愛の這ったあと
ある寝取られ男の記憶の系譜

作:西田三郎




■9  『いかれた女のセックスは、やはりいかれていた』
 


いやそれにしても過去のわたしよ。お前はなんという女とつきあってたんだ。

 「ほじってえ……もっとほじってええええっっっ!!」女はずっとベッドの上で、わめきっぱなしだった。「あっ……あっ……あっ……あ、あ、あっ………当たってるのわかる?………奥にちゃんと当たってるのわかるうううう????
  今、女はおれの腹の上にいて、そのしなやかな身体……いやまったく、どう鍛えて何を食えばあんなにしなやかな身体になるのだろう……を弓なりにそらせて、固く中身の詰まった両方の乳房を突き出しながら、髪をふりみだし……上下、左右、前後と自由自在に激しく動き回っていた。

 「ほじられてるうううっっっ!!あたしの奥にちゃんと当たってるぅぅぅっっっ!!」

 ホテル中どころかこのホテル街全域にまで聞こえそうな大きな声で、女は絶叫した。、

 「……ねえ、見て、見て………見てっっ!!!

 いきなり女が前かがみになって、わたしの頭を……というか両耳を掴んで、枕から引き起こした。垂れさがるということを知らないような……ずっと熱い熱を帯びて腫れっぱなしのような乳房の奥の奥で、贅肉のない腹の向こうで、わたしと女の陰毛が粘液の中で絡み合っていた。

 「……ねえ、見える????………」女が叫んだ。「つながってるとこ、ちゃんと見える????

 女が腰をゆっくりと上に上げる。
 
  「おっ……」

 きつく締め付けてくる入口が、ぐりっ、という感じでわたしの亀頭の淵、ようするにカリの部分までを乱暴になで上げて、その刺激に思わず声をあげる。女に両耳を押さえられて、わたしははっきりと見た。女の濃い粘液で白く光っている自分の陰茎を。わたしの陰毛と女の陰毛が、粘液で絡み合って、何本もの糸を引いている様を。 これ以上ない、というくらいいかがわしい眺めだった。
  わたしはその様を目にすることで、まるで少女のように羞恥を煽られて……また陰茎に力をみなぎらせた。
 
  「んああっ……すごい、すごい大きくなってるうぅぅっ!!」女が叫ぶ「この変態!セックス中毒!種馬!!!
  「……いいか……気持ちいいかあ?……」息も絶え絶えになりながら、ほとんどキスできそうな距離で女に囁いた。ぎゅうっっ……と、女の入口がまた強く収縮し、わたしの陰茎を締め上げる「……すっげえ締めてるぞ……そんなにいいのかよこの淫乱女!!!!
  「………ああうううっっ………」女が恨めしげな顔で言う「あっ……あんたはどうなのよ??いいの?気持ちいい??」
  「……ま、ま、まだまだこれからだぜ!!!」

 と啖呵を切ったものの、どこまで続くかはかなり怪しかった。とにかく腰を上下に激しく動かして、女を攻め始める……まるで親の敵みたいに。

 「ひゃああああっっっっっっ!!!
 
  女がまた、ぐん、と頭と上半身全体をそらせて、うしろに手をついて、下腹部を突き出す。女の身体は柔らかいらしく、とがったような攻撃的な乳房は、天上を垂直に指していた。女の顎と、振り乱されるちりちりの髪がはるか遠くに見えた。おれは自分の上半身を30度くらい起こし……腹筋に負担がかかったが、まあ腹がへっこむのでいいだろう……両手で女の尻をがっしりと掴んだ。固く、これまた筋肉の存在を感じさせるしっかりしたいい尻だった……そして、はげしく女を上へ、上へと突き上げ続けた。

  「……どうだあ?……どうだってんだこのメス犬めっ!!!
  「……んああああっっっ……すっごくいいよこの種馬!!!
  「だらだら溢れさせて、ぎゅうぎゅう締め付けてくるじゃねーかこのド助平が!!
  「そ、そっ……そっちもあたしの中で破裂しそうになってるじゃないっっ!!……このサル!!
  「………もっと……もっといいって言えよこの悪たれまんこが!!!
  「……あっ………あんたも、もうクタバリそうだって言えよこのクソちんぽ!!とっととイけっての!!」
  「……このド淫乱まんこが……うっ……『もうごめんなさい』って泣き出すまでハメ倒してやるぜ!!」
  「………ふっ……ふんっ!!……あんたの腐れちんぽなんか、根元からもぎ取ってやっからね!!」

