姑獲鳥の夏

〜わからん子は置いていきますよ。義務教育やないんやからね〜


2005年 日

監督: 実相寺昭雄


世の中には2種類の映画があります。ひとつは15分で済む話を2時間に引き延ばしている映画と、10時間くらいの話を強引に2時間に凝縮している映画。ちょうどいい映画、というのにはわたくし産まれてこの方巡り合ったことがありません。3時間以上の映画……?もうそうなると映画じゃないですね。結婚式の仲人のスピーチのほうがまだマシです。映画は短ければ短いほどいい、というのはウィリアム・フリードキンの言葉ですが全くもって同感です。
はてさてこのジッソージ映画はどうでしょうか。すばらしいほどの凝縮ぶりです。
思えば「帝都物語」。“加藤が来るぞおおおおおおおおお!!!!!”と大騒ぎする土御門家の面々の大喧噪で幕を開けるあの映画、“加藤って誰?”という我々観客の疑問を余所に、映画はあっと言うまに関東大震災を通り越してH.R.ギーガーのデザインのハリボテと原田美枝子の死闘を経、観客の戸惑いを根こそぎ道連れに全速力で収束します。
わけがわからないが、とりあえず退屈はしない。一見静かな佇まいを見せるこの「姑獲鳥の夏」でもそういった『わからん子は置いていきますよ。義務教育やないんやからね』というテント兄さん的ジッソージズムは健在です。
ツツミにもアベちゃんにもミヤサコにも、あまつさえ篠原涼子にまでひたすら置いてけぼりにされて戸惑い続けるナガセ君の姿は、観客の心情を十二分に代弁するとともに、ハンチング+吊り半ズボンというこれまたジッソージィな少年愛テイストを担当する田中麗奈さんのおかげで原田知世さんはまったく記憶に残りません。

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