愛の這ったあと
ある寝取られ男の記憶の系譜作:西田三郎
■6 『女の身体の上をくまなく探ったが、手がかりはなかった』
それから後のことははっきり言って……あまり詳しく言いたくないが、まあ行きがかり上詳細を書いておこう。
興味あるだろ?
「……やめてよ!!……絶対、ぜったい、ぜえっっっっったい、イ・ヤ!!!」女がわめきながら暴れるので、その肩を掴んで半身を起こさせた。ガマ口から陰茎を出したままだったけど、そのまま女の目の前でズボンのベルトをはずして、一気にズボンとパンツをひき下ろした。
はっとして女が顔を上げる。何をさせられるのか悟ったのだろう。
「いやっ!!!!絶対しないっっ!!!するわけないでしょ??オカシイんじゃない??」
「さっきのオッサンのには、むしゃぶりついたんだろ?オッサン、そう言ってたじゃん???」
「バカ!!!大バカ!!」女はまた、ぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。これはもう、しゃぶってもらうしかない、とわたしは決心した。
ああ、女の言うようにわたしの欲情は最低の部類に属する欲情だろう。でも、新しい自分に生まれ変わったようで、妙に爽やかな気分だった。
「んっ……むっ……くっ………」
女の頭を引き寄せて、すでに濡れた亀頭(張り詰めすぎて、光沢が出いていた)を女の頬にこすりつけた。痺れるような快感が背筋を駆け上る。女の両頬を掴んで、しっかりと閉じられた唇に突き立てる。さらにやわらかい、見知らぬ感触に、また先端から新しい汁があふれ出して、女の唇を濡らした。「このまま出してもいいけど、それでいいの?」
嘲るように言うと、女は上目遣いに俺を恨めしそうに睨んでから、目を閉じ、そっと大人しく唇を開いた。
にゅるり、と女のやわらかい唇を分け入って、わたしの陰茎が温かい肉に包まれていく。
「んぐ………」女がごろり、と喉を鳴らした。
「……おおう」俺が腰をゆすりはじめると、女も同時に舌を使い始めた。
新鮮な舌づかいだった。生まれて初めて味わう、新しい感覚だった。女の舌は陰茎の下部をちろちろと這い、さらに奥まで、どこまでも奥まで進んでいく。そして、厚めの上下の唇が亀頭の表面を行ったり来たりした。「……あうう……」さっそく、イきそうになった。早い。あまりにも早すぎる。「な、なあ」
「ん……」女が、きっ!っと上目遣いでわたしを睨んだ。また、びくん、とわたしの陰茎が女の口の中で踊った。
「……さっきのおっさんのも、そんなふうに舐めたの?……おっさん、喜んでた?」
「ぷはっ……」女が口を離す「……何なのよ!!……あ、んっ……うぐっ………」また強引に女の口に陰茎の先を押し込んだ。
前歯が亀頭に触れた瞬間、そのまま女の唇の上にさっそく射精してしまった。「きゃっ………」慌てて顔を背ける女。その頬に、2弾目の射精が直撃した。
「……悪りい、出ちゃった」
「さいっっっっっっっ悪!!」精液にまみれた顔で、女がわたしを睨む「……あのヒトの奥さんは……こんなふうに顔に出されると悦ぶの?………そうなの?」そこで女が、はじめて笑った。ぞっとするくらい、冷たい笑みだった。そしてなんとまあ……その笑みのせいでわたしの陰茎がまたびくん、と脈打つ。見下ろしてみて、我ながら呆れた。
また女に飛び掛った。女は特に抗う様子もなく、わたしを待ちうけているかのように笑ったままだった。そのまま仰向けにして、その両手首を掴み、頭の上に押し付けた。顔を、舌を伸ばせば届きそうな距離まで近づけた。自分の鼻息で、女の鼻の頭にこびりついたわたしの精液が、ぷるぷると揺れているのを見た。女は笑みを消さなかった。わたしからは笑みを浮かべる余裕は消えていた。「……どうするの?……わたしとまだヤりたいの?」女が言った。「あの女よりヤりたいの?……ねえ、あの女とわたしと、どっちがエロい?……んっ……」
