愛無き世界に In a World Without Love
〜中国自動車道中1少女手錠放置死事件〜
第三章「ロスト・ハイウェイ」
妄想:西田三郎■2005/06/02 (木) 無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜79
「ロスト・ハイウェイ-35」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。「ええ???」ククケンは我が目を疑いました。
「降ろしてええええええええええええええ!!!」手が自由になった少女は、暴れ、叫び続けました。
「お……降りれるもんやったら降りてみい!!」
アホなことを言うものではありません。
悪いことは重なるものです。
ククケンは車のスライド式ドアのロックを、掛け忘れていました。
少女は自由になった手でスライドドアをガラリと開けると、そのまま時速80キロで走行していたククケンの愛車から、ぴょん、と飛び降りました。「ええええ?????」ククケンはまたまた我が目を疑いました。
一瞬、車を減速しようかと思いましたが………しませんでした。
少女が大けがを負ったことは確かです。ひょっとすると、死んでしまったかも知れない。いや、大けがを負っているなら、車を止めて救急車を呼ぶべきだろう。そうしすると、少女は助かるかも知れない。しかし、少女は助かっても、自分はどうなる?……12歳くらいの少女に援交を持ちかけ、手錠で拘束し、レイプしようとしたことが明るみに出たら………休職中とはいえ、教師の仕事を失うのは明日の朝お日様が東の空から昇ってくることより明かです。
ククケンは、教師の職を失うことよりも、人殺し野郎になる方を選びました。
スライドドアが半ドアのまま、ククケンの車は真っ暗なハイウェイを疾走します。
人殺し野郎になることで、彼は何を失ったか?
手錠をひとつ失っただけです。
ノノ子たんのバッグや携帯、ビーチサンダルと、使用した催涙スプレーを始末したククケンは、事件の1ヶ月後、新たに催涙スプレーを偽名で購入し、8月9日には行きつけのレンタルビデオ店で「逆恨みの代償 姦魔輪姦」をレンタルしています。彼は血も涙もない異常者か……?……いいえ。性的なコンプレックスを抱えた、自己中心的でワガママな小心者、それ以上でもそれ以下でもありませんでした。
<次回第三章最終回>
■2005/06/03 (金) 無き世界に(第三章) 〜ロスト・ハイウェイ〜最終回
「寂しい場所」
※この物語は、実話をもとにしたフィクションです。9割8分くらいまでが妄想です。手錠をしたまま時速80キロで飛び降りたノノ子たんは、頭を庇うことができず、路面で後頭部を強打しました。頭蓋骨がパックリと割れ、ノノ子たんは意識を失いました。そのままノノ子たんの身体は高速道路上を数十メートル転がり、道路の路肩に下半身をはみ出させるような形で止まりました。地面で擦れたことにより、体中に擦過傷ができましたが、背中から尻にかけては、皮膚がベロンとめくれたような状態でした。割れた頭蓋骨と背中から、夥しい血が流れました。
そして7月24日22時30分、道路で意識を失って倒れていたノノ子たんの脚を、杵島さん(仮名:53歳)の運転する10トントラックが挽きつぶしました。ノノ子たんの左大腿部は粉砕骨折し、そこからの裂傷が彼女の血液をさらに奪いました。
ノノ子たんが覚えているのは、ククケンの車から飛び出した、あの瞬間までです。
気が付けばノノ子たんは、真っ暗で寂しい場所にいました。
どうも高速道路のようですが、それにしても車の姿は見えず、
辺りは暗く、しんとしています。周囲を見回しても、何も見あたりませんし、何も聞こえません。
車から飛び出したのに、なんでこんなところに居るのでしょうか。
“一体、ここはどこなんやろー……?”ノノ子たんはとりあえず歩き出そうとしましたが、方角もさっぱりわからないので、諦めました。
そしてその場所に座り込んで、いつもどおりにのんびりこう考えました。
“なんやようわからんけど、…ここで待ってたら誰か見つけてくれるやろー…”
少なくとも、ここがどこであるかを教えてくれる人くらいは、通りかかるかも知れません。
そう思ってノノ子たんは、待ち続けました。
そして今も、そこで待ち続けています。
<<第3部完>>
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