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童貞スーサイズ
第二章 「
ウェルカム・トゥ・ニルヴァーナ



■第16話 ■ Thrill Me, Kiss Me, Kill Me

  両手首をそれぞれの両足首に戒めていたガムテープが外され、芳雄はベッドの上に腹這いに投げ出された。
  肩に引っかかっていたワンピース、すでにホックを外されていた姉の秘蔵のブラジャーもはぎ取られた。
 芳雄が今、身につけているのは前髪を止めているパンジーのヘアピンだけだ。
 その間、続けざまに“ドウ子”のカメラのフラッシュが光る。
 網膜に刻みつけられるフラッシュの残像と、薬物によってますます沈滞していく意識が、芳雄から現実感をさらに奪っていった。
「自分で腰だけカクカク動かしてるよ」大西が嘲笑う。「この歳とこのかわいい見かけでこんなにやらしい動き……この子、金の卵よ」
 芳雄はもう何と言われようと気にならなかった。反論はおろか、否定する気さえ起きない。
 
 “はいはい、いやらしい子でございますよ” まどろみの中で、芳雄は思った。
 
 そのまま、自分で腰をうねらせてシーツの上に性器をこすりつける。
 大西、大柳、“ドウ子”の嘲笑が聞こえてきた。
 すべてがどうでも良かった。
 それはもはや、隣の部屋から……いや、別の世界から聞こえてくる声に等しかった。

 「自分でイくつもりなの?」“ドウ子”がそう言ってまたデジカメのフラッシュを焚く。「悪い子だよねえ……だれが勝手にそんなことしていいって言った? ……ねえ、あんた。聞いてんの……答えなさいよ?」
「……ほんと、悪い子だよこの子は」大西が芳雄の尻を撫でながら言う「今日のあんたには、そんな権利はないんだからね。勝手にイッたりしたら、あたしら、あんたのこと殺しちゃうかもよ……それでもいいの?」
 
 冗談なのか、本気なのか、さっぱり判らない。

 しかし……そう言われても芳雄は腰の動きを止めることができなかった。
 殺される?……上等だ。
 このまま射精を許されないくらいなら、死んだ方がましだ。
 これまでの人生で、これほど命がけで射精を求めたことがあっただろうか? ……いや、ふつうは命がけで射精を求める機会なんてめったにない。
 今、芳雄は強烈な快楽の解放を貪欲に求める亡者だった。
 射精を許されるなら、たとえ殺されても構わないと思っている。
 命と引き替えになるものなど、この世には存在しないと思ってきた。
 いま、芳雄が命と引き替えにしてまでも獲得したいもの……それは愛でも夢でも希望でもなく、たった一回の射精だった。
 信じがたいことではあるが、いまはそれだけが芳雄の願いだ。
 全身の細胞がそれを求めている。
 
 「勝手にイっちゃわないようにさ、アレ出そうよ」
 ドウ子が言う。声が少し上擦っていた。
 
 シーツにへばりついていた芳雄を大柳が引き剥がし、仰向けに転がす。
 臍の真下まで先端を伸ばし、屹立した陰茎が、ドウ子、大西、大柳の目に晒される。
 もはや躰をよじってその視線から逃れようとす る気力さえ無かった。
 どの顔もかすんではっきりとは見えなかったが、芳雄を嘲笑っていることは明らかだった。
 芳雄はせめてもの抵抗として、自分の目を閉じた。
 
 と、芳雄の性器が持ち上げられた。
 ビクッと全身を震わせる間もなく、陰茎の根元が何かに強く締め付けられる。

「……えっ?」
 恐ろしいまでの圧迫感に、固く閉じていた目を思わず見開いた。
(そ、そんな……)
 肉茎の根元を、黒く太い輪ゴムのようなものががっちりと締め付けている。
 亀頭が、陰茎が、みるみる赤黒く変色していくのが見えた。
 下腹の奥で燃えさかっていた炎は、性器そのものから後退し、臍の下あたりでせき止められる。
「くうっ……」
 快感を解放されることを封じられた苦痛に、芳雄の身体はベッドの上でのけぞり、アーチを描いた。
 すかさず大柳が芳雄の性器にスプレー缶を近づけ、得体の知れない液体を一吹き噴射する。
 気も狂わんばかりの痺れが芳雄を襲い、臍から下の感覚が完全に麻痺した。
「ああああ………あ」
 大量の涎とともに、情けない喘ぎと泣き声が口から零れる。
 意識が遠のいた……しかし、下腹の奧で荒れ狂う快感の暴動が、芳雄が意識を失うことを許さない。