 激しく突き上げ、女は激しく動き回りながら、俺たちはお互いの人間性とそれぞれの性器のだらしなさ、セックスに対する貪欲さを罵りあい続けた。
  しかし……それにしても女に「種馬」だの「サル」だの「腐れちんぽ」だのと言われるのも仕方がない。なんといういじましいちんぽなんだろうと、われながら呆れるしかなかった。これで、3時間前、妻と……いや、妻と名乗る女と3回もセックスを決めてきたなんて、ほんとうに信じられない。われながら充分に固く、安定していて、それは萎んだり萎えたり、曲がったりということを知らないかのように思えた。

 そうして女の尻に指の後がつきそうなくらいに揉みしだきながら、対面座位(というのだろうか?)で腰を振って、振って、振り続けて、どれくらい時間がたったかわからない。一向におれはイく気配がなく、女はなんども上体を反らせて、ほとんど泣き声のような声を挙げて……この時点ではもう、女はほとんど人間の言葉を発していなかった……お互いの結合部からあふれ出した液の中で金魚が飼えそうなくらいべどべとのぬるぬるになったとき、女が急におれに抱きついてきて、耳元で囁いた。

 「うしろから………突いて」

 そうすることにした。
  一旦、陰茎を抜き取って、女をベッドの上に四つんばいに這わせた。
  当然のことながら、今日、妻……だという女を、同じ姿勢で攻め立てたことを思い出した。そしてその事実にもまた、陰茎に新たな英気を与える材料となる。まったくわたしは、どうなってしまったのだろう。というか、どうなってるんだ。ずっとこうだったんだろうか?

 「い……入れて………早く………」

 女の腰には、羽の形を模した黒い刺青が入っていた。
  こんな位置に刺青を入れた女とセックスするのは、これがはじめてだった……少なくとも、あまりにも怪しすぎる今のわたしの記憶の限りでは。女の尻には、わたしが力任せに掴んだ痕がしっかりと残っていた。明日にはきっと、痣になろうだろう。わたしはその指の跡がまるで定位置であるかのように両手の指をそれぞの指の痕に重ね、もっとはっきりした痣が残るように、しっかりと女の尻を掴んだ。
  そして、手も添えずに一気に置くまで突き入れた。

 「ひゃっ」女が、肩甲骨を浮かせてぶるっと背中を振るわせた。「あああああんんっっっっ!!!!!
  そこからは……書いても退屈だろう。射精するまで、わたしはコースを走りきって競技場に戻ってきたフルマラソン選手の気分で腰を動かし続けた。

 長い、長い、長いセックスの後、女と2人で……タバコを吸った。
 その日、女からもらった十何本目かのタバコだった。
  見覚えのない銘柄だったが、わたしはこのタバコが好きになりはじめていた。

 それまでのわたしに喫煙の習慣はあったろうか?……これまで何度も禁煙に失敗しては、また挑戦の繰り返しだった。まあ、どうでもいい。わたしは女とともに、一本のタバコを味わい続けた。

 「ねえ」おれはベッドの上の女に声をかけた。
  女は素っ裸のまま、うつぶせで長い脚をまっすぐ伸ばして、わたしの指の跡がしっかり残ったままの尻を晒してタバコを吸っている。
  「何?……淫獣さん」女がだるそうに応えた。「いつもながら……あさましいセックスだこと」
  「……そうか、いつもながらか……」おれは一人ごちた。
  「そんなにあたしに飢えてたのお………?」女がいたずらっぽい笑みを浮かべる。
  「なあ」わたしは女から目を逸らして、背中を向けて女に言った「……おれの、どこが好き?」

  「ちんぽぉ」女は答えた。

 

 

 

 

 

 

 

NEXTBACK

TOP