■ウサギ小屋より
下校時、いつものように直紀がウサギ小屋に出向くと、千春の姿は無かった。千春はたまにウサギ小屋の掃除をすっぽかすことがあった。そうなると、すべての仕事を直紀1人でしなくてはならくなるが、ある意味、その方が気楽なところもあった。仏頂面で一言も口を効かない、全く魅力的でない女と一緒に仕事をしているよりは、1人で仕事をするほうがずっとマシだ。
そんな訳で直紀はひとりぼっちで、6匹のうさぎがまき散らした糞を箒でかき集めていた。仕事に没頭しているうちに、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
「おい、オカマ野郎!」
不意に金網の向こうから、呼ぶ声がした。直紀がはっとして振り向くと、金網の向こうに1年上の先輩、島田と大杉がニヤニヤ笑って立っていた。直紀は背筋が寒くなった。二人とも、あまり学校での評判がよろしくない。出来ればこんな人気のないところで顔を合わせたくない二人だった。
しかもこの二人には、詳しくは知らないが、何か変態的な噂があった。、
「ウサギのウンコ集め、楽しい?」島田は太った大男である。いつもニヤニヤしていて、丸坊主の頭を油でテカらせている。
「趣味?ウンコ集め。いつも嬉しそうにやってるもんなあ」大杉が言った。大杉は目ばかり大きい不潔な感じの小男である。いつも話すときは口の両端に唾が溜まっている。「こいつ、変態だし」
「…」直紀は黙って下を向いた。
「黙ってんじゃねーよ。ウサギのウンコ野郎」
大杉と島田が、小屋の中に入ってくる。直紀は思わず、3歩ほど下がっていた。
「なあ、お前って、やっぱり女とか興味あんの?」と大杉。
「あるわけねーじゃん。こいつ、オカマだぜ」島田が好色な笑みを浮かべる。「女じゃ勃たねーんだよ。なあ?ウサギのウンコでないと、興奮しねーんだよなあ?」
「…」直紀はいつの間にか、金網にぴったり背中をつけていた。自分が震えているのが判る。
「…ところでお前ってさ、ほんとにチンコついてんの?」大杉が言った。口の端に溢れている唾が泡立っていた。「見せてくんない?」
「…え」直紀は二人を見上げた。喉がからからに乾いて声が出なかった「…あの…」
「そうだよ。見せてくれよ。チンコ」大杉が言った。鼻息が荒くなっている。
「…あの…」直紀がなんとか言葉を出そうとした時だった。「…えっ…あっ!」
島田が直紀の背後に回り、直紀の両手を頭の後ろに重ね上げた。持っていた箒が横に倒れる。島田との身長差のせいで、直紀のつま先が少し地面から浮いた。
すかさず大杉が直紀の前にしゃがみ、直紀の制服ズボンのベルトを外し始める。
「…やっ…止めて下さい!!」直紀は思わず叫んだ。噂はやはり本当だったようだ。
「大人しくしろって!」大杉。「イイコトしてやっから」
あっという間に、チャックが降ろされ、ズボンを足首まで下げられた。
「いやっ!」
「…なんかコーフンさせんなあ、コイツ」島田が後ろから言う。
「…ほれほれ、パンツも降ろしちゃうぞ」大杉はその通りにした。
ブリーフが足首まで降ろされて、直紀の未発達な性器が大杉の目の前に晒された。
「…」直紀は思わず顔を背けた。
「…ふーん。毛はちゃんと生えてんだ。生えてねーかと思ったよ」大杉がまじましと直紀の性器を鑑賞しながら言う。
「剥けてる?」島田が後ろから聞く。
「剥けてるわけねーじゃん。…そうだな…剥いたるか」大杉はそういって直紀の性器に手を掛けた。
「…えっ?!…やっ…止めてください!」
「ほら、じっとして…」
「…んっ!」
いきなり、包皮が剥き上げられた。激しい痛みが直紀を襲った。敏感な亀頭が外気に触れる。はじめての感覚だった。
「…やっぱ、お前、ちゃんとオナニーとかする訳?」大杉が直紀の剥きあげられた性器を手にしたまま言う。 「…」直紀は真っ赤になって顔を背けたまま、答えなかった。といか、答えられなかった。
「ホラ、聞いてんだよ」島本が後ろから言う。
「…しません…」本当は毎晩のようにしていた。
