ミリオンダラー・ベイビー

〜血はじじいの精液より薄い〜


2004年 米
監督:クリント・イーストウッド

  ドメスティックバイオレンスと負け犬の遠吠えが吹き荒れる大阪のさる下町で過ごしたわたくしにしてみれば、「血は水より濃い」なんつーのはほんとうに、「Happy cristmas/War is over」くらいのタワ言(なんでやねん)にしか聞こえません。思えば小学校4年生の頃、“ご自宅のベランダからオリオン座を観測しましょう”なんつーしょーもない宿題が学校から出た日にゃあ、少年西田の心は激しく鬱モードにシフトチェンジしたものです。

 何故ってうちの物干し台に面した家に住むキムラさん一家は毎日がドメバの嵐。夜九時を過ぎればガラスが割れる音、床に何かがドスンと転がる音、何かを壁に打ち付けている鈍い音などで大騒ぎ。おかげでウチの家は時計要らずだったくらいです。
 キムラさんちの中学生の息子さんはほんとうにマジメでいい子だったのですが、お母さんがアル中の酒乱でした。まるで全自動炊飯器のように毎日正確な時間に暴れだすお母さんに若きキムラ君が大応戦。しまいには軒続きになってるウチの家までドリフのセットみたいにバターンとぶっ倒れてしまうのでは、と心配になりましたが、当然わたくし少年西田が物干し台でオリオン座を観測しておりましても、時折キムラさん家のベランダのドアがガラっと開いて物干し台での場外乱闘が始まる訳です。怖い怖いアル中のキムラんとこのオカンに何度もメンチを切られながらの、はじめようか天体かんそ〜く♪
 以降わたしが学校教育というものの無力を思い知ったのはこの経験がトラウマとなっているからかも知れません。
 
 イーストウッド翁がいつも心に仕舞っている心の44マグナムを静かに納めながら、ヒラリー・スワンクのドキュソ家族の傍若無人をやるせない表情で見守る姿にひたすらグッときます。思わずわたしはあの日のオリオン座を思い出しました。

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