀬が笑うのが聞こえ、一瞬の間を置いて、ずん、と腰が突き入れられた。
「はあんっ…!!」藤枝は上半身を持ち上げ、頭を後ろに反り返らせた。
肉の壁の一番奥に、七瀬の先端が押し当てられているのを感じた。真珠の存在は感じなかった。
七瀬はまたそのまま、じっと動かなかった。藤枝は自分の肉が、ぎゅっと七瀬の肉を締め付けるのを感じた。スポンジから水が滲み出すように、肉茎をくわえ込んだ入り口から蜜が筋をつくってあふれ出す。尻が震えた。膝がさらに笑った。全身が、わなわなと震えていた。
「…えらい、汁があふれとるやないか…」
七瀬が垂れた愛液を指ですくいとり、藤枝の尻肉に塗りつけた。
「…んん…」
「ほれ…自分で動いてみ…ほら…我慢せんと…気持ちようなりたいんやろ…」
「…くっ…」
藤枝はゆっくりと動き始めた。その時はじめて、内壁をくすぐる真珠の存在を感じた。
「…ああっ…」声が漏れる。真珠の存在を意識して、動きを変える。
「…いやらしい動きやな…ほれ…もっと盛大にけつ使うてみいな…」
「…やあっ」言いながら、藤枝の尻は、さらに激しく動いていた。内壁に感じる真珠の刺激を求めて、前後に、左右に動いた。「あっ…ああっ…くっ…いっ…ああっ…あっ…ああっ…」
自分で尻を動かして、喘いでいる女が居る。それはまぎれもなく、藤枝自身だった。
ここまで自分の淫らさを認識したのは、これがはじめてだった。
それを認識することは、何とも甘美で背徳的な気分だった。
「さあてと…」七瀬が言った。一旦肉棒が入り口あたりまで引き抜かれる。
「…やあっ…」追いすがるような情けない声を、藤枝は出していた。と、思うと、今度は乱暴に根元まで陰茎を突き立てられた「あんっ!!」
七瀬が動き始めた。
「ほれ…ほれ…ほれ…ほれ…」
「はっ…んっ…あっ…ああっ」
七瀬は単純に前後に動いた。その動きと呼吸に、全身と精神を支配されていた。
「ええんか…?」
「…あ…」
「…どうなんや…ほら…」わざと、真珠をこすりつけるような七瀬の動き。
「きゃあっ!」また悲鳴が出た。
「…ほれ…ええのんか…」また七瀬ははぐらかすような軽い動きにシフトする。
「…あっ…イイ…」
「ええんやな…」
「…あっ…うんっ…すごく…すごく…いい」
また頭を押さえつけられる。枕に顔を埋められた。改めて尻を高く持ち上げられる。さらに、屈辱的で、嗜虐的な気分を盛り上げられた。藤枝にはもはや理性は残っていなかった。
「…つ…突いて…めちゃくちゃに…突いて…」
「…いやらしい女やな…ホンマに」
七瀬が激しく腰を動かし始めた。
「…やああああっ!!」
尻肉が、激しく鳴った。その中に、湿った粘液の音も、はっきりと交じっていた。藤枝は嗚咽し、むせび泣いた。腰から下の感覚が、無くなりそうだった。しかし明らかに尻は、さらなる快楽を貪欲に求めて、円を描くように動いている。
「…ほれ…どうや!…ええか?…ええんか?…言うてみい!…この好き者!」
「あんっ!」尻を叩かれた。高らかに音が鳴った。
その瞬間、頭の中にフラッシュが光った。内壁がさらにきつく陰茎を締め上げた。
「んんんん…っ…ぐっ…」いっそう腰を高く持ち上げた。息が止まった。
がっくりと腰を落とし、ベッドに沈んだ。七瀬が黙って陰茎を抜いた。
しばらく、シーツに俯せに伏せたまま、荒く息をした。見下ろしている七瀬の視線を感じた。
挿入されて絶頂を迎えたのは、これが初めてのことだった。信じられない気持ちだった。
「…なんや…もうイッてもたんか…結構早いやなないか…」
「…」
「…かなんなあ…おれはまだ、こんなんやのに…」
