刑務所の中
〜ものを考えなくていい快楽〜
2003年 日
監督:崔洋一
この映画を観て思い出しましたのがスタンリー・キューブリック監督の「フルメタル・ジャケット」という映画ですね。かたやム所、かたや軍隊と、双方とも一生のうちに出来ることならお世話になる羽目にはなりたくないところのお話です。わたしは早起きが大嫌いですので、どちらに入るのも死ぬほどイヤなのですが、双方の組織に共通しているのが、「所属するものの自由が極限まで制限されていること」と、「ワケのわからない規則が無数に、厳格に定められていること」の2点です。ある種、校則の厳しい公立高校や体育会系メンタリティに支配された企業組織もこれに近いものがあるわけですが、ムショと軍隊、この2つの組織がなぜ所属するものの自由を厳しく制限し、細かなところまでを厳格にルール化しているのかといいますと、それは単純に、双方が多数の人間を管理する必要のある組織であり、そのことにおいての効率化が最優先されているからですね。多数の人間を効率的に管理するというのはどういうことかといいますと、それぞれに余計なことを考えさせないことが一番重要。「言われたことをキチンとやっておけばいい」だけの完璧な管理体制を徹底させるというのは、口で言うのは簡単ですがこれがなかなか大変なことなのですよ。
さて、そうした組織に属する、いわば管理される側の人間のほうはどうなのか、ということを考えてみますと、これはこれでなかなか快適なのです。はっきり言ってシャバに居て一番面倒くさいことは「自分で頭を使って考える」ということ。シャバの世界では我々は常に思考することを強制され、判断を迫られ、負いたくもねえその責任を負わされ、あげくの果てはノイローゼになってしまったりします。そうしたことを一切しなくていいム所や軍隊は、ある種ユートピア的な快楽を伴う世界でもあるわけです。
しかしこの映画ではム所入所には必ず伴うアナルの危機が全く描かれていませんでしたが、これは何かの陰謀でしょうか?
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