2×2 作:西田三郎


■2×2


 「んんっ!やっ!」女がタオルで千晴の両手首を頭の後ろで縛った
 千晴は女のひざの上に載せられるような格好で、直紀に向かって大きく脚を開かされていた。千晴のひざの内側に、女のゴツいひざがこじ入れられ、千晴が脚を閉じようとするのを阻んでいる。
 「…や…」千晴が直紀に言った。かなり意識がもうろうとしている様子だ「…や…だ…見ないで…」
 女の手が千晴の躰を這い回る。女は千晴の躰にローションのようなものを塗りたくった。
 浮き出た鎖骨、小振りな膨らみを見せる胸、色の薄い乳首、平べったい腹の真ん中にある細長い臍、肋骨のみえる脇腹…女の手が塗り込めるように這い回り、次第に千晴の躰は、ぬるぬるとした光沢を増していった。
 「…あ…んんっ…い……い…や…」千晴が躰をくねらせる。
 しかし女の手は容赦を知らず、さらに下半身へと進路を取る。太股の内側から外側へ、膝小僧へ…そしてゆっくりと内股を逆戻りし、剥き出しになった秘所に迫る。
 「…あっ!やっ…!」
 千晴の脚の付け根はすでに別の粘液で潤んでいた。それは真正面にから見ている直紀からもはっきり見えた。女の指が注意深く進み、千晴の秘書から溢れた粘液をすくい取る。
 「ほら、もう、こんなになっとるよ…
 女の指が千晴の目の前に翳された。その親指と人差し指の間に、自分の蜜が糸を引くのを千晴はとろんとした目で見ていた。
 「…気持ちいい?」
 「…き…もち…よく…ないっ…」千晴が女から顔を背けて言う。肩がわなわなと震えていた。
 「そうお…?彼氏はどう思う?こんなになってんのに」
 今度は真正面に居る直紀の目の前で、女の指が糸を引いた
 
 「あ…」直紀は目の前に突きつけられた千晴の快楽の証を呆然と見つめていた。
 直紀も千晴の真正面で、同じように男の膝に乗せられていた。両手首も同じく頭の後ろで縛られている。さらに直紀も、全身にぬらぬらと光るローションを塗りつけられていた。
 千晴に見せつけるように男の膝で大きく開かれた脚の間では、性器が固く隆起していた。それを後ろから伸びた男の手がしっかりと掴み、ゆっくりと淫靡な手つきで扱いている。男のもう片方の手は、直紀の左乳首をいじっていた。両方の乳首は固く尖らされていた
 先ほど男の口の中でしたたかに射精させられてはいたが、見せつけられるように目の前に展開する千晴と女との痴態に、直紀の性器はすっかり勢いを取り戻していた。
 「…彼氏もかなりええ感じやで…。ほら…」男の手が新たに溢れ出した直紀の蜜を先端から掬う
 今度は直紀の蜜が、千晴の目の前に翳される。千晴の目の前で、それは千晴の蜜と同じように糸を引いていた。千晴が顔を背ける。
 「…変態…」千晴がつぶやくように言う「やっぱり…そんな事されるのは好きなんじゃん…」
 「…自分だって…」直紀は千晴にそう言ったが、こんなにも自分が快楽に弱いことは知らなかった。
 「…ホンマやなあ」男が直紀の背中越しに言う「…彼氏、自分より好きものかも知れんで
  男がいきなり、激しい手つきで直紀の陰茎をしごいた。ニチャニチャと湿った音がした。
 「んああああっ……!」直紀がか細い声を上げる。「や…やめ…て…」
 「んっ…くうっ……!」次に高い声を上げたのは千晴だった。女の指が、性格に千晴の陰核を捉えたのだ。「…いやっ!!」
 直紀は好きなように陰茎を扱き上げられ、千晴は陰核を指で嬲り倒された。
 しばらく部屋中を、直紀と千晴の嬌声が満たした。
 