「…ふーん。どうする?島本さん?」大杉が下から島田を見上げた。
「教えたれよ。知らないらしいし」
「…そうだな。おれたち親切だもんな」
「…え…?…んんっ!」直紀の腰がビクン!とうねった。大杉の指が直接亀頭に触れ、直紀の縮み上がった陰茎を握り、上下に扱き出したのだ。「…ちょっと…やめ…」
「言いながら腰ふってんじゃねーよ。この淫乱」大杉は笑いながら直紀の陰茎を激しく擦り上げた。「ん…なんか、固くなってきたぞ」
事実だった。他人にこんなにまじまじと性器を見られるのは初めてのことだった。恥ずかしさでおかしくなりそうだったが、同時にその羞恥が、直紀の躰の芯を熱くしていた。
「…そんな…あっ…」大杉が刺激を調節し、動きを緩めた。と、思うと、また強く扱いた。
そんな調子で、大杉は微妙な強弱をつけながら、直紀の陰茎を弄び続けた。
直紀は屈辱と恥辱に打ちひしがれながら、必死で大杉が与えてくる感覚を意識の外に逸らそうと、懸命に抵抗した。しかし大杉は微妙な手つきで、直紀の苦痛や嫌悪から快楽への道筋を探り出し、そこを容赦なく堀り立てた。「んっ…くっ…」
いつの間にか直紀は、荒い鼻息を吐いていた。腰が、大杉の手の動きに併せてゆっくりと弧を描き始めた。直紀の性器は言い逃れも聞かないくらい固くなり、上を向いていた。
「なんだあ…?こいつ、しっかり感じてんじゃん」大杉がそう言って激しくさらに性器を擦り上げた。
「んんっ…!」思わず声が出る。「…や…めて…」
「とか言ってなんだよ。もう先っぽべちゃべちゃじゃんか」大杉が親指の腹を使って直紀の性器の先端のぬめりを塗り広げる。
「…いや…」直紀ははげしく首を振った。
しかし大杉は手を緩めない。さらに激しく直紀自身をこすり上げた。湿った音がした。その湿りは自分が分泌したものの音だ…余計なことを考えると、ますます直紀のものは固くなった。
「もう、イきそうなんだろ…?」後ろから直紀を押さえている島田が耳元で囁く。
「…そっ…んな…んんっ」直紀は必死で首を振った。
「でも、もうこんなになってんぜ」大杉が下から言う。直紀が一瞬視線を向ける。激しく隆起した自分の性器越しに、口の両端から涎の筋をたらした大杉の顔が見えた。「ほらほら…ガマンしないで出しちゃえよ」
「んあっ…!」大杉が人差し指の先で直紀の鈴口をまさぐった。鈴口から大杉の指に、糸が引くのが見えた。「…あ…あ…や…め…」
容赦なく擦り上げる大杉の手。直紀の腰はいつのまにか高く持ち上がり、自ら快楽を求めて縦に動いていた。
「ホラ、さっさと出しちゃえよ」島田がまた耳元で囁く。
「ホラ、我慢すんなよ。ほれ、ほれ…」大杉が手を使いながら激しく言葉で嬲り立てる。
「ん…んんっ…………」堪えていられるもの、そこまでだった「あうっ!!」
直紀は激しく射精した。真上を向いていた性器から飛び出した精液は、直紀の鼻まで飛んだ。
「きったねーの…どんだけ出してんだよ」
「溜まってたんじゃねーの、あはは」
大杉と島田がヘラヘラ笑いながらウサギ小屋を出ていく気配がした。気が付くと直紀は、ズボンとパンツをひざまでずりおろされたまま、ウサギ小屋の地面に横向きに倒れていた。
頭が真っ白だった。屈辱を感じるのも、怒りを感じることもまだ出来なかった。
虚脱感が雪崩のように押し寄せ、起きあがる気も、ズボンを上げる気さえも直紀から奪っていた。
と、そのとき、笑い声がした。
女の笑い声だった。直紀ははっとして身を起こした。金網の外を見る。
金網につかまって、千春が大笑いしていた。はじめて見る千春の笑顔だった。直紀は呆然と、笑い転げる千春を見ていた。千春は、涙を流して、子どもみたいな声で嗤っていた。
「…あっはっは…スッゲー笑えたよ」千春は言った。「ほんと、馬鹿みたい」
直紀は、後になって思うと自分でも信じられないが、その時、愛想笑いをした。
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