七瀬が傍らに座り込み、藤枝の右手を取った。また肉棒を握らされた。
「…やっ」それは相変わらず、熱い血で満ちて脈打っている。そればかりか、その側面は藤枝自身が分泌した液にまみれ、ぬめっていた。
「…ほれ…自分が盛大に出してくれた汁で…べとべとや…」
「…そんな…」
「…まだまだ…これからやで…」
強い力で、右肩を下にして横にされた。テレビを寝ながら見るときのような格好だった。
「…やっ…」左足首を掴まれ、高く持ち上げられれる。七瀬は藤枝の右太股の上に座り込むような格好で、先端を再び入り口に押しつけてきた。「…いやっ…こんな格好…」
「…なにごとも経験やがな…」そのまま七瀬は、一気に挿入してきた。
「くああっ!!」
七瀬が激しく動き始めた。高く持ち上げられた左足のつま先が、反り返っているのが見えた。七瀬の動きに併せて、胸の柔らかい肉が踊っていた。その肉を、小指のない七瀬の左手をすくい上げ、掴んだ。揉みしだかれた。右手は股間に廻ってきた。指先が何かを探している。
「…だっ…だめっ…それ…」指先が、藤枝の肉の合わせ目から突起を探り当てた。「やあっ!」
出し入れされる肉棒、揉み上げられる乳房、そして指によりこねくり回される陰核。
藤枝は気を失いそうになりながら、恥知らずな泣き声を上げた。
いつまでもその責め苦は続いた。永遠に続くかのようだった。
「…お…お願い…も…もう…」藤枝は許しを請うた。「…もう…許して…」
「…まだや…そんなん、おれ、まだイッてないやん…」
「んあああああっ…!」藤枝が再び絶頂を迎えるまで、そう長い時間は掛からなかった。
…暫くの間、休憩が与えられた。藤枝はもはや虫の息だった。
「さあてと…」七瀬が言う。それは休憩の終わりを告げる合図だった。
「…もう…いやあ…」
抵抗する力を失った藤枝は、七瀬のされるままに様々な姿態を取らされた。
膝の上に載せられて、下から突き上げられた。
または腹の上に載せられて、自分で腰を動かすことを強要された。
または、仰向けになった七瀬の上にさらに仰向けに乗せられて、下から突かれた。
何度絶頂を迎えたか判らない。その間、七瀬は一回も果てることなく、藤枝を淫猥な言葉で苛み続けた。藤枝は正気を失っていた。七瀬の異常なまでの責めに、恐怖を感じた。そして同時に、終わることのないこの責めに対して、どこまでも貪欲に悦楽を求め続けている自分の本性に少し恐怖を感じた。しかし、終わりは突然にやってきた。
正常位で藤枝を突き上げていた七瀬が突然陰茎を引き抜き、もはやまともに立つことすらできない藤枝の半身を引き起こした。ぽかんと開いた唇に、七瀬の濡れ光った陰茎がねじ込まれる。
「むぐ…」
陰茎は、全体的にぬめり、しょっぱい味がした。藤枝自身が分泌した、粘液の味だった。
「さて…今度は、飲めよ…」
「ぐっ…」
喉奥に向け、一気に大量の精液が放たれた。
口の中で陰茎は脈打ち、激しく律動しながら精液を藤枝に流し込んでくる。
その量があまりにも多いので、あっという間に藤枝の口の中は一杯になった。慌てて陰茎から口を離した。肉棒は未だ勢いを失わず、上下にのたうち、さらに藤枝の顔に熱い精液を降りかけてきた。
藤枝は精液を飲みそこね、はげしく咳き込んだ。
抑えた手の指の間から、むせ返した濃い精液が流れ落ちた。
あまりにも激しくむせたので、涙が出た。
「…大丈夫?」七瀬が言った。
藤枝は七瀬を見上げた。心配そうに藤枝を見下ろす、いつもと同じ優しそうな七瀬の顔があった。
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