インベーダー・フロム・過去
作:西田三郎
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「第1話」■はずかしい夢
わたしはたまに、恥ずかしい夢を見る。
夢の中でわたしは、髪を短く切っていた、二十歳の頃に戻っている。
上はノースリブのピッタリしたTシャツを着て、下にはジーンズを履いている。
狭い、小屋みたいなものの中で、わたしは汗をかきながら誰かを待っている。
待っているのが誰なのかはよくわからない。なかなか待っている相手が来ないので、わたしはイライラしてくる。外からは蝉の声が聞こえて、 小屋のトタンの隙間からは夏のきつい日差しが入り込んで来る。わたしは全身に汗をかいている。Tシャツは汗でべとべとになり、ジーンズにも汗がしみていて とても不快だ。
夢の中なのに、そんな皮膚感覚だけは妙にはっきりとしている。
わたしはイライラしている。煙草に火をつける。
禁煙してから3年になるけど、この夢の中ではわたしは煙草を吸っている。
1本吸い終えると、小屋のドアがだしぬけに外から開けられる。
ドアの外に立っているのは男。顔は外からのまぶしい光のせいで影になって見えない。
誰だかわからない男。しかしこれがわたしの待ち望んでいた男なのだ。
わたしが男に抱きつくより早く、男がわたしを乱暴に小屋の奥に突き飛ばす。男は自分も部屋に入ってきて、ドアを閉める。狭い小屋の中には荒いわたしの息 づかい。男の息づかい。そして二人の汗が混じり合った匂い。わたしは男の動きを待つ。期待と興奮で、胸をどきどきさせながら。
男が襲いかかってくる。
わたしを抱きしめ、汗まみれの首筋に吸い付き、汗を舐め取る。
「汚いよ…あっ」わたしはいつも夢のなかでそういいながら敏感に反応する。
男はわたしの弱い部分を知り尽くしているようで、首筋をひとしきり舐め上げると、そのまま触れるか触れないかの微妙な舌使いで、耳たぶまで唾液の 筋を作る。男の唾液とあたしの汗が首筋で混ざって、その部分がだんだん熱くなってくる。
男がいきなり耳たぶを甘噛みする。
「んっ……」
わたしが身をすくめると、今度は男の舌先が耳の穴に入ってくる。
「あっ…んっ…」
わたしがくすぐったいような、もどかしいような感覚に身をすくめているうちに、男の手はわたしの下半身まで降りてきて、ジーンズの前ボタンを外す。
「んんっ…やっ…うっ…」
男の手を払いのけようとしたわたしの手を男の汗ばんだ手が容易く振り払い、抗議しようとした唇は男の湿った唇で塞がれる。男の舌がわたし の口の中に入ってくる。男の長い舌があたしの下をからめ取り、好き勝手に弄ぶ。そうしながら男の手はわたしのジーンズのジッパーを下ろす。すかさず中に手 が入ってくる。
「んんっ…」
男の指が、わたしの下着の上から、穴の上端あたりをしっかり捉えて、その部分を捏ねるようにゆっくりと動枷始める。わたしはその時点で、もうかな り濡れている。
「んっ…っく…んんっ…」
わたしは男の口に口を塞がれたまま、どうしようもなく腰をくねらせる。男の指使いに併せて。
男はそうしながら、余った手を、汗でねばつくわたしのTシャツに差し入れ、そのまま背中に手を回してブラのホックを外す。突然解放された乳房がカップか らこぼれ、素早く前に回された男の手で受け止められる。男の指がわたしの右の乳房をゆっくりと揉み、すでに立ち上がっている乳首をつまむ。
男がいきなり口を離し、わたしの顔を覗き込む。
その時点でも、何故か男の顔は逆光になっていて、見えない。
「欲しい?」男が低い声で言う。
「…」わたしは男を恨めしげに見上げて、黙っている。
「欲しいんだろ?」
男の両手が同時に激しく動く。乳首の先を指の腹で撫でられ、クリトリスは下着の上からねじ回される。わたしは思わず低い悲鳴を上げて、男 にしがみつく。ジーンズの中は、汗と、溢れ出たわたしの液でねとねとしてとても不快だ。
「お願い…」わたしはか細い声で男に言う。
「お願い…何だ?」男がわたしの耳元に口を当て低い声で囁く。
「お願い…して」わたしはさっきより小さい声で辛うじていう。
「して?…何を?」
「…何って…アレを……」
「アレって、何?」男はどこまでも意地悪にあたしを責める。
「…」
その間も、男の両手はわたしの胸と股間に刺激を与え続けている。
「…い……入れて…」夢の中で、最後にはいつもそう言ってしまう。
男が自分のズボンのジッパーを下ろし、肉棒を引きずり出す。
男に右手を取られ、それを握らされる。
それはとても固く、熱く、まるで脈打つようにビクン、ビクンと震えている。
「これが…欲しいの?」男が聞く。
「ああ…」わたしはいつのまにかその熱い物体を前後にしごいている。「ほ…欲しい」
「よし」
わたしはそのまま荒々しく裏返され、小屋の壁に手を付かされる。男の手が荒々しくジーンズとパンツを一気に膝まで引き下ろし、地面に踏みつける。
腰を後ろに思いっきり引っ張られ、わたしはますますお尻を突き出すような恥ずかしい格好を取らされる。
さらにTシャツを胸の上までブラジャーと一緒にたくし上げられる。
乳房はは重力に従って乳首を地面に向ける。
「ああ…」夢の中で、わたしはいつも目を閉じ、それでもなおかつ腰をゆっくりと振って男の動きを待つ。
男の手がわたしの尻の丸みを味わうようにゆっくりとなで回す。その後、両手は前に回り、片方の手は下向きになったあたしの乳房をすくい上げてゆっくりと なで回し、もう片方の手は脚の間の深いところに分け入って、核心を探り当て、その包皮を容赦なく剥きあげる。
「んんっ…」わたしはさらに腰を高くあげる。
「いいか?」男が聞く。
「入れて…」わたしは身も蓋もない返事をする。
男の先端が、液を溢れさせているあたしの入り口にちょん、と触れる。
全身に鳥肌が立って、お尻はさらに高く持ち上がる。
男がぐいっと熱い先端を押しつける。
わたしは迎え入れるように男の先端にお尻を押しつける。
と、いつもそこで目が覚める。決まっていつも深夜の3時だ。
目を覚ました時はいつも汗まみれで、身体全体がすごい熱を帯びている。
股間に手を伸ばす…いつもそこは下着を換えなければならないほどべちょべちょになっている。
と、隣で安らかに寝息を立てている夫の公一のことが意識に戻ってくる。
そうか、わたしは3年前に結婚してたんだっけ。
そのことを改めて思い出したような気がして、わたしは安心と、そしてそれとはまったく違う別の感覚を味わう。それがなんなのかは、よく判らない。
公一を起こさないように、そっとベッドから抜け出て、下着を換えにいく。
夢の中の男が誰なのかは、全然わからない。<つづく>
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