 全身に電気ショックを流されたかのように、芳雄の躰はベッドの上で跳ねた。その様子を、3人の陵辱者は嘲笑と拍手で迎える。
 もはや芳雄には自分の意思でできることは何もなかった。
 解放の途は閉ざされて、永遠に続くかのような苦悶だけがある。
 決して大袈裟ではなく……救いは“死”にしか見いだせないような気がした。

 フラッシュが何度も瞬く。

 ドウ子はケラケラと笑いながら、ベッドの周りを何周もして、あらゆる角度から悶え狂う芳雄の姿をカメラに収め続けた。
 やがてベッドに大西と大柳が登ってきた。
 大柳は芳雄の右側に寝そべり、芳雄の右乳首を指で転がした。
 大西は左側に位置し、もはやグロテスクなまでに変色した芳雄の性器をゆっくりと前後に擦った。
 芳雄の喉は枯れ、もう悲鳴すら出てこない。
 
「……知ってる? ヤギを去勢するとき、どうするか?」 “ドウ子”はカメラをベッドの上に放り出すと、猫の仕草で芳雄の躰の上を這い上がってきた。 「……こんなふうにね、キンタマと竿を、ヒモで縛るのよ。そしたら、そこに血が通わなくなるじゃん? そのまま、ヤギのアソコは腐って死んじゃうの。それで感覚が なくなった時に…………」

 今や“ドウ子”は芳雄の目の前に顔を近づけていた。
 人差し指となか指を芳雄の眼前に翳し、ハサミの形を作る。

チョキン!! って切っ ちゃうわけ……」
「……ん………あ……」
 ヤギの去勢の話など、今の芳雄には本当にどうでもいい話だった。
「あんたにもそれをしたげようか? ホントに女の子になっちゃう?……どう? そうなりたいんでしょ? あんたも、あたしみたいになりたいんでしょ?」

 ドウ子の目はぎらぎらと輝いていた。奥で花火が散っているのが見えるようだ。
 まるで幼児が、昆虫をバラバラにしているときのような表情だった。

 彼女は狂っているのだろうか……? 両側から芳雄を責め続ける、大西や大柳たちと同じように。
 あるいは、マリアのように。樋口のように……そして愛のように。
 ……いや、ほんとうは誰も狂ってはいないのだ。
 芳雄は改めてそのことを思い知った。
 自分が勝手に、自分からそういう連中の世界に足を踏み入れただけの話だ。
 
 ドウ子が今度は逆に、ゆっくりと芳雄の躰を這い降りていく。
 そして、大西にいたぶられ続けている芳雄の性器に、そっと触れる。
「んんんっ……!」
 これまでとは全く違う衝撃が、芳雄を襲った。触る手が違う。それは、ぞっとするほど冷たい。
「……どうして欲しい?」
 ドウ子が囁く。
「………い………」もはやそれ以外に言うべき言葉はみつからない。「……い……か……せて……」
それはダメ
 ドウ子がそう言って芳雄の性器を指でぱちん、と弾く。
「うっ……ん」
「………それ以外だったら、どうして欲しい?」
 
 考えるまでもなかった。
「……だ………だったら……………………殺して………」
 それは頭脳からではなく、全身の細胞からの回答だった。
 
「いいよ」ドウ子は満足そうだった。多分、この答が“正解”だったのだろう。「……殺したげる」

 いきなり、ドウ子が芳雄の両脚を持ち上げた。まるで赤ん坊のおしめを替えるように。

 ドウ子は細い中指をそのすこし厚い唇に忍び込ませ、ゆっくり引き抜いた。
 その唾液に濡れた指は、芳雄がこれまでの人生で見てきたものの中で、一番いかがわしいもののように思えた。

