1980 仏・西独
監督:アンジェイ・ズラウスキー
あれは一体なんだったんだろう…?
日常生活の様々な局面において、その時には大して注意を惹かれなかったのに、後で思い起こしてみたとき、一体あれはなんだったのか?…とその時にちゃんと確認しなかったことを一生後悔することがあります。
例えばかれこれ5年ほど前になりますが、わたくしがある用事のために大阪は梅田の駅近くで信号待ちをしていましたところ、目の前に停まったタクシーから、お客さんが降車していく情景を目にしたのですね。そんなものは普通、記憶には残りません。しかしわたしはその時、確かにこの目で見たのです。一台のタクシーから、20人近い人間が降りてくるのを。
後でこのことを人に話しても、わたしがいつものようにハッタリをかましているか、わたしの頭がおかしいからと誰もまともには取り合ってくれません。…人によってこうした思い出は様々でしょう。それらは70歳の女装好きおじいさんのセーラー服姿だったり、身長2メートルの小学生だったり、サイドカーにダッチワイフを乗せて疾走するバイクだったり、渡辺文樹監督の映画ポスターだったりするのです。わたしはこうした体験こそが、精神神秘の世界と人々の深層心理を繋ぐ勝手口なのではないかと、思わずデイヴィッド・リンチを評する教養のない映画ライターみたいなことを思ってしまうのですね。
例えばこの映画。はじめて観たのは10年ほど前のテレビの深夜放送でした。それもチャンネルをガチャガチャ変えながら途切れ途切れに観ましたので、きれいなおねえさんがヒーヒー喚きながらゲロを吐き散らしたり、色男が変な踊りをしながら会話したり、タコと人間を掛け合わせたような奇妙な生き物が唐突に出てきたりと、まったくその内容を掴めず、ずっとわたしの心に引っかかっていたのですね。後にこの映画のタイトルが「ポゼッション」といってゲロを吐いていたのはイザベル・アジャーニだということを知りましたが、改めて観直してみる気にもなれず、10年ほったらかしにしていたところを中古ビデオ屋で100円で叩き売られているのを発見、遂にちゃんと観たのです。
感想?はじめから終わりまでしっかり観ましたが、結局わけがわかりませんでした。
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