女の口をまた自分の口で塞ぐ。自分の精液の塩辛い味がしたが、気にせずにそのまま女をベッドに仰向けに押し倒した。「んんっ………あっ………」首筋を吸ってやった。跡がつくくらいに。
そしてそのまま首を伝って鎖骨へと舌を這わせた。両方の手で、溢れかえらんばかりの乳房を、親の敵みたいに揉み倒した。女の乳首が硬くなってくると親指と人差し指でつまんで執拗につねりあげた。
「あうううんっっっ!!!」びくん、と女が背を反らせる。
両方の乳首を転がしながら、女の肌の上を……鳩尾から丸型のへそへ移動させた……俺の記憶とはまったく違う、妻の身体だった……まず妻の身体とは味が違った。汗の味が違うのだ。香りも違った。その汗の中に、あの剥げた小男が嘗め回した跡があるかもしれない。そう思うと、さらに亢奮した。それを確かめるように、へそから腰へ舌を進め、女の陰毛……これも妻の陰毛とは、生え方も毛の質も量も全く違っていた……に覆われた下腹へ向かう。
「……だめっ!!!……それだめっっ!!」
「なんで?……あのオッサンはしてくれないの?」乳房から膝頭に手を移動させて、左右にガバっと開く。「………あのオッサンにはさせて、おれにはさせてくんないのかよ?不公平じゃねーーーか!!」」
「いやあっ!!」女が顔を背ける。
閉じようとする脚を力で押し戻して、じっくりとその部分を観察した。
赤く充血した肉から、半透明の液体があふれ出ている。ぴくり、ぴくりとその部分が反射的に息づくのは、女が恥ずかしがっているからだろうか。女がわたしの妻だというなら……実際、わたしの記憶の中にいる妻は、こうされることをすごく恥ずかしがったが……女が何を恥じているかといえば、ついさっきまで、あの醜い、頭の剥げた、腹の出っ張った中年男に、好きなだけいじくられ、弄ばれ、かき回され尽くしたその部分に残っている“名残り”を見られることなのだろう。それを思うと、ますます亢奮した。やはりわたしはどうかしていた。
「ほら、下の口はまだまだ物足りないって言ってるぜ」と、声に出してゲスなことを言ってみる。
「バカ!クズ!!!」女が当然のことを叫んだ。ますます、陰茎は硬く、熱くなる。
「……欲しいんだろ?……あの親父のチンポで、何回イッたんだ?何回イッたのか言ってみろ!!」
「………アホッ!!…最低!!…超最低!!」女が顔を真っ赤にして、ぷいと横を向いた。「……んんっ!!」コンドームもつけず、先端を浅く潜らせた。
「は………はあ……っ………」女が背を弓なりに反らす。
豊かな胸を強調するように、ベッドの上で反り返っている。女の喉が見えた。声の出ない悲鳴を上げようとする、ぽってりとした唇……まだ、わたしの精液が口の端についている……がぽかんと開いている。女の目は、細くなって……わたしの顔を見ていた。いかにも物欲しげな様子で。ますますわたしの陰茎は固くなった。
「……入れてください……って言えよ!この淫売め!!」
「………くっ………んんっ!!!!」女が人差し指の腹を噛んで、イヤイヤをするように顔を横に振る。
そのせいでぶるぶると震える乳房に、赤い跡を見つけた。
虫刺されではなく、唇で吸われた跡だった。俺にはその部分を吸った記憶はなかった。「ちくしょう……」つぶやきながら、ずぶり、と奥まで突き入れた。
「はああああああっっ………!!!」女がわたしの背中に手を回し、わたしを抱き寄せる。豊かな胸が汗と涎にまみれて、わたしのシャツに張り付いた。体温と、鼓動がシャツ越しに伝わってきた。「……か、か、かたい……」
「……だろ?……そうだろ????」
わたしは腰を動かし始めた。女は狂ったようにあえぎ始めた。ありとあらゆる言葉で女を辱め、罵りながら、腰を動かし続けた。「もう許して」と言われたが、3回立て続けに女を犯した。3回目の射精のあと、いつ眠ってしまったのかは憶えていない。
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