 「…も…もう…許し…て…」先に根を上げたのは、以外にも千晴の方だった。「もう…だめ…」
 目の前で、快楽に完全に屈服させられた千晴の肉体が淫靡にうねっていた。
 直紀は絶頂寸前に追いつめられたところで、手の動きを止められ、今や自分で快楽を求めて腰を動かしている
 直紀はまるで鏡を見せらているような気がした。
 自分の目に千晴の姿が浅ましく淫らに映っているように、千晴の目には自分の姿がこの上なくいかがわしく、淫靡なものに映っているのだろう。
 直紀が今味わっている快楽は、千晴の快楽そのものだった。
 千晴の秘書を嬲る女の手の動きのリズムが、自分の陰茎を擦る男の手の動きに呼応している。
 快楽が背骨を駆け上がり、目の前を白くした。聞こえてくる千晴の声もますます甲高くなる。千晴とともに、直紀は臨海点に追いつめられていた。
 と、その時、男の手が停まった。
 潮が引くように、痺れるようだった快楽が損なわれていく。
 薄目で、千晴の方を見た。
 千晴の秘所に当てられた女の手の動きも、同じように沈黙していた。
 直紀は千晴の腰が、さらなる快楽を求めてゆっくりと弧を描くのを見た。自分の腰も、それに連られるように円を描いていた。この狂おしいまでの快楽を、一刻も早く解放してほしかった。もはやその欲望に対する、罪悪感は完全に影をひそめていた。千晴も同じように快楽の虜になっているのだ。自分だけ同じような肉の衝動を抑えなければならない理由はどこにも無かった。
 「さて、と…」女がそう言いながら、背後から奇妙な物を取りだした。
 それは両端が奇妙な形に膨れた、20センチほどの1本の棒だった。プラスチック製で、薄いクリーム色をしている。それが何らかの性具であることは、直紀にも判った。しかし、それがどのように使用されるのかは、想像もつかなかった。
 「…こんなん、知ってる?」女がその器具を千晴のに押しつける。
 「…やっ!」千晴が慌てて顔を背ける。
 「…彼氏のんよりは、ちょっと大きいかなあ…」逃げる千晴の唇に器具をさらに押しつけながら、女はその器具のスイッチを入れた。モーター音とともに、その器具が小刻みに振動を始めた。
 「やあ…っ!」
 振動する器具が、千晴の唇から顎へ、顎から首筋へ、首筋から鎖骨へ動いた。さらに鎖骨から胸の上を経由して乳首へ。そのまま乳首でしばらく停留し、また下に動く。鳩尾、臍、そして秘所を迂回して、内股へ。
 千晴の腰があからさまに前後に動いた。その腰がその何かの挿入を求めているのは明らかだった。
 「…入れて、欲しい?」女が千晴の耳元で言う。「欲しいんやろ…?」
 「…ん…」千晴は目をしっかり閉じ、上唇を噛み、心の最後の領域に立ちふさがっている何かと闘っているようだった。しかし躰はその意思を裏切り、淫らな波動を描いていた。
 「…欲しいんやろ…?」耳を舐めるようにして、女が囁く。びくん、と千晴の上半身が波立った。「…ほら…正直に言うてみ…どうして欲しい?
 「…い…」千晴の唇が、小さく動いた。「…い…れ…」
 「…何?」
 「…いれ…て」千晴が大きく腰を前に突き出す。
 女が蜜を溢れかえされた秘書の入り口に器具の先端を当てる。
 「…ん…」千晴は肩をすくめて、快楽を待ちわびていた。
 「…いくで」女が、一気に器具を千晴に突き立てた。
 「はあ……っっっつ!!……んあっ!」千晴の声が部屋中に響き上がった。
 突き入れられた性具がもたらす振動に併せて、まるでサンバを踊るように千晴の躰全体が弾けだした。あけすけに縦揺れする腰は、明らかに絶頂解放を求めている。
 そんな様子を見てますます昂ぶりを増す陰茎を、男は容赦なく擦り上げた。
 しかし、いつまで立っても絶頂を迎えることは出来ない。男の手は的確に尚直紀の呼吸を見計らい、巧妙に動いていた。
 「ほら、そろそろ彼氏の方もええ頃合いとちゃうの…」女が言った。
 「そうやな…」男がそれに答えた。
 突然、肛門に触れた指に、直紀は飛び上がった。
 「…やっ!!」
 陰茎を激しく扱かれながら、別の手で肛門の入り口を撫でられる。男の指が、全身に塗りつけられたのと同じローションを肛門に塗り込んでいった。自分の肛門が、ヒクヒクと収縮するのが判る。
 「んんっ!!」いきなり、肛門に指を挿入される。電流のような感覚が走った。「…くっ…」
 男の指がさらに進み、根元まで挿入される。
 「…や…」体内に入り込んだ男のの指先が、何かを探すように動いた。
 「ここか…?」男の指先が、睾丸の裏あたりの、あるポイントを捉える。
 「…やっ!!」直紀の目の前が白くなった。
 瀬戸際まで追いつめられていた筈の陰茎に、さらに濃密な快楽が集結した。ビクン、ビクンと、真っ赤になったそれが脈打つのが見えた。
 男のの指先がそのポイントをまさぐる。男の膝の上で、直紀の躰は跳ね回り、自分の口から出たとは思えないような甲高い声が溢れ出た。
 「…どう…もう、ええんとちゃうか…」女が男に声を掛けた。
 「…そやな…随分、柔らかなったみたいやし…」
 男の指が引き抜かれた。その指が透明で粘りのある液で濡れているのを、はっきりと直紀は見た。
 
 千晴の秘書に突き刺さったままの性具が、まるで千晴の股間から突き出た性器のように禍々しくそそり立っている。男が直紀を持ち上げ、それに直紀を近づけた。
 「…いや…」そうは言ったが、自分の肛門がヒクヒクと痙攣していることは判っていた。
 「…や…め……て…」千晴が呆然と自分の股間を見ながら言う。
 「ほら…いくで」女の手が、千晴の秘所から突き出た性具を掴み、直紀の肛門に当てる。
 肛門から、性具の振動が全身に伝わる。もはや直紀は腰を逃がそうともしなかった。
 「…ん…んんっっっっ!!
 一気に、性具が突き入れられる。
 傷みはまったく無かった。しかし生まれてはじめて味わう、異様な感覚だった。たとえようもない違和感が直腸を満たさし、全身に震度を伝える。
 「あ…あ…あ…」
 千晴が腰を動かし始めた。
 直紀の背骨に、明らかな快楽が駆けのぼっていった。
 今度は、直紀の腰がうねった。千晴も千晴で、独自の快楽を求めて腰をうねらせた。
 「あっ…あうっ…あっ…あっ…んっ…やあっ…くうっ…あっ…」
 派手な声を上げているのは、直紀なのか千晴なのか、もはや区別がつかない。
 直紀はあっという間に射精した。千晴も同時に絶頂を迎えた。
 
 しかし責めは終わらなかった。延々と続く責めに、千晴と直紀はむせび泣いた。
 お互い、何度絶頂を、迎えたのか判らない。
 永遠に続くかと思われる快楽の中で、いつしか直紀は気を失っていた。
 薄れゆく意識の中で、千晴がひときわ高い声で鳴き声を上げるのが聞こえた。
 「…あ…ああっ……ね…ねぇ…もう…もう…許して…」
 

 
 

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