クローサー

〜香港映画的力学〜

2003 香 

監督:忘れた


 何でこの映画を観ましたかといいますと、スー・チーが出てるからですね。いいですね。スー・チー。はっきりいって、顔は不細工ですが、女性の魅力というものは本来、素材のよさではないという偽善的な前提を肯定できるのは彼女くらいですね。顔のマズさを充分にカバーする、全身から発散されるエロさ。身のこなしのフェミニンな優雅さ。あと人をナメきったあの視線には、他の追随を許さないものがあるといえるでしょう。同様に、素材のマズさという点ではこの映画で競演しているカレン・モクも結構イイ線行ってますが、彼女は長い手脚という肉体の天分でそれをカバーしている分、スー・チーには叶いませんね。あと、もうこの歳になりますと、主人公のヴェッキー・チャオみたいなアイドル系にはピクリとも反応できません。ヲタクな向きには目が大きくてイイんでしょうけど、いくらショートパンツで暴れても、わたしのような年寄りには赤ちゃんがおしめを代えられているのを見るようでもひとつなのですよ。まあ、この映画、ストーリーの方はどっちかと言えば「キャッツ・アイ」とかの北条司系なのですが、久しぶりに香港アクションを見ると、「サシでの対決における敵と味方の力学」というセオリーをいまだしっかり守り続けているのは香港だけなのだな、ということを感じました。力学といいましても、ワイヤーを使って云々、ということではありませんよ。例えば、香港映画が世界的に流行らせた構図に、至近距離で敵と味方が拳銃を向け合って睨み合う、というのがあります。特にアメリカ映画ではこの構図を真似た絵がたくさん出てくるのですが、お互いが拳銃を向けあいながら、なぜ片方が先走って撃たないのか、ということに関して、シッカリ考えてこういうシーンを撮っているのは香港だけですね。ようするに拳銃を向け合っている二人には、敵味方を越えた、利害を超えた信頼というものが生まれているわけです。お互いを戦うに値する敵として信頼しているからこそ、片方がズルをして撃ってこないと確信する。つまり、銃を向け合うシーンが出てくる以前に、敵と味方のキャラクターをそこまで描き切れていないと、ああいうシーンは活きてこないのですね。と、今回は妙にマジメですが、スー・チーの脱ぎが少ないのは残念でしたね。
 

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