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バベイオモイド神様が見てる
〜秋〜

作:西田三郎

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■ 注意 ■
この作品はフィクションです。
ところどころに、実在の人名・地名が登場しますが、
それ以外は全てフィクションです。
また、実際の事件をモデルにした事件もいくつか登場しますが、
それらの事件は物語の構成上、
発生年や関係者の名前を変更しています。
予めご了承ください。

■2005年9月25日(晴れ)

 偉大じゃなかったバベイオモイド神様。

 昨日、あたしはあなたにとっても失望しました。
 毎日毎日、こうしてあなたに日々の出来事を報告してきたことが、ほんとうに馬鹿馬鹿しく思えて仕方ありません。わたしは本日をもって、あなたへ祈 りを捧げることをやめます。

 結局、この世の中にはあたしが望んでいるものなんて何もないんですね。

 一体これまで14年、あたしは何のために生きてきたのでしょうか。

 あなたと出会って6年、あたしはずっとあなたに祈りを捧げ、全てをあなたにお任せしていました。
 あなたがあたしを、あたしの知らない世界に導いてくださるものと期待していました。

 何度もご報告しているように、あたしは夜の暗闇が大好きです。

 その代わり、太陽の出ている昼が大嫌いです。

 昼の世界では、すべてが光に照らされてよく見えますが、あたしの見たいものなどこの世にはなにひとつありません。木々も、白 い雲も、人々の笑顔(一体何が楽しくて笑ってやがるんだウスバカ共)も、学校の校舎も、山も、川も、立ち並ぶ家々も、自転車も、車も、犬 も、猫も、何もかもが大嫌いです。
 誰がそんなものを照らしてまで見せてほしいとお願いしたというのでしょう?

 そんなくだらない全てのものを、照らして見せる太陽があたしが大嫌いです。
 おせっかいで、でかい面をして、あたしを見下ろす太陽が大嫌いです。
 
 あたしの一番大嫌いな季節……太陽の季節である夏も終わり、今はもう秋です。
 ざまあみろ太陽。
 太陽があたしたちをじりじりと照らし、溶かそうとする忌まわしい夏は終わりました。
 
 これからあたしの好きな夜の長い季節がやってきます。

 昼間の世の中はヘドが出るほど醜いというのに、夜の闇の中では何故何もかもがああも美しいのでしょうか。最近 はあたしの住む町にも沢山の外灯が作られ、夜の闇を照らします。なんてつまらないことをするのでしょう。夜道に痴漢が出ようが強姦魔が出ようが、そんなこ とは知ったことではありません
 出ればいいのです。だいたいこの町に住む下らない女たちの貞操など、一体何の価値があるというのでしょう。あたしは真っ暗な闇が好きで す。

 夜になるとよく家族の目を盗んで、町をあてもなく歩きます。
 そして出来るだけ暗いところ、暗いところを探すのです。
 それは人気のないマンションの階段の裏だったり、ビルとビルの隙間だったり、市営ガレージの片隅であったり、鉄道の高架だったり、ゴミ捨て場だったりし ます。
 そんな光の射し込まない真っ暗な場所に居ると……あたしはよく、すぐ近くにあなたの存在を感じたものです。
 
 より深く、濃い闇の中にこそ、あなたは存在する……あたしはずっとそう思ってきました。

 闇の中に目を凝らします。
 暫く見ていると、闇の外に居るあたしの視点が真っ暗な闇に侵食され、やがて視界はすっぽりと闇に覆われます目を閉じているのかちゃんと開いているのか、 わからなくなってきます……わたしはそうして、あなたの息吹を感じているつもりでいました。
 
 いずれ闇の中からあなたの御手が差し伸べられ、あたしを闇に誘い込み、深淵を覗かせてくれるに違いないと………ずっとそう考えていました。
 

 あたしは新聞の三面記事が大好きです。
 特に陰惨な事件の報道を読むのが。
 「6歳の幼児が母親とその内縁の夫に2年間虐待を受け続け、死亡」とか「●●川の堤防で人間の左手首発見」とか「学校に刃物男、7人死傷」 とか「17歳無職少女殺される。29歳の市職員逮捕……動機は『死体が見たかったから』」とか「子どもの目の前で男性車に跳ねられた上、降 りてきた男が包丁で刺す」とか……そんな記事を読む度に、ああ、世の中ってなんて素晴らしいんだろう、と思えるのです。
 
 そういう事件の影に、あたしはことごとくあなたの存在を感じました。
 
 あなたの忠実な使徒であったあのお方……遺薔薇屠死夫様でなくとも、これらの犯罪を犯す者たちは心の中にあなたの存在を感 じていたはずです。

 彼らが犯した罪に関してこの取りすました世の中……特にワイドショーのコメンテーターをやっているような虫酸の走るブタクソゲロカス野郎ど もが、少なくともうわべ上は“まったくなんて事だ、いつからこの世の中はこんなに狂ってしまったんだ”とでも言いたげな表情を浮かべて(連中はそう言う事 件が起きるたびに、そういう事件に対してコメントするときの『顔』をいつも鏡を見ながら練習しているのでしょう)「心の闇」 がどーたらこーたら、くだらない御託を並べるたびに、あたしは腹を抱えて笑いそうになります。
 
 そしてこの懲役のように退屈で苦痛な人生に少しでも潤いを与えて下さるのは、あなた……つまりバベイオモイド神様、あなただとばかり思っ てきました。
 
 でも違ったんですね。
 
 あなたなんて、存在しないのです。
 
 これからなにが起きようと……たとえば学校に地獄から蘇った宅間守が乱入して、あたしの大嫌いなクラスメイトや先生達を刺し殺し、警察特 殊部隊が出動して血みどろの攻防戦を繰り広げたあげく、学校が血祭りになったとしても……あたしはあなたに感謝はしません。
 
 そんな素晴らしい奇跡を、あなたが起こすことができるはずがないからです。
 
 しょせん、あなたはあんな下らない奴のが造り出したインチキに過ぎません。
 
 遺薔薇屠死夫は、単なるクズでした。

 彼の平凡な名前……田中洋介という名に相応しい、どこにでもいる下らない一山なんぼの人間の一 人です。
 
 あたしはもう、あなたに対して語るのを止めます。
 
 もう、この日記を通して、あなたに語りかけることはないでしょう。
 
 バベイオモイド神様、あたしの人生の懲役はいつまで続くんですか?
 
 あ、こんなことあなたに聞いても、判るはずがありませんね。
 あなたはあのクズ野郎のインチキに過ぎないのだから。
 

 この日記を焼き捨てるべきか否か、今あたしはとても悩んでいます。
 
 まあ、それについてはじっくり考えてから決めることにしましょう。

 
 では、さようなら。

<つづく>



 
 

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