レジェンド・オブ・メキシコ

〜わたくしの失敗(森田童子ふう)〜

2003 米 

監督:ロバート・ロドリゲス

 「おい!西田!ええ加減にせえ!
 「西田くん!!ここは何の席やと思てんの?!
 酔いのためますます曖昧になっていく意識のなかで、わたしは同僚たちの罵声を聞いていました。
 その日は同じ部署の女性社員(とても美人)が東京本社へ転勤となったことを受けて、馴染みの焼き肉屋で部署主催の送別会をしめやかに執り行っていたのですね。当然、主役はかの女性社員。わたしはその人のことを、とりわけ好きだったわけでも嫌いだったわけでもなかったのですが、それなりにいい人でしたので、すすんでその会に参加しました。参加したはいいのですが、日々の疲れが溜まっていたせいか、その日は何故か少しのお酒で大ハッスル。ベロンベロンに酔っぱらったわたしは、いつもならば決してしないのですが、大いに暴れました。暴言を吐き、別れの挨拶に下品な茶々を入れ、ビールや日本酒や酎ハイをチャンポンでガブ飲みし、トイレでゲロを吐き、それでも飽きたらずにさらに酒を飲んで、あげくのはては主役であるその女性社員(とても美人)の頭の上からコッテリ濃厚な焼き肉のタレをぶっかける始末。いつものわたしはこんなのではありません。しかしその時の酔い方は尋常ではなく、同僚達が激しく非難するのをせせら笑って、そのままトイレに駆け込んでまた吐いていたのです。
 心配して様子を見に来てくれた同期の女子が、トイレの外で店の主人にフォローしてくれているのが聞こえます。
 「いつもはあんなことはないんですけどねえ……」
 ああ素晴らしい同期愛。しかしわたしはデス・メタル状態、もしくは我が心の灯火、わが肉のほむら、宇多田ヒカル様の言うところの「何も怖くないモード」にありましたので、そんなフォローも何処吹く風。
 トイレから出てから、タレまみれになったかの女性(とても美人)に対して謝罪もせずに酒を飲み続け、冒頭のような剥き出しの非難を被ることになったのであります。
 いや、今になって思いますが、送別会で良かった。何故ならその人はもう居なくなってしまうから。これが歓迎会だったらどうなっていたことでしょう。恐ろしすぎて夜も寝られません。

 とまあ、3部作の最終作、という本作の中におきまして、主役のバンちゃんそこのけで大暴れするジョニー・デップはイカし過ぎました。あと、前編これ埃っぽい映画ですので、観賞後は風呂にでも入ってサッパリしたくなること請け合いです。


 
 

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