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百目
作:西田三郎

「第1話」

■鳴門さんの部屋

 「だめだよ…………ほんと。だめ。見てるんだから」そう言いながらも鳴門さんはうっとりと した目で僕に振り返り、厚めの唇を半開きにしている。「お願い、ほんと、見てるんだから……ね、そんなの、だめだよ」
 「……見せてやりゃあいいじゃないですか
 僕はそう言いながらも、膝に抱えた鳴門さんの内股に自分の膝をこじ入れ、太股を大きく開いてやる。
 「やあっ………」鳴門さんが顔を背けた……鳴門さんの目の前にはちょうど鳴門さんの身長くらいいの姿見がある。「やめ……て……ってば」
 しかし姿見に鳴門さんの霰もない姿は映らない。
 何故なら姿見には、白いシーツが掛けられているからだ。
 
 姿見だけではなかった。
 
 まあ真っ昼間から部屋の中でこういうことをしているのであるから、窓のカーテンが閉め切ってあるのはまあ当たり前だが、その両開きのカーテンは中央で しっかりとガムテープで貼り合わせてある。それどころかカーテンの四隅もしっかり目張りするようにガムテープで留められていて……まるでガス自殺で もするかのような有様だ。
 覆われているのは鏡と窓だけではない。テレビには大きめのバスタオルが掛けられ、これもガムテープで固定してある。食器棚のガラス戸には新聞紙が貼りつ けられ、何と壁掛け時計の前ガラスにまでスーパーのチラシが貼ってある。今この状況では見えないが、ワンルームのユニットバスの中にある鏡の前にも……タ オルがこれまたガムテープで貼りつけてあることは確認しないでも判った。
 
 いつもこうだ
 
 最初はものすごい違和感があったものだが、今では僕もすっかりそれに慣れていた。
 
 「すっごい………めちゃくちゃ濡れてますよ、鳴門さん」
 「…………あっ…………んっ………だっ…て………んんっ!!」
 僕はさらにもう片方の膝も鳴門さんの股の間にこじ入れ、覆われた鏡に向かってさらに大きく脚を開かせた。鳴門さんの躰はほんとうにしなやかで柔らか く……ついついいつも、無茶をしてしまう。
 僕はそのまま鳴門さんの大きく開かれた脚の間で半開きになっている部分を、ゆっくりと上下になぞった。びくん、びくんと鳴門さんの腰が脈打つ。
 
 僕はまだ19歳だが、セックスの時は前戯がかなりしつこく、自分でも親父くさいと思わないでもない。
 
 「……あっ……いっ………」鳴門さんが恨めしそうに僕を振り返って睨む「……もう、すけべ
 「……鳴門さんが悪いんですよ、鳴門さんが僕をすけべにするんです」
 「……そんなこと言ったって………あっ……ちょっと、やだ!」

 僕は指を二本使って、鳴門さんの入り口を左右に開いた。
 とても柔らかくて、熱くなっている。開くとさらに濃い粘液が、とろり、とシーツに溢れ出た。
 
 「いやあ……」
 「……すげー。どんどん溢れてきますよ……」
 「も……もう…………変態」鳴門さんはきつく目を閉じてぐったりと僕に躰を持たせかけてくる。「………あっ………ちょっと、ほんと に………だめ……だって」
 「こうするとどうなりますかね」僕はそのまま鳴門さんのクリトリスの包皮を剥き上げると、たっぷりと湿らせた指でその表面をやさしく転が し始めた。
 「…………ひっ…………あ、あ………」
 鳴門さんはとても快楽に正直だ。
 今や鳴門さんは腰をがくがくと上下に振り立て、僕が指を動かすまでもなく自分で快楽を貪欲にむさぼている。僕はこんなふうになる女の人を見るのが大好き だった。正直言って、実際に挿入してからよりもむしろ、こうやって女の人を弄くり回しているほうがずっと楽しい。
 やっぱり親父くさいのだろうか?まあ、楽しいんだからいいけど。
 僕はゆっくりと中指を鳴門さんの中に差し込んでいった。
 「……………く………くうっ」鳴門さんがすごい力で、指を締め付けてくる。
 自分でこんなことを言うのもなんだが、僕の指で攻められる女性は幸運だと思う。
 僕の手の指はまるでピアニストのように繊細で、しかも長い。自分で言うのもなんだが、そのしなやかな動きには自分でも惚れ惚れすることがある。
 僕はきつく締め付けられながらも、その中でゆっくり弧を描いた。
 鳴門さんの躰が激しく僕の膝の上で緊張する……さっきまで僕にぐったりとしなだれかかっていたしなやかな躰は、今や胎児のように丸く、小さく縮こまって いる。
 
 そんな絶妙な反応を見る度に、僕は改めて鳴門さんのことが好きになった。
 
 「………ねえ、見えてない?」いつもと同じことを、鳴門さんが聞く。
 「見えてませんよ」いつもと同じ答えを、僕が返す。
 「……ほ………ほんとに、見えてない?」いつものように……鳴門さんはしっかりと目を閉じている。いつものように……その声は囁くよう で、少し怯えているように聞こえる。
 「見えてませんってば」鳴門さんの耳元で囁く「鏡も窓も、テレビも、何もかも大丈夫ですよ」
 「………ほんと?」
 「ええ」
 「……じゃ………挿れて」ほんの少しだけ薄目を開けて、目の端で鳴門さんは僕を見つめる。
 
 鳴門さんがベッドの上で前に手を突き、お尻を突き出してくる。
 正面には、シーツを被ったままの姿見がある……鳴門さんはそれでも、鏡から顔を背けるようにして……僕の次の動きを四つん這いのまま待っていた。
 逸る手でコンドームを装着して、鳴門さんの案外肉感的なお尻に手を添える……鳴門さんは全体的にやせっぽちだが、お尻は豊かだった。僕はいつもながらま すます鳴門さんのことが好きになる。
 「はんっ
 そのまま、一気に奧まで押し入れた。
 鳴門さんの背中がくにゃっ、と反り返り、押し入れた入り口からは僕の肉棒の体積ぶんの粘液が溢れ、内股を伝う。
 「…………きつい………今日はまた一段ときついですよ……」
 僕は意地悪をして挿れたまま動かさないでいた。これもまた、いつもの意地悪だった。
 はじめのうち鳴門さんはゆっくり大きく息をしながら我慢しているが……やがて観念して、遠慮がちに前後に動き始める。僕はそれを待った。
 「ねえ……ほ……ほんとに…………見えてない?
 「……大丈夫ですよ」
 
 このやりとりもいつもどおりだった。
 
 僕が激しく動きはじめ、鳴門さんもそれに合わせてくねくねとこの上なくいやらしい動きを見せてくれた。鳴門さんは激しく喘ぎ、泣き声を上げながらも、覆 いの掛かった鏡からはずっと顔を背け続ける。どんなに体位を変えても……鳴門さんは覆いのあるテレビや、食器棚や、時計からは、ずっと顔を背け続けた。
 「………見てない?ほんとに見てない?」何度も何度も、鳴門さんは僕に聞く。
 「大丈夫……大丈夫ですって」
 「……やだ………見てる………見てるよ……」せっぱ詰まっていく呼吸のなか、途切れ途切れに鳴門さんが囁く……これもいつものことだった「……絶対…… 絶対見てるよ………」
 
 いつも、これがイくまで続く。
 僕はあまり、深く考えないことにしている。
 

 

<つづく>

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