南極日誌 〜ガンバリズムの涯〜
2005年 韓監督:イム・ピルソン
なーんの予備知識もなしに観に行きましたので、てっきり勇敢で海千山千の南極探検隊長・ソン・ガンホが「ファイト!」と叫び、新入り熱血隊員・ユ・ジテが「いっぱあーーーーーーーーつ!!!!!!」と応えながらも南極点を目指す韓国的ガンバリズムの映画と思っていたのですが、観終わるとまったく印象は違えど内容的には予想通りだったことにオドロキです。さらに言うのならば、この映画はガンバリズムも突き詰めればとんでもねークソ地獄となり得、さらに前人未踏の境地に立って歴史に名を残すような偉人は皆、頭のネジが弛んだ鬼畜ばかりであるというダークなトリビアも含まれていて素晴らしいのです。
その通りですね。
仲間の顔色伺いながらチームとしての“和”を至上のものとして捉え、ひたすら仲良しクラブの安定に腐心するような小物が、偉業を成し遂げられる筈もありません。とりあえずリーダーに持つならば、“……本当にこの人についていっていいの?”と時々不安になるくらいメチャクチャで危なっかしく、不条理な人が良いのです。まさに上司が鬼とならなければ部下は動かず。そしてその鬼をスキさえあればブッ殺してやりたい、と思うあなたの心があなたを実存的な個人に鍛え上げるのです。
ガンホ先輩はいつもの三の線とは180度違った狂気の演技でビビらせてくれますが……先輩、わかってますよ。
あなたはこの映画を観るわたし達が、この映画を乗り越えてひとかどの人物になるということに願いを込め、敢えて憎まれ役に徹したのですね。
そんなガンホ先輩の教育熱心さに男泣きの、韓流、もとい漢流アドベンチャースリラーの大傑作なのであります。
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