「いくよ……」
 ドウ子の中指が、芳雄の睾丸の裏から滑るように、後孔の入口に到達する。
「すごい……もう、こんなにヒクヒクしちゃってる」ドウ子の言葉に、大西と大柳は含み笑いを漏らした。「ああもう………あんた、ほんとうにかわいい。もう最高。あたし、あんたのこと……ほんとに好きになっちゃった」
「………あ」ゆっくりと、“ドウ子”の指が直腸に侵入してくる。芳雄の肛門は、それを誘い込むように素直に受け入れた。「……あ、あ…………」

 根元まで入ったドウ子の細い指が、体内で蠢いている。
 下腹でせき止められていた性感の濁流が、新たな突破口を見つけたかのようにドウ子の指先がに集中する。
 芳雄の体内で、ドウ子は“何か”を探してい た。恐らく、全ての男性が備えている何か致命的なポイントを。
 ドウ子はそれを知り尽くしているようだった。
 まるで手術台の上で、麻酔なしに外科手術を受 けているような気分だ。
 しかし、いずれにせよ、間もなくこの無間地獄は終わるのだ……芳雄は静かに目を閉じ、すべてを“ドウ子”に任せた。
 
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 ついに、ドウ子の指先がその部分に触れた。
 と、だしぬけに、肉茎の根元を締め付けていた戒めが解かれる。
 ぐいっとドウ子の指が曲がり、その部分を捉えて、抑えた。
 あまりの感覚に、芳雄の躰はベッドの上でブリッヂを描いた。
 意識が打ち上げられる。
 部屋の風景も、大西と大柳の嘲りも、ベッドのクッションの感覚も、すべてが綺麗に消え失せる。
 世界には“ドウ子”と……いや、“ドウ子”の指先と、その部分だけが残った。
 自分の躰すら、どこかに消えてしまったようだった。
 その致命的なポイントだけを世界に置き去りにして。
 
 やがて、その感覚すら失われた。
 
 何も聞こえず、何も見えず、何も感じなくなった。
 これが“死”なんだろうか。
 そんな思考すら、瞬く間にかき消された。
 
 最初に戻ってきた感覚は触覚だ。
 胸に飛び散る粘液の熱さだった。
 それが自分の精液であることに気づき……次第に芳雄の感覚は下界に舞い戻っていった。
 射精感はなく、胸元や顔にまで飛び散る精液の熱さだけが、芳雄を現実に引き戻していく。
 胸に降り注ぐ精液は、一向に止む気配がなかった。

 次に聴覚が帰ってきた。まず聞こえたのは、甲高い自分の悲鳴だった。そして、大西と大柳の嘲笑。

 そして、いまだに直腸内にとどまり続けていたドウ子の指の感覚が戻ってきた。
 ドウ子は、これでもか、とばかりにその部分を念入りにこね上げ続けている。
 精液の雨は止まなかった。

 最後に、力任せに鞭打たれるような激しい射精感が襲ってきた。

 芳雄は悲鳴を挙げ続けた……いくら悲鳴を上げ、ベッドの上でもんどりを打とうと、射精感と肉茎の激しい律動は収まらない。

「…………お…………おね……が……い」芳雄は辛うじて言った「こ……ろ……し……て」
「見える?」ドウ子が顔を寄せてくる。「何が見える?」

 そう聞かれても、何も見えない。

「……殺してくれ!!!!」芳雄は叫んだ。
「聞いてんのよ!! ……何が見える? ………ねえあんた、何が見えるの?」
「ああ…………うっ」答えは無かった。「お、おっ………おねが………ころして」
「…………何も見えないの?」
 ドウ子”が呟く。どこか不安げな声だった。
「………殺して………」

 やがて、射精感と律動は急速に遠のいていき、芳雄はまたも真っ白な無に戻っていった。
 辿り着いたのは期待していた“死”などではなく、ふつうの安らかな眠りだった。



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