大統領の理髪師

〜民衆と権力〜

2004 韓

監督/忘れた


 塩川正十郎(通称、塩じい)氏が東大阪市の市会議員だった頃、その選挙区で子ども服店を経営していたわたしの亡き祖父は、熱狂的な「塩川はん」信者でした。「塩川はん」は祖父の経営する店のある商店街では神に等しい存在でした。誰も彼もが「塩川はん」を敬い、「塩川はん」の自宅の前を通るときは少しだけ頭を垂れて通るのが習わしでした(ちょっと大袈裟に書いています)。わたしは幼い頃、「塩川はん」の邸宅の門から侵入を試み、ガードマンに叱られたことがあります。
 祖父はよく言っていました。
 「共産党の糞垂れどもが!!一体わしらの戦友は誰のために戦ってお国に命を捧げたと思とんじゃ!!!!」
 そういうアンタは生き残ってるじゃねーかと幼いわたしは思いましたが、何も言いませんでした。祖父はたいへん要領が良く、戦争中も中国大陸や硫黄島などの激戦地には行かず、救護補助班であったにも関わらず、広島への原爆投下後、上手いことやって広島行きの命を免れ、放射能汚染されることもありませんでした。

 映画の中で、大統領が言います。
インテリこそが権力の最大の敵である」と。

 まったくですね。
 祖父は幸福な羊飼いのまま、その生涯を終えました。
 
 ソン・ガンホは多分、アジアで一番の俳優だと思います。
 

 

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