“アイデンティティー”

〜“本当の自分”とか甘えてんじゃねえ〜

2004年 米

監督:忘れた

みうらじゅん先生の「アイデン&ティティ」とも、激エロホラー「エンティティー」とも全く関係のないこの映画ですが、出ているメンツがすごいですね。レイ・リオッタジョン・キューザックレベッカ・デモーネイ。こうした濃厚なメンツが、大雨のせいで国道沿いのモーテルにカンヅメになるわけです。このメンツが集って何ら事件が起きない方が意表を突いたケッサクになったかも知れませんが、やはりそのへんはパターンとして殺人事件なんかが起きてしまうからガッカリです。しかも一番先に生首になって発見されるのがレベッカ・デモーネイですので、彼女がフェードアウトしてからの物語はもはや何の緊張感もなく、誰が殺されても誰が犯人でもいいや、と投げやりな気持ちにさせられました。
でまあタネを証しますと、これらは全て多重人格のオッサンの頭の中で起こっている事件であり、それぞれの登場人物はそのオッサンの解離した人格のひとつにしか過ぎず、それらがまさに人としての“アイデンティティー”を掛けてバトルロワイヤルを始めるわけです。言うなれば「自分探し」の旅をヴィム・ヴェンダースのように反吐の出るようなロードムービーとしてではなく殺し合いで表現した作品。ある意味、人間の“内世界の映像化”ということに関しては相原コージ先生の漫画に近いセンスであり、それはそれで良かったですね。
しっかし不景気になってからこっち、「本当の自分」とか「自分らしさ」とかそのへんの言葉を30過ぎて有り難がっている日陰虫のような人間が多くて、一発くらい戦争でも起きないものかと本気で願ってしまいますね。

 
 

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