アイ・アム・サム 〜人間と畜生の垣根を軽く飛び越える〜 2002 米 監督:ショーン・ペン 何と言いますか、凝ったカメラの動きも、ペン氏の「具合の悪い人」の演技も、お腹いっぱいになる映画でしたね。ちなみにこの映画、オランダ旅行したときの機内映画で観たんですよ。行きの便がこの映画で、帰りの便は「ビューティフル・マインド」。行きは「知恵の足らない人」の映画で帰りは「頭のおかしい人」の映画というプログラムだったもんで、これも何かの縁ですかね。
で、映画自体の内容はどうでもいいんですが、この映画を観て思い出したのが先日NHKでやってました「輝け!西成の子ども達」というタイトルのドキュメンタリーです。労務者と、労務してない人の街、大阪・西成で暮らす様々な子ども達の生活をレポートした番組だったんですが、番組中で一番グッときたのが、カナちゃん(仮名)という10歳くらいの女の子の話。
カナちゃんはお父さんと二人暮らし。このお父さんというのがアル中で無職。酒で体を壊して、日がな一日ブラブラしてまして、当然生活保護で糊口を凌ぐ日々。お母さんはそんな親父に愛想を尽かして、幼いカナちゃんを残して実家に帰ってしまいました。そんな訳で、炊事・洗濯・掃除・ヨイヨイ親父の世話という一切仕事は、カナちゃんの役目となっている訳ですね。健気にご飯を作り、自分の世話をしてくれるカナちゃんに対して絶対依存するこのアル中親父は、悪びれもせず酒を飲み続けます。シーンは移って近所の居酒屋。カナちゃんと生ける屍のような親父が並んで座っています。
「もう!お酒飲んだらあかんって言うてるやろ!」やけに大人びた口調で親父を叱責するカナちゃん。しかし親父はヘラヘラと笑って、一向に聞く耳を持ちません。そればかりか、
「いや、コイツ(カナちゃん)はようやってくれよる。コイツはわしの嫁はんや!」
などと嘘ぶいてゲハハと笑う訳です。
いや、案外、人間と畜生の垣根というやつは低いもので、それをひらりと飛び越えることのできる人間は多いのです。そんなことを考えてこの映画を観ていますと、馬鹿に脳天気なラストシーンにも違う味わいがありますね。
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